レーダー照射:韓国の反日感情は国家的損失

高 永喆

北朝鮮の長期独裁政権を支える2本柱は「反米扇動」と「反日扇動」である。外に敵を作って国民の敵愾心を煽り、不平不満のはけ口にして国内の結束を固めるのが、彼らの常套手段だ。韓国の過去政権も支持率が落ちると、反日感情を刺激して国内の結束を図った前例がある。

日本政府に反論声明を出す韓国国防部(公式YouTubeより:編集部)

金泳三大統領は「歴史の立て直し」を唱え、政府中央庁舎や国立中央博物館にもなった旧朝鮮総督府の建物を撤去したが、1997年に金融危機を招き、後任の金大中大統領が日本の資金支援で国を倒産危機から救った。

盧武鉉大統領は2006年、海上保安庁の測量船2隻による竹島(独島)近海の測量調査を阻止しようと、日本が侵攻してくると煽動して反日騒動を起こした。

特に、李明博大統領は支持率挽回のため自ら独島に上陸して反日感情を煽ったが、結果は日本の韓流ブームが冷え込んで韓国の観光産業は低迷し,莫大な損失をもたらした。

韓国政府の反日路線は在日約50万人(ニュ-カマ-約15万人)、日本企業に就職した2万7,000人の若者たちの足を引っ張る。韓国が貧しかった頃、在日同胞の誠金寄付と本国への投資は、経済成長の牽引車となった。本国の反日感情煽動は、在日同胞の恩恵に報いるどころか、日本人の嫌韓雰囲気を煽って、むしろ損害を与える恐れがある。

日韓は年間700万以上の韓国人が日本を訪問しており、日本人も年間200万以上が韓国を訪れる。日韓の人的交流と物流は切断できない太い絆である。

筆者が長期間、日本に住んで体験したのは、日本人の大部分はほとんど反韓感情がないという事実である。韓国の日本に対する好感度も他国に比べて悪くない。残念ながら、一部の政治家たちが、政治的な打算によって反日感情と嫌韓感情を煽る側面が垣間見られるのだ。

韓国と日本は共に米国との同盟関係であるため、準同盟関係である。1996年には、環太平洋合同演習(リムパック)に参加した日本の駆逐艦が米海軍艦載機A6を標的と誤認して撃墜したが、同盟国であるため、早期収拾されたことがある。

最近、物議を醸す韓国駆逐艦のレーダー照射問題も、遭難船舶の探索過程で全レーダーを稼働する中で起きた。日韓両国とも相手を威嚇する意図がなかったという点が重要なポイントだ。

防衛当局間の無駄な論争は安保上に深刻な損害を与えかねない。互いに過剰反応したことを認め、譲歩と理解の下で問題が早期収拾されることを期待したい。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員)

※本稿は『世界日報』(1月7日)に掲載したコラムを筆者が加筆したものです。

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