【更新】米朝首脳会談後、自分の見立てを採点してみる:物事には良い面と悪い面がある

2018年06月18日 20:30

トランプ氏Facebookより:編集部

みなさま、おはようございます。12日の米朝首脳会談、いろいろな意味で衝撃的でした。翌日ブログを書きかけるも、続きを書く余裕がないまま今日に至ったのですが、その間にも、気になるニュースがいくつも入ってきました。安倍総理が日朝首脳会談に意欲というのは良いニュースとして、北朝鮮労働新聞は「拉致問題は解決済み」と書いたり、米中の貿易戦争が激化、中国が日中韓首脳会談を12月に提案、トランプ大統領が米ロ首脳会談模索の、プーチン大統領が金正恩委員長と首脳会談をすべくモスクワに招待・・。ですので、改めて書き直してみます。 

今回の米朝首脳会談、みなさまはどう御覧になりましたか。私は、予想以下の具体的内容のなさにがっかり半分、在韓米軍撤退など有害無益発言に衝撃を受けましたが、今までとは違うやり方で始まったトップダウン・プロセスに期待もしています。この後の展開が吉とでるか凶と出るかは、トランプ大統領がどの程度今後の米朝プロセスを貫徹する意思があるかどうかにかかっています。金正恩委員長の意思に左右される部分があるのは当然ですが、それでも、トランプ大統領の鉄の意思が一番大事です。

米朝首脳会談直前に書いたブログやその前に書いたりTV番組などで発言したり国会質疑など、自分の朝鮮半島についての見立てについてまず一旦検証してみます。検証は、核廃棄だけでなく、分析においても極めて重要なことです。情報に基づき一定の見立てをして、その見立てについて、さらに判明した事実や情報に照らして検証し、修正していくことで、分析についての角度が上がっていきます。当たった、外れたと一嬉一憂するのではなく、そのような不断のプロセスがより正確な分析をしていく上で重要です。そして、そのような分析は、政策立案に活かされてこそ意味があります。ここには、「敵を知り己を知らば百戦危うからず」という姿勢をもつリーダーシップの存在が不可欠です。

と申し上げた上で、さて、総じてですが、自分の見立てが当たっていることについて我が意を得たりと思う反面、大変な時代になるなと不安というか身震いする気持ちになっています。 

1.予想以上に具体的成果が乏しかった=米朝交渉はこれから(時間がかかる)

まず、今回の会談は顔合わせというかキックオフで具体的成果はないと予想はしていたものの、自分の予想以上に具体的成果がなかったことから、今後の米朝のプロセスが予想以上に時間がかかるものになるのではないかと感じました。中国から日中韓首脳会談の提案やロシアも露朝提案など出てきていますが、中国やロシアも様々関与してくると、六者に持ち込まれたりすると本当に面倒です。核放棄は米朝で主導してもらうのがベストです。

北朝鮮の核放棄と体制保証から平和条約に至る道がディール対象ですが、については板門店宣言とほぼ同じ、他方で、についても、事前にトランプ大統領が言及していた終戦宣言は出せませんでした。なので、米国が譲りすぎという批判がありますが、米朝間のディールは紙の上では均衡しています。北朝鮮は、CVIDの中の特に全面査察にコミットできなかったのではないかと予想します。最終的な非核化の作業には実に長い時間(10年とか)がかかりますが、非核化の流れを後戻りさせられないポイントまでの作業は比較的短期間でもっていけるそうです。全面査察を受け入れるというのは、この作業の対象として全てを差し出すということです。(もっとも、穴掘り名人の北朝鮮なので、査察逃れができる能力もありそうですが。)

米国は全ての要求をしてきたと思いますので、このゆるゆるの結果になった理由は基本的に北朝鮮にあります。つまり、北朝鮮は、米国の体制保証とその後のプロセスに対する信頼が持ちきれなかったか、最終的な核放棄の決断ができなかったか、単純に時間切れで米朝間の事務方で工程表の作業が進まなかったか、これら3つの理由のコンビネーションかのいずれかです。 

2.トップダウン方式

それでも、トランプ大統領も金正恩委員長も12日に会うことを優先しました。これは大きな決断です。トランプ大統領が譲りすぎたのではないかという批判がありますが、米朝両首脳が直接顔を合わせ、朝鮮半島の完全非核化と平和条約締結に向けての一連のプロセスを開始することにつき、トップリーダー同士がそれなりの個人的信頼感(や本能的嗅覚)をもって合意をしたということは、大きな意義があります。というか、今回の米朝会談の最大の意義はそこにあります。(残念ながら、宣言も非核化より米朝関係改善が主。)非核化についても、表情はやや硬かったですが、「彼(金正恩)は本気であり、行動するだろうと自分はわかっている」とトランプ大統領が何度か言及していたのは印象的で、トランプ大統領一流の本能で金正恩が平和条約締結に向けて核廃棄をする覚悟があると感じたのではないか、と思いました。 

この点は随分前から何度も書いてきましたが(「北朝鮮が中国みたいな国になる日」)、北朝鮮の経済重視姿勢についての自分の見立ては正しいことがより鮮明になったように思います。金正恩委員長は、まだ30代半ばであり、あと40年北朝鮮を統治しなければならないのですから、スイス育ちの金正恩委員長が、核放棄(削減)して制裁解除し、外国投資を呼び込み、中国のように体制維持をしたまま市場経済に上手く移行して経済を発展させようと思っているのではないか、過去のパターンと同一視すべきではないと言ってきましたが、今回、シンガポールの視察の様子や米国とも元山の観光地への投資の話をしたなどの情報からもこの点は首肯されたと考えます。

