日経 素人哨戒機記事の取らぬ狸の皮算用

2018年08月22日 06:00

哨戒機開発・生産 独仏と協力で協議 政府、国産機部品など提供目指す

政府はドイツ、フランスが共同でつくる新型哨戒機の開発・生産に協力するため両国と協議に入った。川崎重工業の国産哨戒機「P1」の技術や部品の売り込みを検討している。哨戒機は艦船や潜水艦への警戒・監視能力を高めた航空機で、四方を海に囲まれた日本は高い運用実績を持つ。政府は国内の装備品産業の振興のため、完成品輸出を働き掛けているが難航している。開発協力や部品輸出も並行して進める考えだ。

能力の高さには国際的に定評がある。

独仏両国は日本ほど哨戒機を活発に運用しているわけではない。そのため調達コストをできるだけ削減する目的で今年4月に両国で共同開発をする覚書を結んだ。

日本政府関係者によると、両国はP1の高い技術に関心を持っているという。日本を含めた3カ国での共同開発に向け、各国が持ち寄る技術や部品などの検討を始めた。正式に合意すれば、国産部品の輸出につながる可能性が出てくる。

政府は2014年4月に「防衛装備移転三原則」を策定した。輸出条件を大幅に緩和して完成品の海外への売却を目指したが、まだ実績がない。国産の装備品は、性能への評価は高いが高額なことがネックになっているケースが多い。P1も1機160億円程度だ。

おそらく基礎知識がない記者が川重か装備庁、海自あたりを取材して言われたことを検証しないまま書いたのでしょう。

国産哨戒機P-1(川崎重工コーポレートサイトより:編集部)

「能力の高さには国際的に定評がある」って誰が言ったんでしょうかね?
海外のどこの国も採用していないし、トライアルもやっていません。カタログだけみて「定評」となるような評価をする軍隊はありません。おそらく海自の受け売りでしょう。

海自は湾岸戦争後の掃海任務に際して海自の掃海能力は世界最高と自画自賛していたわけですが、実際に派遣してみると装備は全く時代遅れ、慌てて欧州製の装備を導入しました。木造船にこだわっていたのもスウェーデンからの技術導入でFRPに変更しました。

つまりは井の中の蛙です。

更に申せば川重はC-2の民間転用をやると言い続けて、航空ショーなどにも出展していました。また経産省やら防衛省もこれをやれると後押しして、防衛省の「有識者会議」も評価していました

が、耐空・型式証明をとっておらず、あとからこれらを取ると数百億円もかかります。ただでさえお値段が、ペイロードが3倍のC-17に匹敵し、更に耐空、型式証明のコストまで乗っけて売れるわけがありません

単に官民で輸出に汗を書きますというポーズをやっただけの「やるやる詐欺」です。

こんなことは航空機開発の基礎知識があり、小学生並の算数ができれば嘘だと見破ることができます。

ところが、日経はじめメディアはウリナラファンタジー並の誤報を垂流がして、世論をミスリードしてきたわけです。日経に至っては、エアバスやボーイングなど「競合機」はランプドアがないから大きい貨物を運べないいからC-2が有利だというトンデモもな記事を一面に掲載していました。比較するなら軍用輸送機、あるいはその民間転用機なわけですが、無知な記者、無知なデスクが一面記事にしちゃったわけです。

ですから昔から日経は後ろから、下から読めと言われています。それは独自の取材記事ではなく、本業以外の文化欄、広告や雑報のほうが信頼できるからです。しかも日経は間違いを指摘しても、バックレて記者の名前も教えないようなところです。ですから、また同じ間違いを繰り返します。
そういう媒体が書いた記事であることを念頭に置くべきです。

この記事ではP-1の何を売るのか全くわかりません。機体なのか、エンジンなのか、システムなのかわかりません。

システムに関していえばかなり疑わしい。P-3Cの時代から国産ソノブイは単価が高い割に能力が低く、リムパックでは米国製を輸入して使用してきました。
またP-1のソノブイの情報を解析するシステムもNECのがクズだったので、カナダ製のものをライセンス国産しています。果たしてこの体たらくでシステムが「世界的に評価」されるでしょうか?

対して、タレスやエアバスなどの欧州のシステムハウスは既存機を使った哨戒機のシステムをかなりの頻度で開発してきました。諸外国への輸出やトライアルも多く、客観的な「評価」をされています。そのような「評価」はP-1は受けておりません。

また機体もエンジンも専用ですから、極めてコストが高い。特にエンジンの信頼性は低いし、民間や他国で採用されていないのでスペアパーツが高い上に、調達性が低いわけです。
信頼性という面でも旅客機ベースでかないません。

これは記事でも触れていますが、独仏合わせて調達数が少ないわけです。おそらくは30機も調達しない。
そこで怪しげでコストが高く、部品の供給も怪しげな機体やエンジンを採用するでしょうか。しかも自国の雇用にほとんど貢献しないからなおさらです。

機体の一部のコンポーネントがあり得るのでしょうか。可能性があるのはフライバイライトのシステム、一部のセンサーぐらいでしょう。

おそらく独仏は一応話は聞いておこう、あとは日本との商売のやり方を覚えておこう、ぐらいのつもりではないでしょうか。またある程度は「日本製」であることにある種のイリュージョンを見ているのかもしれません。
政治家はともかく、産業の現場レベルでは日本製兵器に対する見方はかなり厳しいものがあります。

率直に申して何を言いたいのかわからない記事です。ですが、この記事だけを読んだ人は、かなり商売として有益だと思って、勘違いして川重の株を買ってしまうかもしれません。会社の名刺出して取材して、足を使わず勉強もしないとこういう記事ができるという見本みたいな記事です。

■本日の市ヶ谷の噂■
日本の防衛産業の輸出がまったく期待できないでので、報道のバリューは低いと判断したロイターが防衛産業取材チームを縮小との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