ベネズエラ現政権を存続させるキューバからのアレとは

なぜマドゥロは自国民を犠牲にしてまで、今もキューバに原油を送り続けるのであろうか?そこには一つの理由があるのだ。

マドゥロ政権の存続が今も可能となっているのは、キューバがベネズエラ国内の諜報活動を行って野党や軍部で彼を打倒しようとする全ての陰謀を探知できるようにしているからである。

「キューバからの諜報活動による支援がなかったならば、マドゥロはもうかなり以前に政権を放棄していたはずだ」と米ワシントンのInter American Trendsの部長アントニオ・デ・ラ・クルスが指摘している。

ベネズエラのマドゥロ政権は資金が欠乏し食料、医薬品を含め一般消費財を輸入することも出来なくなっている。インフレは100万%だという。米ハーバード大学の国際発展センターの部長リカルド・ハウスマンによると、ベネズエラのGDPは50%後退し、公営企業の輸入は80%、民間企業の輸入も90%削減されているという。

ところが、今もマドゥロは中国やロシアから原油を輸入してまでしてキューバにそれを送り続けているのである。7月の第一週には50万バレルをキューバに送っている。専門家によると、現在も日量55000バレルを送っているという。それは年間にして12億ドル(1320億円)に相当する額だそうだ。ベネズエラが成長していた頃は日量95000バレルを送っていた。

日量200万バレル採油していたのが、現在は130万バレルに減少している。今年末までには更に50万バレル減少すると予測されている。世界で原油の埋蔵量では世界一にある国が原油を輸入しているのが現状のベネズエラである。このような事態にあってもマドゥロはキューバに原油を供給し続けているのである。

米ワシントンのInter American Trendsの部長アントニオ・デ・ラ・クルスはこの現状を皮肉って、「マドゥロはスーパーマーケットを空にしてまでキューバに(原油を)送りたいようだ」と述べた。

ベネズエラがキューバからの諜報活動に依存するようになったのはチャベス前大統領の時からだという。当初、ベネズエラの軍部をコントロールし、クーデターを企むような動きがあれば探知するシステムの構築と、その一方でチャベス前大統領の考えに従順な軍人に育てる指導の為にキューバから50000人がベネズエラに送り込まれたという。

更に、キューバとベネズエラの間でバリオ・アデントゥロ(Barrio Adentro)というシステムが構築されて、キューバから医師や看護師がベネズエラに派遣されることになった。

キューバからの諜報活動と医療サービスの提供に対し、ベネズエラは原油をキューバに供給することにしたのである。医療サービスについては、経済が破綻した状態にある現在のベネズエラにこのまま居続けることを拒否して隣国のコロンビアに亡命するキューバ人の医師や看護師が急増している。

その一方で、キューバからの諜報支援は現在もマドゥロ政権を支えているのである。ベネズエラ経済が困窮にある中で軍部でもマドゥロ政権に不満を持っている軍人が次第に増えているという。また、隣国のコロンビアのウリベ前大統領のようにベネズエラの軍部にクーデターを起こすように呼び掛けている政治家もいる。そのような中で、この4年間に60人以上の軍人が蜂起しているが、ベネズエラの諜報機関(SEBIN)によって鎮圧された。このSEBINもキューバからの指導がなければ有能な諜報組織にはなっていなかったと米国の民間諜報組織Stratforが指摘している。

一方のキューバもベネズエラとは持ちつ持たれつの関係を維持する必要に迫られている。今年4月にラウル・カストロから政権の移譲を受けたミゲル・ディアス=カネル評議会議長はベネズエラを訪問した際に「(ベネズエラが)抱えている問題がどれだけ大きいか我々には重要ではない。ベネズエラはいつでもキューバに信頼を寄せることができる。我々の(ベネズエラへの)支援は無条件だ」と述べた。トランプ米大統領からの脅威の前に、ベネズエラから原油の供給を受けられるキューバは今後もベネズエラを支援し続けて行かねばらないのである。