自民党は夏の高校野球こそ〝平成のうちに〟何とかしてほしい

2018年07月23日 06:00

今年で100回を迎える夏の高校野球選手権だが、今年の異常な酷暑は、もはやその運営を抜本的に見直すことを迫りつつある。各地で気温が40度近いところも相次いでいるくらいだから、試合会場の体感温度は想像を絶する灼熱地獄だ。実際、熱中症とみられる症状を訴え、搬送される高校生も出ており、政治家からも相次いで苦言が出ている。

松井知事の大阪では、府教委が高野連に対し、ナイターなどの検討要請に乗り出した(毎日新聞)。それでは、当事者のほうは変える気があるのか。

生徒ら35人が搬送された熊本の高野連は全校応援の自粛を各校に要請したそうだが、日本高野連と朝日新聞は、熊本の事故が起こる直前に熱中症対策の通達を出してはいた。しかし、その中身はといえば「理学療法士が選手のコンディションをチェックする」とか「観客にこまめに水分をとるように呼びかける」といった小手先の内容。まるで終戦間際の日本で、竹槍で米軍と戦うように国民に呼びかけた精神主義だ。

「肥大化」で高野連、朝日の自浄作用は期待できず

しかも、この文書自体も、朝日新聞が自社の電子版で記事として告知はしているが、もう一方の主催者であり、公益財団法人たる高野連が公式サイト(トップページのトピックス)に23日午前3時現在、何も告知していないのは、いかがなものか。スマホ世代の高校生にも、必要な情報は、紙の朝日新聞を取らせるためなのかと邪推はしまいが、同じ時期に行われるほかのスポーツ大会では、日中の炎天下での試合開催は極力回避されているというのに、長年の「慣習」を抜本的に変える気配はみられない。

2007年夏の甲子園大会を取材したとき、同時期に大阪で開かれていた世界陸上では早朝と夕方以降しか競技をやっていないのをみて、甲子園大会の旧態とした運営に愕然としたが、もはや世界レベルでの笑い物だ。

熱中症対策がトップページのトピックスに掲載されていない日本高野連のサイト(23日午前3時現在)

経費や日程上の都合から変える気が毛頭ないのはあきらかだ。また、甲子園と地方大会自体が、主催の朝日以外のマスコミにとっても職員が交代で夏休みをとる期間中に、紙面や時間枠を埋めてくれる上に、ローカルの読者、視聴者の一定の反響が期待できる貴重な定番コンテンツ。汗と涙の青春ストーリーの美名の裏では、競技団体、メディアなどステークホルダーの都合によって、システムががんじがらめ。自分たちからメスを入れられない構造になっている。

では、どうするべきか。私自身は、スポーツの問題は当事者間の自浄作用を第一とすべきと考えるが、このようにマスコミも巻き込んで「肥大化」しているので、政治や行政から一定の介入をせざる得ないと思う。

まずは、監督官庁として文科省なり、スポーツ庁なりが当面の運営について、高野連や朝日新聞を指導するのが筋だ。しかし、文科省とて一世紀も「放置」「黙殺」してきたようなものだ。八幡さんのように「前川喜平が次官だった時代も放置していた」などと嫌味は言わないが、役所だけでは真の改革主導は全く期待できない。

特待生問題で小委員会の先例

となると、断を下せるのはもう政治家しかない。世間の大半は忘れているだろうが、実は、高野連で大問題があったとき、政治側から「指導」した先例がある。2007年におきた特待生問題だ。

これは、西武がある大学生に裏金を渡していたスキャンダルが噴出。詳細は省くが、これを機に、私立の強豪校などで有力選手を学費減免の特待生として入学させていた実態がクローズアップ。高野連は、野球部員であることで金品の授受を禁じたアマ野球界の憲法、日本学生野球連盟憲章に違反しているとみなし、特待生制度見直しに乗り出して学校現場は大混乱に陥った。

もちろん、特待生制度自体は違法でないし、他競技では普通に行われているが、「アマチュア原理主義」の高野連が杓子定規に実態を合わせようと急いだことが混乱に拍車をかけた。怒った私立校の一部は高野連からの脱退と新大会創設も視野にいれていたが、結局、高野連が世間の批判に折れる形で限定的に特待生を認めたことで沙汰止みになった。

このとき、高野連が特待生を認めるきっかけの一つになったのが自民党の「高校野球特待生制度問題小委員会」だった。騒動が大きくなるや、政務調査会の文部科学部会と文教制度調査会の合同会議傘下で、専門の討議機関として同小委員会を設置。

当時の高野連会長、脇村春男氏らを党本部に呼んでヒアリングし、特待生制度を認めるよう提言を出したことで、高野連が「特待生問題有識者会議」をひらいて具体的な見直しに入った経緯がある。

元球児の進次郎氏を旗頭でどうか?

モリカケ追及への報復とばかりに朝日叩きをやられても困るし、政権与党が軽々に介入するのは慎まなければならない。しかし、公式戦へのリーグ制導入や、ナイター開催も含めて、高校野球の構造改革を後押しすることは「平成で壊しきれなかった昭和」の仕組みを、政治が新時代にあらためる強いメッセージを放つことにもなる。

その意味では、かつての小委員会のような機関を設置し、委員長か事務局長に、ポスト平成の社会保障や国会改革を提唱してきた小泉進次郎氏を吸えるのは、元高校球児でもあり、うってつけではないか。朝日以外のマスコミが相応に注目して取り上げて世論の関心も高められるだろう。


参議院定数増の採決を巡る対応や発言には、私も怒りを感じたが、この問題で少しは挽回できるのではないか。これこそ「平成のうちに」着手を期待している。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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