今更だが、森友土地と瑕疵担保責任(下)

2019年02月17日 06:00

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一つ目は、豊中市が学校給食センター用地として新関西国際空港会社から購入した森友土地近郊の土地の事案。購入後に石綿を含むスレートなどが多数埋まっていることが判明し、豊中市の学校給食課長によれば撤去費用として14.3億円を議会に上程していることが報道された。

2017年3月24日の参院予算委審議では政府参考人の国交省航空局長が以下の答弁をしている。

委員御指摘の豊中市の給食センター用地につきましては、新関西国際空港株式会社より豊中市に対して平成二十七年六月に売却がされたというふうに承知をしてございます。当該用地に係る売買契約には瑕疵担保責任に関する規定はございません。

このため、瑕疵担保責任につきましては、民法の一般原則に従い、隠れた瑕疵があったときは、買主がその事実を知ったときから一年以内に損害賠償の請求をできるということになります。

当該土地では、豊中市への売却後にコンクリート殻等の地下埋設物が発見されており、豊中市は約十四・三億円の撤去費用を見込んでいると聞いておりますが、今後、売主の瑕疵担保責任について、豊中市と新関西国際空港株式会社との間で協議がなされるものと聞いてございます。

他は森友土地と一筆でほぼ同じ地歴の隣地、野田中央公園の土地。佐川元財務省理財局長が国会審議で以下のように答弁している。

野田中央公園の方は、平成二十二年の三月に約十四億円、豊中の方で補助金なり交付金なりをいただいた上で公園用地として先方側のお買い求めいただいたものでございますが、そこについては、その豊中市との売買契約書におきましては、売却後に見付かった瑕疵につきまして売主としての国の負担で対応するということで瑕疵担保条項が設けられておりまして、その時点ではいわゆる土壌汚染については見付かっていなかったわけでございます、売却時には。

その後に土壌汚染が見付かったものですから、国から豊中市に対しまして、契約上の瑕疵担保条項に基づきまして、二千三百万円をお支払いしております。

前者は瑕疵担保責任免責特約の付与がない契約なので、民法の一般原則に従って売主である新関西国際空港会社が14.3億円の賠償をするようだ。なお、新関西国際空港会社にこの土地を売った国との契約内容、つまり賠償責任が国にまで遡るかどうかまではこの答弁からは判らない。

後者は内閣府と国交省からの14億円ばかりが話題になったが、森友問題と関係するのは瑕疵担保条項に基づいて国が23百万円を補償したことだ。少額なのは、確か公園という用途に照らし盛土するだけで済むからだったと記憶する。多額の補助金が出ていたことも関係したかも知れない。

こういった苦い経験をしている理財局が、予期しない森友土地の追加ゴミ噴出に「瑕疵担保責任免責特約」の付与を思い浮かべない方が職務怠慢だろう。なにしろ相手はあの籠池夫妻、先々どんな因縁を付けられるか判らない。遅れたら訴訟されるかもしれない開校期限だってあった。

籠池氏と佐川元理財局長(FCCJ動画、衆議院インターネット中継より:編集部)

平成29年2月23日の国会衆院予算委員会第での佐川氏の以下の答弁がそれを物語っている。

・・貸付契約書にあの条項がございまして、三メートルと事前にわかっているところについては有益費をお支払いするということでございますが、新たなものが見つかったということで、売買予約契約に移行いたしまして、そのときには地盤の状況を全て価格要素として考慮するということになっております。

さらに、今、国交省からも答弁申し上げましたように、本件については、新たに地下埋設物が判明した後に、今後さらにどのような埋設物が深い部分で出てくるかもわかりませんので、本件土地の売買契約で、隠れた瑕疵も含め、一切の瑕疵について国の責任を免除する特約を付すということを勘案して今回の撤去費用を見積もったところでございます。

ここで地歴の似通ったこれら三物件の土地の「瑕疵」にまつわる国の補償額を整理しておく。この金額の差は、掘り返さないと判らない土地の状態の違いというよりも、むしろ土地の利用目的、つまり公園か学校か給食工場かの違いによると見るべきだろう。

・野田中央公園  23百万円(これと別に国からの補助金14億円がある)

・森友学園土地  8億円+1.3億円(森友が立て替えた有益費)=9.3億円

・給食センター  14.3億円(豊中市が予算計上しているゴミの撤去費用)

本件の「瑕疵担保責任」の最重要点は、佐川答弁にある「隠れた瑕疵も含め、一切の瑕疵について国の責任を免除する」という文言だ。当たり前のことだが「隠れた瑕疵」が顕在化するのは「将来」だ。その損害を明確な根拠を以って今算定するのは甚だ難しい。よって必ず推定ベースの見込み額になる。

具体的にどうするかといえば、一般的には類似の取引例を参考に双方が交渉して決める。本件では大阪航空局が給食センターの土地の状態や14億円といわれる補償額を参考にしたはずだ。が、民間のM&Aなどでは類似案件のないケースの方がむしろ多い。

その場合はB/Sから時価純資産を評価したり、売上高やEBITDAを何倍かしたり、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算したり、といった様々な手法を用いて評価する。客観性を欠くと株主代表訴訟を惹起するので、コンサル会社などの第三者機関に価値評価を依頼することも多い。

本来ならば森友土地の査定も第三者機関に依頼すべきだった。が、査定業者の選定で役所ゆえに必要な入札などをしていると開校に間に合わなくなって、前掲した財務省文書にある通り森友から国家賠償訴訟を受けるリスクがあった。で、大阪航空局が評価することになった。

が、だからといって第三者機関の評価が8億円よりも必ず少なくなるという保証などない。給食センターの14億円を第三者機関が参考にしないはずがないからだ。よって、何が起こるか判らない将来の「瑕疵担保責任」が免責できるなら8億円は上出来だった、と筆者は思う。

最後に、この問題が持ち上がった当初から「ダンプカー四千台分の埋設物」がどうだとか「近隣住民や工事業者に確認してもそんなに沢山のトラックが往来したとの証言はない」とかいって野党やメディアが騒いでいたことについて一言付け加えたい。

婁述したように、「瑕疵担保責任免責特約」が想定する「瑕疵」は「隠れた瑕疵」のすべてを指し、本件にいうゴミの量は単にその一つに過ぎない。地盤沈下で校舎の建て直しなどになれば10億円を優に超えようし、しつこいようだが給食センターの補償14億円も忘れてはならない。

が、それにも増して重要なのは、一旦買い手に土地が引き渡された以上、埋設物を実際に撤去するかどうかは専ら買い手の判断に係るということだ。臍の曲がった言い方をすれば、買い手は自ら計画する土地の利用目的に適う範囲でしか「瑕疵」の改善を行なわなくて良い。

つまり埋設ゴミのうちどれだけの量を除去するかを含めて、万事は森友学園の問題ということだ。売り手の国はそのことに無関係である。

高橋 克己 
年金生活の男性。東アジア近現代史や横須賀生まれゆえ沖縄問題にも関心あり。台湾や南千島の帰属と朝鮮半島問題の淵源である幕末からサンフランシスコまでの条約を勉強中。

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