サマータイム導入は、IoT社会の脅威になる

2018年08月15日 11:30

IoT、コネクテッドインダストリー、データ流通などは、内閣府の示すSociety4.0やデータ主導社会を実現するために重要な取り組みとして位置付けられている。様々なモノがインターネットを介して、データや情報を共有し、AIなどの技術と連携し、豊かな社会実現に役立てようということで、年々多くの投資が行われてきている。

そんな中、ここにきて急浮上してきたサマータイムの導入が、大きな脅威として、IoT社会の普及を阻むどころか、もしかしたら崩壊させるかもしれない。

サマータイムは、他国では導入されているし、今時はパソコンだってスマホだって、みんなタイムゾーンを変えるだけで、ちゃんと対応しているんだから、そんなに大きな問題じゃないだろうという意見を訴える人も多い。

しかし、残念ながら本当にサマータイムの導入は、深刻なIT社会への危険を孕んでいるのだが、その辺りについて少し解説してみよう。

僕たちの周りでは、時刻と時間という二つの概念がある。時刻というのは、ある時点を表す絶対的なもので、2018年8月14日13時05分00秒というのは、その一点しか存在しない。この時刻の表現は、地域による時差があるので、厳密には日本標準時2018年8月14日13時05分00秒というよな表現をする。このため、時差のある地域の人同士が電話会議などをする時には、必ずxxx標準時の何時にというように確認することが習慣づいているし、そこではサマータイムかどうかも確認する。

一方で、私たちの生活では、xx時間後とかxx分毎にというような、絶対時刻ではなく時間の経過を扱うことも多い。5分後に電話を掛け直しますとか、48時間後以内にキャンセルしない場合には、自動的に契約になりますとかいうパターンだ。この場合、時間というのは、連続して続いてることが前提となっている。

このように、時計というのは、その絶対的な時刻にも、時間差のような時間というものを測るにも使うのだが、サマータイムの導入は、ここに複雑さが生まれてくる。

たとえば、今年の北米では、サマータイムの開始と終了は、開始:2018年3月11日(日)2:00 am → 3:00 am 、終了:2018年11月4日(日)2:00 am → 1:00 am. となっている。

たまたま、貴方が北米に滞在しているなら、3月11日の深夜2時になったら、自分の時計を1時間進め、11月4日の深夜2時になったら1時間戻すことになる。このこと自体は、時計が表示している時刻を変えることだけなので、とても簡単にできるし、パソコンのOSなどでは自動に行われる。

では、もし3月11日の1時30分に、貴方は誰かと1時間後に電話をかける約束をしたらどうなるだろうか? 残念なことに、1時間後の3月11日の2時30分という時刻はなく、正しくサマータイムを反映した時計が3月11日の3時30分を示した時に電話をかけることになる。

もし、貴方が約束をした時にストップウォッチを持っていて、そこから1時間後ということであれば、間違うことはないだろうけど、約束の時刻を2時30分と記憶したりメモしたりしていたら、その時刻を時計が表示することはないのだ。

逆に、11月4日に同じことをすると、11月4日の1時30分の1時間後というのは、正しくサマータイムの変化を反映した時計では、11月4日の2時30分ではなくて、なんと11月4日の1時30分が表示された時に電話をするということになる。

このように、サマータイムの導入では、単純に時刻の表示が変わるだけでなく、開始時には時刻が失われ、終了時には時刻が重複する。これは、様々なシステムで、なかなかに面倒な問題を引き起こす。つまり、サマータイムの開始または終了の瞬間をまたいだ時間の計測は、このことを考慮する必要があるのだ。

パソコンをはじめとした電子機器では、こういう時間差の計算には、UTCというサマータイムや時差を含まない共通の時刻に全ての時刻を変換した上で、時間差を測るなどの処理をする対応をするのが望ましい。あるいは、その計時の起点となるときに、時刻とは独立したタイマー(ストップウォッチ)を作動させる処理をすることでも良い。

つまり、誰かと1時間後という約束をした時に、UTCに変換した時刻でメモを残し、時計を読む時には常にUTCに脳内変換するか、1時間後に鳴るようにタイマーをセットすればいいわけだ。

さて、冒頭にあるように、今私たちの生活の中には、実に沢山の電子機器があり、それらの多くは何らかの時計をもって動いてる。鉄道の予約システムなど大型インフラの場合は、一斉に設定を変えたり、運用でカバーすることも出来るかもしれない(僕はそれ自体も厳しいと思うけど)。

しかし、IoT機器などの小型の電子機器がこういうUTCに変換して時刻を扱うという処理をしているかというと、それは千差万別であり、その実態の把握さえ容易ではない。実際には、かなりの確率で、サマータイムなどを考慮していない機器が多く、中には内臓のマイクロコンピュータのソフト(ファームウェアと言う) が後から書き換え出来ない製品も多い。

というわけで、オリンピック・パラリンピックを迎えて酷暑だからと言って、サマータイムを導入なんていうのは、相当な社会基盤の維持困難を伴うリスクがあるわけだ。このことは、国が推進しているデータ社会やIOTによる豊かな社会なんていうものは、一気に破綻するくらいの破壊力がある。

安易にサマータイム導入を推進する人は、こういうリスクがどのくらいあるのか、それは本当に対処可能なのかを、精神論ではなく客観的に整理して、責任のある発言をしてもらいたいものだ。

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真野 浩
一般社団法人「データ流通推進協議会」代表理事、EverySense,Inc C.E.O.

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