沖縄で中国の工作員は暗躍しているのか?『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』

2018年09月14日 06:00

沖縄県知事選が13日告示され、米軍基地問題を主な争点に論戦がはじまった。21世紀半ばまでに西太平洋から米軍を排除したい中国は、沖縄を戦略目標の「第一列島線」の一角に位置付けているだけに、この選挙戦の成り行きを注視しているのは間違いなかろう。

玉城、佐喜真両候補SNSより:編集部

 

戦争がイヤなら 憲法を変えなさい
古森義久
飛鳥新社
2017-07-28

 

本書は、日米同盟や安全保障の視点から憲法問題を論じたものだが、尖閣を抱える沖縄問題についても言及している。とくに、見過ごせないのは、アメリカの公的機関が報告書において、中国による「沖縄を舞台にした日米分断工作」について報告書で公然と指摘していることだ。

この機関は「米中経済安保調査委員会」で、米中の経済と貿易が、安全保障に与える影響について政府と議会に政策勧告をするために2000年に法律に基づいて作られた諮問機関だ。21世紀になる前の時点での国の組織編成で、中国の台頭を読んでいたアメリカは見事だとしかいえないが、中国事情や安全保障などの専門家や、諜報、軍務の実務経験者らで構成されているとあって、年次報告書の中身は実に切実だ。

問題の報告書は、同委員会が2016年3月に提出した「China’s Efforts to Counter U.S. Forward
Presence in the Asia Pacific」(書籍の邦訳では「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」)。16ページの報告書は委員会のサイトからPDFでもダウンロードできる。興味のある人は読んでいただければと思うが、たしかに報告書では、中国は、在沖米軍の兵力展開能力を懸念しており、沖縄工作を重点化していると指摘している。

その「具体例」として、

Japanese press reporting indicates Chinese investors have acquired property near U.S. DOD facilities on Okinawa.65
China likely maintains a presence of intelligence officers and agitators to both collect intelligence against the U.S.
military presence on the island and complicate aspects of the U.S.-Japan alliance by participating in anti-base
activities.

日本の報道を引き合いに、中国の投資家が沖縄の国防総省の施設に隣接した不動産を購入したり、沖縄の基地への情報収集や、反基地活動に参加もしながら日米同盟分断をはかる扇動者を抱えるといった活動を展開していると指摘する。

また、自衛隊の元情報本部長、太田文雄氏の見解として、

Fumio Ota, a retired Japan Maritime Self-Defense Force vice admiral and a former director of the Japan
Defense Intelligence Headquarters, notes “China has … supported Okinawa’s independence activities, which were
developed by pro-Chinese Okinawans and probably Chinese … agents as well.

中国が沖縄の独立運動を支援し、中国側の工作員による活動を通じて大きくしてきたといったことが記載されている。

このほかにも報告書の生々しい中身が、書籍でも紹介されている。情報ソースの一部には週刊誌報道もあったりして、調査委員会がどこまで裏付けをしているのか、いささか煽り気味のようにも感じるが、報告書を著書で紹介した古森義久氏が言うように「日本の報道に米側がお墨付きを与えた」ことは確かだ。沖縄独立運動関係者と中国側の接近については、日本の公安調査庁のレポートも指摘している。

2010年の反日デモでは沖縄領有を主張する人も(当時の報道写真より:編集部)

ところが、米中経済安保調査委員会の報告書のほうは、その存在自体、日本のメディアでほとんど報じられていない。古森氏がこうしたかたちで、それこそモリカケでリベラルメディアが大事にしている「公文書」を提示した意義はある。

困ったことに、いまの日本の大手メディアは著者の警鐘に耳を傾ける姿勢は皆無だ。

昨年の「ニュース女子」問題以降、沖縄の基地反対運動と中国の諜報活動の関連性について、大手メディアで話題にすることすら憚られる雰囲気がある。たしかにあの番組制作の問題はあったが、それとは別にインテリジェンスの観点から安全保障への懸念を指摘した人に対してまで、脊髄反射的に「フェイクニュース」や「右翼」のレッテルを貼って、議論そのものに蓋をすることのほうが言論空間を貧しくしているのではないか。

注目したいのは、問題の報告書の日付がトランプ政権が誕生前になっていることだ。その当時、米中が貿易戦争を繰り広げていまほど緊張するとは、誰が思っていたであろうか。リベラルなオバマ政権下ですらも、インテリジェンスについてはあらゆる可能性を排除せずに政策判断の材料にしている。「常在戦場」が世界基準なのだ。

沖縄の地元紙や朝日新聞などのリベラル系メディア、あるいはその「亜流」たる大手ネットメディアは、知事選に際して「ファクトチェック」に血道をあげるそうだが、「護憲平和フィルター」を通したファクトでなければ、“フェイク扱い”になるのだろうか。この沖縄知事選で、メディアの安全保障論議も新しい段階を迎えるのか注目している。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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