消費増税も軽減税率もポイント還元も中止しよう

2019年01月29日 12:00

有地浩氏の記事に私も同感だ。長期的には消費税の増税は必要だが、今回の増税案は軽減税率やポイント還元など複雑怪奇になり、消費税の最大のメリットである「一律で透明な税」という特長がなくなった。

写真AC:編集部

政府債務を削減することは必要だが、ゼロ金利では優先順位は高くない。政府債務が増加した最大の原因は社会保障給付の増加だが、それを削減できないとすると、負担増にはざっくりいって次の三つの方法がある。

・消費税の増税
・社会保険料の増額
・国債の増発

本来はEUの付加価値税(VAT)のように一律に課税することが望ましいが、安倍政権の増税案は例外だらけだ。一旦こういう前例をつくると軽減税率をめぐるロビイングが起こり、政治力の強い業界に食い物にされる。今回の増税で新聞が軽減税率になったのはその典型で、「逆進性の解消」とは無関係だ。

このまま社会保障給付が増えると、長期的には消費税率はEU並みの20%ぐらいになるので、今後もロビイングは激しくなるだろう。フランスの例でみると、食品や新聞だけではなく、医療、金融、宿泊、不動産、教育なども軽減税率を求め、次の図のようにVATは業界に食い散らかされている。

フランスの付加価値税率

消費税を増税しないと、社会保険料を増額する必要があるが、これは労働者に課税して年金生活者に給付する所得再分配だ。国債の増発は、負担を将来世代に転嫁する世代間の再分配である。つまり消費税を増税してもしなくても、何らかの所得分配のゆがみは避けられないのだ。どれも望ましくないが、問題はどれが相対的に悪くないかである。

国債の弊害は金利が上昇してインフレになることだが、世界的にゼロ金利に近い状況が続いているので、サマーズも指摘するように、いま心配すべきなのは金利上昇ではない。世界的な貯蓄過剰が長期停滞の原因なので、それを財政赤字で吸収することは経済にプラスになる可能性もある。

国債のもう一つの弊害は将来世代に負担が転嫁されることだが、これもゼロ金利ではそれほど大きく増えない。今のように名目金利が名目成長率より低ければ、プライマリーバランスは悪化しないので、財政は持続可能だ。企業貯蓄を政府が使えば、成長率は上がるかもしれない。

10月の増税はいったん凍結して軽減税率もポイント還元も白紙に戻し、税制を考え直してはどうだろうか。所得分配は税制全体で考えるべきで、逆進性は軽減税率ではなく給付つき税額控除(負の所得税)で補正するほうが合理的だ。法人税の減税も必要だが、租税特別措置は廃止すべきだ。固定資産税や相続税など資産課税の強化も必要だ。

施政方針演説を行う安倍首相(28日、官邸サイトより:編集部)

予算案はもう国会に提出されたので、これから組み替える必要があるが、増税分の穴があく心配はない。初年度については5.2兆円の増税に対して2兆円の増税対策費(ポイント還元など)を計上し、教育無償化などに3.2兆円使うので、これをすべて白紙に戻せば歳入は予定より増える。

最大の懸念は、今まで2度も延期した増税をまた延期したら、消費税率は8%のまま半永久的に上げられないのではないかということだろう。安倍首相では不可能だが、彼の任期は2021年までなので、その後の首相が上げることはできる。

何らかの基準を設定することも考えられる。「インフレ目標2%に達するまで増税を凍結する」というのが、シムズの提案である。彼もいうように今の日本は「政府が過剰に信頼されている」状況なので、この程度では(よくも悪くも)何も起こらないだろう。

消費税の増税はいずれ必要だが、今は財政破綻を心配する局面ではない。今回のでたらめな増税案は、有地氏もいうように「百年禍根を残す」。国会でも、こういう根本的な税のあり方を考えてほしい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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