防衛予算拡大で自衛隊の“弱体化”を図る安倍政権③

2018年09月09日 06:00

陸自は来年度予算で新規に装輪自走榴弾砲を要求します。
7輌で48億億円、調達単価は6.86億円、初度費は来年度が17億円です。

すでにご案内のように、これは当初車体はMHIの重装輪回収車をベースにする予定でしたが、MANディフェンスの8輪トラックに変更されました。これは前者がエンジンの製造が終わったこともあったわけですが、コスト、性能的に問題があったことが大きかったわけです。

新型装輪155ミリ榴弾砲の試作品(防衛装備庁サイトより:編集部)

であれば、他のトラックも性能、コストはどうなのだ?ということになります。
自衛隊向けトラックの精査は必要でしょう。だめであれば海外からの導入も検討すべきです。
品質、コストが十分であるならば輸出を志向すべきです。売れればその分コストは下がるでしょうし、雇用も増えて、納税額も増えます。

装輪自走榴弾砲の主砲は99式の流用で、コストはかなり安く抑えられております。
このあたりはある程度評価できるところです。

利点はFH70よりも約半分の人員で済むので、省力化、人件費の削減に寄与します。これが最大の利点です。

ですが8輪を採用したことに対する疑問もあります。仏軍のカエサルは6輪で17.7トン、C-130で空輸が可能です。カエサルの輸出型は8輪が存在しますが、これは自動装填装置やAPUを導入しています。で陸自の装輪自走155ミリ榴弾砲はそれがないのに26トンにもなる。

これは射撃の反動の吸収システムがさほど優秀ではない、ということではないでしょうか。あるいは主砲が重たいのか。いずれにしても自動装填装置がないのに、重たく数が少ないC-2(調達機数の削減は十二分にあります)でしか空輸ができないのであれば、事実上空輸は不可能であるでしょう。

これは機動戦闘車も同じです。それより、兵員、トラック、弾薬、燃料、食料、医薬品などが優先されます。

しかも、ネットワーク化がなされておりません。今日日の砲兵システムとしてはそれだけでもNGです。また精密誘導砲弾の導入の予定もない。ある意味90年代のセンスで作っちゃったシステムです。

また例によって、これが何両導入される予定なのかも公表されていない。本来それは開発時に開示されるべき情報です。
運用条件が80年代つまり1世代前ならばそれでよかったでしょう。

そして弾薬給弾車は開発も調達もされません。普通、同じトラックを使って給弾車をつくるわけで、カエサルなどもそうしております。99式弾薬給弾車などは装軌式ですし、こちらに回す数もない。
どうするんでしょうかね? 普通のトラックにラックでも積んで使うんでしょうか?

どうもFHの更新ができればいいや、砲兵システム?なにそれ美味しいの?
みたいなセンスを感じます。

先日も取材先で馬鹿話をしたんですが、島嶼防衛ならばこの自走砲の代わりに127ミリあるいは155ミリ方を3連装砲塔を3基搭載した艦砲射撃用の「ポケット戦艦」を作ったほうがいいじゃないかという話で盛り上がりました。艦名は「ヤマト」(笑

現在の海軍砲と最新の精密誘導&射程延長砲弾であれば150~200キロの射程は実現でき、精密誘導砲撃もできる。つまりアウトレンジから攻撃が可能。
そして発射速度が陸上の榴弾砲よりも速いので単位時間あたりの投射鉄量は大きい。
内地で使うにしても太平洋側から反対側の沿岸も射撃ができるでしょう。

さらに陸上よりもより高級な照準装置の搭載も可能だし、観測用のドローンを搭載すればより精緻な射撃が可能です。また相当量の弾薬も搭載できます。

99式が136両調達さており、MLRSが約60両、現在の火砲の定数からすれば新型自走砲は100両前後の調達数になるでしょう。
であれば、このようなポケット戦艦を2~3隻建造するほうがコスパと運用の柔軟性が高いのではないでしょうか。

つねに運用できるのが2隻として18門の砲が使える。しかもわざわざ陸揚げする必要もない。また陸上からの対砲射撃による被害もない。
おそらく陸用の155ミリ砲30~60門の価値はあるでしょう。

与太話はともかく、海自の護衛艦の火砲の強化をすれば陸自の155ミリ榴弾砲を減らしてもいいということは十分検討すべきではないでしょうか。

更に申せば過剰に作った136輌の99式は必要なの?という話もあります。
だって防衛大綱では大規模な着上陸作戦は想定していないわけで、機甲戦闘用の装備は種火程度でよろしい。しかも52口径155ミリならば射程は40キロ。別にべったり戦車部隊に随伴する必要もなく、装輪式でもいいでしょう。実際仏陸軍は装軌式の自走砲を廃して、カエサルに統一します。

例えばの話、100輌ほどの99式から主砲を外して装輪自走155ミリ榴弾砲に取り付ければ、調達コストは格段に下がります。浮いた車体はのこった99式のスペア部品に使うか、89式ICVの後継に使えばよろしい。そもそも89式の車体を流用、延長したものです。砲塔は他国から買ってきて(例えばCV90とかCMIの3000シリーズとか)安く済ませれば安く新型ICVが開発できる。これに合わせて既存の89式を改修してもいいでしょう。

その分100門ほど火砲はヘリますが、海自の火砲の強化と、30門ぐらいのM777(必要があればポーティシステムも)を導入すればよろしい。実はBAEシステムズはM777のより軽量型と重量型を開発する予定です。軽量型は35口径程度でブラックホークでも懸吊空輸が可能です。

浮いた金で特科のネットワーク化と、一般部隊への統合火器管部隊(今はやっと水陸両用団だけに配備)、精密誘導砲弾の導入などに使ってはいかがでしょうか。

■本日の市ヶ谷の噂■
空自はすでに発注済みのE-2Dの他に7機分の、部品などを来年度概算予算で要求。これはなし崩し的にE-2C後継をE-2Dとして、まずは更に7機のE-2Dを調達し、その後残りの全機を更新するためとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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