「第二の装備調達予算と化した防衛補正予算」を報道しないマスメディア

防衛予算5兆2986億円 19年度概算要求 過去最大に

防衛省は22日、2019年度予算案の概算要求をまとめた。過去最大の5兆2986億円を計上する。18年度当初予算比で2%の増額となる。不安定な北朝鮮情勢を踏まえミサイル防衛を引き続き強化するほか、宇宙監視、サイバー防衛、電磁波を扱う電子戦の3分野の対応能力を高める。8月末に正式決定する。

概算要求には23年度の運用開始を目指す陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の取得費で約2000億円を盛り込む。

毎度申し上げますが、来年度予算だけを取り上げて報道しても意味がありません。

それは東日本大震災以降、防衛予算の補正予算が「お買い物予算」あるいは「概算要求でこぼれた装備の救済予算」となっているからです。

Wikipedia:編集部

本来補正予算は例えば先の大水害の際の派遣に伴う隊員の手当や、装備の損耗とか、為替変動で燃料費が高騰して燃料費が足りなくなったとか、予算編成時に予期できなかった突発的な支出を手当するものです。大震災で被災した装備の回復などもそれに当たります。

これがまだ震災直後ならば、民間の消費が下がっており、一時的に政府の支出で経済を支えるという名目もたったでしょう(ぼくは肯定しませんが。ならば軍事に使うべきではなく民生に使うべきでした)。
それにしても3年が限度でしょう。

なし崩し的に本年度の補正予算は来年度の予算で買えなかったものを、買うための「第二の防衛予算」と化しています。その額も年々増えています。17年度補正予算案の防衛費は2345億円で過去最大でした。この中の本来の補正予算以外の「買い物予算」は1800億円程度でしょう。

新聞やテレビなどの記者クラブ所属のマスメディアこれを全く指摘せず、来年度予算だけを取り上げています。
昨年になって日経はやっとこの問題を取り上げましたが、12月の政府予算案がでてからです。

日経がやっと来年度防衛予算と、本年度の補正予算を合わせて報道

これではおそすぎます。本来概算要求がでる前後の今の時期に「第二の防衛予算」によって、防衛調達が不明瞭であることを読者に指摘すべきです。ですがなんの理由があるのか記者クラブ会員のメスメディアは報道しません。

これは国民の実質所得を減らし続け大失敗となったアベノミクスがあたかも成功しているように、見せかけるための詐術でしょう。2013~2015年までの実質所得は累計で4.6ポイントの下落で2008~2009年までのリーマンショックに匹敵しています

安倍政権では防衛予算に限らず各省庁の補正予算を増やしていますが、それは政権維持のために、国の借金でGDPを膨らますことにほかなりません。自分の世間維持のために補正予算を私する政権を、なにゆえ多くの有権者が問題にしないのか。それはやはり「報道機関」である記者クラブ会員のメディアが報道も批判もしないからでしょう。また共産党の機関紙の赤旗も問題にしないし、国会でもこの問題があまり議論されておりません。

おそらく今年は補正予算の過去最大になり、「買い物予算」は2千億円、それ以上に膨らむ可能性があります。

約5.3兆円の防衛予算のうち、2千億円は大したパーセンテージにならないように思えますが、昨年度の装備調達関連費用は9千億円弱、今年は9千億円を超えるでしょう。であれば、補正予算の「お買い物予算」は22%、2割強になります。

これでは来年度の防衛予算の装備調達を国会で議論してもその後で、2割以上の予算が打ち込まれるでは国会の予算審議は機能しないも同然です。

これは文民統制の面でも好ましいことではありません。

防衛補正予算1966億円の買い物リストを検証:ヘリ、装甲車などの装備を買おうとしている

補正予算が第2の防衛予算に~政権批判しない野党とメディア~

アベノミクスがいかに個人消費を冷やしたか指摘しています。

日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業 (講談社現代新書)
中原 圭介
講談社

2018-04-19

 

■本日の市ヶ谷の噂
イージスアショアでロッキードマーチンのレーダー採用がリークされ、レイセオン派だった小野寺防衛大臣が大激怒。大臣室から小野寺大臣の怒声が漏れた程の怒りようだったとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。