米国下院議長「慰安婦合意、日本が尊重するべき」と発言

渡瀬 裕哉

ペロシ下院議長(Wikipediaより:編集部)

筆者は本メディアでも再三述べているが、日本人は韓国の対米ロビー能力を舐めているため、置かれている状況の深刻さを全く理解できていないと思う。そのため、「丁寧な無視」のような誤った戦略が喧伝されて、それに同調する物知らずな識者が出てくる残念な状況となっている。

韓国の対米ロビー活動の一環として、最近注目すべきことがあったので1つ紹介しておきたい。

米下院議長「慰安婦合意、日本が尊重を」韓国国会代表団に(聯合ニュース)

これは天皇陛下への謝罪を求める侮辱を行った韓国の文議長ら一行が米国で連邦議会の指導者に面会した際に、ナンシー・ペロシ下院議長が発言したとされている。英語では面談内容を確認できなかったので韓国側のフカシの可能性もあるが、それにしてもこれに近い発言があったと見て良いだろう。

ペロシ下院議長は現在の米国民主党指導部のトップと見て良い人物である。その人物が慰安婦合意を一方的に破棄しつつある韓国からの訪米団に対して、「『(慰安婦)被害者が権利を侵害されたことを知っている。慰安婦問題の解決に向けた努力を支持する』とした上で、『(韓国と)日本の合意を、日本が尊重してくれれば』と強調した。」と発言したというのだから只事ではない。

ペロシ下院議長自体は、2007年の前の下院議長時代に、若い女性の性的奴隷制への帝国軍の強制を正式に認めて謝罪することを日本政府に求める決議を支持する声明を堂々と喧伝するほどに向こう側の人間だ。日本側の世論戦の敗北を象徴する人物と言える。(この時の米国議会決議では日本側は一方的に世論戦で敗北。)

<ペロシ議長の対日謝罪要求決議に関する声明>Supporting the ‘Comfort Women’ Resolution

しかし、それであっても慰安婦合意の件は韓国の振る舞いが間違っているのは時系列を並べれば明らかだと思う。現在でも日本政府が韓国ロビーに良いようにやられているわけだ。その結果は現在の米国政界のキーパーソンであるペロシ下院議長が「慰安婦合意を巡る問題に関する責任が日本側にもある」と思わされているかもしれない現状を見ればわかる。

明確にしておきたいことは「丁寧な無視」は全く無駄であり、日本政府の不作為を肯定する国内世論向けの対策にしか過ぎないということだ。韓国に対して明確かつ徹底的に世論戦で対抗することが必要だ。小野寺議員は丁寧な無視以外にも「戦略的発信」も必要と明言されるに至り、安倍政権も同様の方針だと思うが、日本政府は「相手は本気だ」という当たり前の前提に立って事にあたるべきだ。

日本政府は直ちにナンシー・ペロシ下院議長にコンタクトし、当該発言の有無と真意を確認し、正しい経緯を米国側に説明して認識の変更を迫るべきである。


編集部より:この記事は、The Urban Folks 2019年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。