所得再分配機能を強化し、公平でシンプルな税制に

2018年12月17日 06:00

環境問題と格差問題。

この2つが、これから日本と世界が向き合わなくてはならない根本問題だと思います。しかし、トランプ大統領のアメリカは、これらの問題に目を背けるだけでなく、逆方向の政策を進めているようです。では、日本はどうなのか。こうした視点で、今回の与党の税制改正大綱を見てみたいと思います。

不公平な税制で格差拡大

まず、環境問題に対する政策については、「エコカー減税」の見直しなど、ある程度、評価できる取り組みもありますが、残念ながら、格差是正については、極めて不十分な内容だと言わざるを得ません。

特に、国会で何度も指摘してきた金融所得課税の見直しが行われていないことは残念です。金融所得課税は(他の所得と合算しない)分離課税で、かつ、定率20%の税率で累進課税にはなっていないので、全所得に占める金融所得の割合が高い傾向にある富裕層ほど、所得税負担率が低くなります。


グラフを見てもらうと一目瞭然ですが、年間所得1億円までは、所得が増えるにつれて所得税負担率が上がっていきますが、1億円をピークに所得税負担率が低下します。まさに「逆累進」となっているのが現状です。

大規模な金融緩和と、日銀や年金基金が株を買い支える政策によって株価は上昇しました。であれば、それで恩恵を受けた高所得者に対して、しかるべき税負担を求めるのはおかしな話ではありません。しかし、今回の税制改正でも全く手がつけられていません。ここを改善しない限り、アベノミクスによる格差は開くばかりです。

格差を拡大する「軽減税率」

さらに、消費税増税時における「逆進性」対策として導入される「軽減税率」も、低所得者対策としては極めて効果が薄く、逆に格差を拡大する側面があります。

軽減税率を導入することで、約1兆円も税収が減りますが、そのお金が全て低所得者のメリットになるかといえばそうではなくて、実は、全世帯の約3分の1を占める年収300万円以下の世帯には、この1兆円のうち約1割しかメリットが行きません。その多くは中高所得者のメリットとなるのです。

冷静に考えれば分かりますが、所得の多い人ほど、食料品であってもより高額のものを買うので、2%分の減税メリットの絶対額もより大きくなるわけです。高級な神戸牛を買っても2%の軽減税率が適用されます。つまり、軽減税率は、そのイメージとは異なり、低所得者より、むしろ高所得者に優しい制度なのです。

「税こそ政治」と言われます。それゆえ税制のあり方には時の政権の考え方が色濃く現れます。今回の与党の税制大綱を見ると、参議院選挙を意識して、各業界団体からの陳情を色濃く反映させた内容になっていますが、そこに格差是正の方向性を見い出すことはできません。

古い家族観では子どもの貧困は救えない

さらに言えば、子どもの貧困対策として、「未婚のひとり親」を寡婦控除の対象とはせずに、住民税だけ軽減する中途半端な対応をとったことにも、自民党の価値観、家族観が如実に現れています。未婚のひとり親も寡婦控除の対象にしてしまうと、伝統的な家族観が破壊するという理由らしいのですが、どのように生まれてきたかについて、子どもに責任を問うことはできません。「未婚のひとり親」を所得税減税の支援対象から外すのは、古臭い「昭和」の風情を禁じ得ません。

とにかく、世界中で問題視されている格差拡大が日本でも拡大し、社会の分断が進まないよう、税による所得再配分機能を強化をしていかなくてはなりません。にもかかわらず、与党の税制大綱を見ると、逆に格差が拡大していく懸念さえ感じます。

「軽減税率」よりも中低所得者向け給付を

写真AC:編集部

そこで、私たち国民民主党は、税金の使われ方を、より中低所得者が恩恵を受けるものに変えていくために、軽減税率に変わる「新しい答え」として、「新たな給付制度」を提案しています。

つまり、高所得者ほどメリットを受ける軽減税率ではなく、平均して一人当たり8000円を中低所得者に「給付」することで、より効果的な逆進性対策を講じていきます。具体的には、マイナンバーを活用して、例えば、低所得高齢者には年金の上乗せの形で給付したり、また、中所得者には所得税の減税(税額控除)という形で実施します。

そして、この「給付」制度を、将来的には、最低限の生活保障につながる「日本版ベーシックインカム制度」に発展させていきます。

また、軽減税率には、中小零細の免税事業者が取引から排除される、「廃業促進税制」としての側面があることや、何を軽減税率の対象とするのかが曖昧にならざるを得ないために、裁量的な行政や利権の温床になりかねないという問題もあります。食料品ではない宅配の新聞だけが8%の軽減税率の対象になっていることなど、その典型です。

国民民主党は公平、中立、簡素な税制をめざす

税金の負担が増えることは、誰にとっても嫌なものです。だからこそ、公平、中立、簡素といった基本原則が堅持されなければなりません。不公平で複雑な税制は、社会のあり方を歪める原因にもなります。

税制の歪みを正すためには、政策を変えなければなりません。政策を変えるためには、政治を変えるしかなく、そのためには選挙で勝つしかありません。その意味でも、来年の参議院選挙で、確実に議席を増やしていきます。皆さんのご支援、よろしくお願い申し上げます。

(参考)

国民民主党「税制改革 新構想」―つくろう、新しい答え。―


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

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玉木 雄一郎
衆議院議員(香川2区、国民民主党代表)

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