金正恩としては体制保証がされる限りこの目的達成に必要な範囲で核削減することは問題ないはずです。問題は、最後の1個まで全部核放棄するか、ということですが、ここについては、時間稼ぎの誘惑もあるかとは思います(民主主義国のリーダーの任期は独裁者より短いから)。非核化の具体的行動が伴わない限りは、制裁は続きます。ただ、実際はモード変更により緩んでしまうように思います。 

まず信頼できると判断したら、一旦は信じて任せてみるというのがトランプ流なのでしょう。半年後にやっぱり違ったといっている可能性はあるとトランプ大統領自身が言っていましたが、ダメだと思ったら、米韓軍事演習から制裁から元に戻すつもりなのでしょうが、今回の問題は、元に戻そうとしても現実的には元には戻らないということかと。米韓軍事演習の中止は進展がない場合(また、進展があろうとなかろうと一定期間後)は即再開しなければ米韓同盟の空洞化につながるでしょう。

過去の94年の米朝合意枠組みや六者協議は、事務方からの積み上げ方式でしたが、結果的には時間稼ぎを許して経済援助だけむしり取られるという失敗に終わりました。今回は、トップリーダー同士がまずあってからプロセスが始まるという、いわば逆の試みです。そして、米朝(ついでに韓国も中国もロシアも)は既に対話(外交交渉)による解決モードに舵を切っており、舞台は変わったのです。日本もまず一旦はその前提でプレーしなければならないと思います。賽は投げられたのであり、その上で日本の国益にとっての最善を尽くさねばなりません。 

安倍総理が日朝首脳会談に意欲を示しておられることを心強く思います。北朝鮮が「拉致問題は解決済み」と言っていますが、これは日本から引き出したい経済援助の額を吊り上げるためハードルを上げる戦術だと思います。祖父や父のやった犯罪について、今の権力基盤を強化した金正恩が解決してそれほど困ることはないように思います。彼にとってはお金の方が大切なはすです。ですから、日本は、拉致問題が解決されない限りびた一文だすべきではないと思います。日本の持つ最大のレバレッジはお金ですから。 

4.「物事には良い面と悪い面がある」 

村上春樹ではありませんが、「物事には良い面と悪い面がある」のです。具体的に言えば、北朝鮮発、米国発、いずれの軍事自体もまず生じないという事態を作り出せたことについては、率直に評価すべきだと思います。「軍事オプションをとったら300万人ぐらい犠牲者が出てしまうではないか。」とトランプ大統領は言っており、もはや軍事オプションはないということを明言したに等しい。日本としてもいずれの国初の軍事事態も歓迎できないわけですから、以前よりもより「平和な状況」が出現すること、そして、北朝鮮の核能力が削減され(完全になくなるかどうか私はもともと確信がありません。前のブログ参照)、予測不能な軍事的事態の可能性が劇的に減少することは、まずは日本にとって良いことです。そのためには、日本が朝鮮半島国家群の敵国認定をされないことが大切であり、これからのクリエイティブな日本外交の展開が重要です。

他方において、このプレッシャーがなくなったといことは、北朝鮮に核放棄をさせる圧力は減ったということです。その代わりに体制保証から平和条約につながる道がインセンティブとしてうまく働けば良いのですが。。

そして、米朝関係が改善され、北朝鮮が親米国になることは日本にとっての完全な利益です。それは(これ去年の夏のブログから書いていますが)、朝鮮半島に米国が関与し続けることが日本にとっての最大の国益だから。放置すれば、朝鮮半島は中国の影響下に入ることになります。もちろん、親米的になったからといって北朝鮮にとって中国が最も頼りにする国であることは変わりありませんが、それでも、中国オンリーより良いわけです。

だからこそ、米韓同盟の堅持と在韓米軍の維持が大事だと言ってきたわけですが、ここで残念なお知らせは、いとも簡単にトランプ大統領がコスパの観点から、在韓米軍の撤退に言及したことです。将来の在韓米軍撤退の可能性は高いので、覚悟して備えよということは昨年から言ってきたことですが、自分の予想が早々に当たってしまったようでショックです。もちろん、国務省や国防省など、在韓米軍の意義についてトランプ大統領に説得は試みるでしょうが、トランプ大統領のコスパに全く合わないという感覚は強固なものがありそうです。いずれにせよ、それならそれで、日本は、在韓米軍の縮小撤退を覚悟して備えていかねばなりません。 

北朝鮮の核兵器が残る可能性については、ある程度覚悟しなければならないのではないでしょうか。前回のブログに書きましたが、北朝鮮が狙っているのは、核については、「イスラエルみたいな国」なんでしょう。だとすれば、日本としては核抑止力を高めるための方策をとるということではないのでしょうか。

最後は良い面について、以前も書きましたが、南北が行き来出来てつながり、半島が本当の意味で半島になるということになれば、そして、北朝鮮が国際社会の脅威でなくなれば、北朝鮮に対し、中国が、韓国が、米国が、そして日本が投資をするような日が来ます。北朝鮮は豊富な若年層労働力、豊富な資源、ハッカーや核開発もできる技術力があるわけです。(日本帝国だって投資したのは南ではなく北メインだったわけで。)釜山に下した荷物が陸路で北朝鮮にも中国にもロシアにも行くという大きな変化です。日本にとっても大きなチャンスとなりえます。

そして、人口8000万人、日本の領土の3分の2となる朝鮮半島国家群は、日本に近い大きさになります。しかも核が事実上残っていたら。日本は、この朝鮮半島国家群と敵対的関係を作ってはいけません。同時に、日本防衛を外にも内にもしっかりして守りつつ建設的関係を作る、そんな外交が展開できる国内体制(法整備、防衛力強化)が必要です。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏の公式ブログ 2018年6月16日の記事(18日に全面更新)を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。

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松川 るい
参議院議員(大阪選挙区、自由民主党)

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