韓国の「反日感情」は合理的である

韓国の駆逐艦による自衛隊機へのレーダー照射が、アゴラでも話題になっている。韓国側の説明は二転三転しているが、今まで報道されている事実から判断すると、偶然や過失とは考えられない。しかしそれを「敵意のあらわれ」とはいえない。その理由は自明である。日本と韓国が交戦する状況にはないからだ。

勝訴を喜ぶ元徴用工の原告団(KBSより:編集部)

だから韓国政府が謝罪すればよかったのだが、日韓の局長級協議では謝罪を拒否した。これも今までの韓国政府の行動から予想されたことだ。もし今回の事件で韓国政府が謝罪したら、国内から「弱腰だ」と強い批判を浴びるだろう。韓国はそういう国なのだ。

特に文在寅政権は北朝鮮との関係が深く、政権の中に北の工作員が多数いるといわれるので、その行動が北朝鮮と似てくるのも無理はない。今年話題になった「徴用工」問題も国際法違反だが、そんなことは彼らにとってどうでもいい。彼らにとっては、国民感情が国際法に優先するからだ。

こういう国が例外かというと、残念ながらそうはいえない。その証拠はトランプ大統領が、毎日ツイッターで提供している。それをポピュリズムと呼んで民主主義とは別のものだと思っている人が多いが、ポピュリズムでなかった民主国家はほとんどない。消費税を2%増税する対策として5%の「ポイント還元」を決めた安倍政権も、似たようなものだ。

民主国家を動かすのは感情だが、それは不合理ではない。特に地政学的に不安定な位置にある朝鮮半島では、政権の安定を保つために外部に共通の敵を作り出すことが重要だ。敵と味方(外部と内部)を区別する感情は人間が集団で生活する限り必要なので、すべての人にそなわっているからだ。

韓国では軍事政権の時代には敵は北朝鮮だったが、1990年代に民政に移行してからは日本が敵になった。そのきっかけになったのが慰安婦問題だった。韓国の多くの国民にとって大事なのは、敵と味方をわける一貫した物語だから、慰安婦が強制連行されたかどうかという歴史的事実は大した問題ではない。

韓国には「日帝36年」という物語があり、慰安婦も徴用工もその小道具である。日本が朝鮮半島を植民地支配したことは事実なので、これを持ち出されると日本は弱い。かつて世界を支配したヨーロッパ諸国も、今どき植民地主義を肯定できないので、日本の立場に立つことはできない。

つまり韓国の反日感情は、それなりに合理的なのだ。多くの国民を動かすのは論理や事実ではなく、彼らの「古い脳」に埋め込まれた感情である。それは歴史的事実に反していても、韓国のように文化的・言語的に「閉じた社会」では維持できる。子供のころから学校で教え込み、マスコミもそれを復唱するからだ。

これは戦前の日本で「天孫降臨」の神話を学校で教えていたのと同じだ。マスコミも(津田左右吉以外の)学者も、それがフィクションだと指摘しなかった。韓国は、よくも悪くも日本の鏡像なのだ。日本の神話は戦後の占領統治で破壊されたが、韓国の神話を破壊するのは次の戦争だろう。残念ながら、それまで彼らの反日感情は変わりそうにない。