「高輪ゲートウェイ駅」のネーミングがひどすぎる件

尾藤 克之

JR東日本は4日の定例会見で、山手線品川駅と田町駅の間に建設中の駅の名前を「高輪ゲートウェイ駅」とすると発表した。選定理由として「新しい駅が歴史ある地域で今後の未来を切り開くシンボルとして街全体の発展に寄与するよう駅名を採用した」としている。2020年春に開業予定で、新駅は1971年の西日暮里駅以来、49年ぶりとなる。

Nスタ|TBSテレビより。

「本日発表されたばかりのJR山手線新駅『高輪ゲートウェイ駅』。早くもネット上では非難轟々です。こうなってしまった理由がいくつかあります」と解説するのは、山田龍也弁理士(クロスリンク特許事務所)。今回は、ネーミングのコツについて伺った。

実在する事例からネーミングのコツを探る

「JR東日本はこの名前の選定理由について、『新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました』と発表しています。実は、ネーミングでは『3つの失敗』をしています。これを分析することで、正しいネーミングのコツが見えてきます。」(山田弁理士)

1.利用者から共感を得られる名前ではない
「高輪ゲートウェイ駅」の1つ目の失敗は、利用者の思いをないがしろにしたことです。JRは事前に駅名案の募集を行っています。その結果は以下のとおりです。
第1位「高輪(たかなわ)」
第2位「芝浦(しばうら)」
第3位「芝浜(しばはま)」

第130位「高輪ゲートウェイ」

利用者は「高輪(たかなわ)」が駅名としてしっくりくると言っているのに、130位の「高輪ゲートウェイ」が浮上してきたわけです。「だったら、アンケートなんてやっても無駄じゃないか!」「最初からこれに決まってたんじゃないの?」という声が出て当然です。

2.名前の意味内容が分かり難い
「高輪ゲートウェイ駅」の2つ目の失敗は、名前の意味内容が分かり難いことです。「ゲートウェイ」という言葉が分かり難いのです。日本人にはこの言葉は馴染みがありません。ネットワーク用語の「ゲートウェイ」を想像する人や、昔、日本に拠点があった牛のマークのパソコンメーカー「日本ゲートウェイ」を想像する人もいます。

JR東日本としては「交流の拠点」といった意味合いを出したかったのでしょうが、利用者の想像はそこまで及ばないということです。名前は字面と意味内容が相まって、その名前が浸透していきます。名前はその意味しているところが容易に理解できるように名付けるというのが鉄則です。ネーミングにおいて、「分かり易さ」は必須なのです。

3.名前が長い
「高輪ゲートウェイ駅」の3つ目の失敗は、名前が長いことです。名前が長いと覚えづらく浸透し難くなります。利用者は、「高輪」とか「ゲートウェイ」という形で省略して使うのではないでしょうか?そうすると、「高輪ゲートウェイ」という名称は使われない。使われなければ、その名前は覚えてもらえず、浸透しません。

まさか「天の声」の仕業か

山田龍也弁理士(講演会にて撮影)

筆者は、山田弁理士の見解にほぼ賛同している。アンケート結果がまったく反映されていないことも問題である。鉄道系はこういう失敗が多い。「E電」しかり、元都知事の石原さんに大江戸線に改名されてしまった「ゆめもぐら」もある。

「気の利いた名前にしようという思いが先走ると、利用者の感覚から乖離してしまうので要注意です。利用者にとって親しみの持てる名前にする、共感を持てる名前にするというのはネーミングの鉄則なのです。JR新駅、しかも山手線というビッグプロジェクトでは、様々な思惑が絡むので一筋縄でいかないのはわかります。」(山田弁理士)

「駅名は誰のものか?」「誰が利用するのか?」を頭に入れておいた方がよさそうである。なお、貴重な情報をいただいた、山田龍也弁理士に御礼申し上げたい。

銀座のスイーツ弁理士・山田龍也の「ササるブログ!」
※ご関心のある方はこちらもご覧ください。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

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