恐怖で足がすくむ理由

2018年07月17日 06:00

『雨上がりの「Aさんの話」~事情通に聞きました!~』(朝日放送テレビ)

先日投稿した、「日本一早いビジネス書ランキング(2018上半期)」が、編集者の間で話題になっていると聞いた。書籍の内容を知りたいという要望もいただいた。今回は1位にランキングした、『いい緊張は能力を2倍にする』(文響社)を紹介したい。著者は精神科医の樺沢紫苑医師。雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。

「試験や受験で緊張して、実力を十分発揮できない」「人前で話すと緊張する」。そんな、緊張しやすい人、緊張が苦手な人はいないだろうか?緊張は「敵」だと思っている人が多いが、それは「脳科学的」に考えると間違っているようである。緊張をコントロールし、パフォーマンスをあげる方法とはどのようなものか。

人は頭が真っ白になるとどうなるか

――原始人がサーベルタイガーと遭遇した場面を想定しよう。コチラが気づいた瞬間に、サーベルタイガーはすでに飛びかかってきている。全身は恐怖に支配され、足はすくんで逃げだすことができない。頭が真っ白になって、どうしていいかもわからない。

「『どうしよう。どうしたらいいんだ!』。危険な状態がピークを超えて、本当に『死』を意識する瞬間、人間は強烈な『恐怖』を感じ筋肉が硬直します。ノルアドレナリンの分泌が増えると、『緊張』から『不安』へ。さらに『恐怖』へとエスカレートしていきます。そして、『強い不安』や『恐怖』を感じる状態では、大量のノルアドレナリン、さらにアドレナリンも分泌されていると考えられます。」(樺沢医師)

「本来、判断力を高め、瞬発力を高めるはずのノルアドレナリンですが、大量に分泌されると機能異常を起こしてしまうのです。筋肉への血流が増えすぎると、筋肉は緊張しすぎて体がこわばり足もすくみます。『頭が真っ白になる』というのも、ノルアドレナリンが出すぎたときの兆候と考えられます。」(同)

――樺沢医師によれば、適量のノルアドレナリン(適性緊張)は、私たちの脳や身体の働きをピークに持っていくと解説する。一方で、過剰なノルアドレナリン(過緊張)は、むしろマイナス影響が多いので好ましくないとしている。ノルアドレナリンの分泌を減らして、「過緊張」から「適性緊張」へと持っていく必要がありそうだ。

脳の危険感知システム「扁桃体」

「いま、『ノルアドレナリンがでる』という表現を使つていますが、ノルアドレナリンは勝手にでるわけではありません。ノルアドレナリンをだすかださないかを判断する脳の部位があります。それは、『扁桃体』です。『扁桃体』は、ノルアドレナリンのコントロールセンターと考えればいいでしょう。」(樺沢医師)

「人間は何か出来事に遭遇したときに、扁桃体は『その状況』が自分にとって、命の危険があるのか、ないのか。安全なのか、危険なのか。快なのか不快なのかを一瞬で判断します。扁桃体がその判断をくだすまでの時間は、1000分の2秒。一瞬です。」(同)

その一瞬をわかりやすく解説してみよう。子供が何か食べ物を口に入れた瞬間に、「ペツ」と口から吐き出した。「これは不味い。僕の大嫌いなニンジンじゃないか!」。

「そのように思うのは、口から出した後です。自分にとって『不快』であるという認識は一瞬で行われ、後から『言語情報』(理性)の部分が働きます。こういう反応が、私たちの日常のありとあらゆる刺激、体験の中で、起こっているのです。こうした扁桃体の『危険感知システム』によって、私たちの命は守られているのです。」(樺沢医師)

「交差点で自転車がコチラに向かってきた。『危ない』と思う前に、サツと身体を引いてよけている。そんな芸当ができるのも、扁桃体の『危険感知システム』のおかげなのです。自転車と衝突してから『危ない』と気づく。異物を飲み込んでから『変なものを飲み込んでしまった』と気づく。これでは自分の身を守ることはできません。」(同)

――本書を読むことで、最新医学に基づいた脳科学を知ることができる。さらに、脳科学が日常のパフォーマンスに影響を与えていることも理解できる。仕事のパフォーマンスに悩んでいる人には一読をおすすめしたい。

尾藤克之
コラムニスト

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