大阪都構想は、人事一元化か、単純統合でよくないか?

「統合」の形

(A)府と市を統合せず、「府市人材バンク」を新設し府市職員全員を移し、そこからシャッフルして府と市に出向させる。

(B)府と市を統合するが、単純統合とし、旧大阪市の区を特別区に再編するようなことはしない。

筆者は、「大阪都構想」は上記の何れかの方法で代替するのがベターだと考える。

大阪城天守閣からの眺望(写真AC:編集部)

統一地方選が今一つ盛り上がりが無く始まったが、その中での一番の注目は大阪都構想を焦点にした大阪府知事、大阪市長入れ替えダブル選挙だろう。

大阪都構想は、東京を筆頭に関西圏以外ではもう旬を過ぎた感もあるが、筆者は以前一時期、関西圏に住んでいたこともあり、それなりに緩くウォッチし続けてきた。

大阪都構想は、「府市合わせ」と言われる犬猿の仲の両者が箱物などを競う二重行政の弊害に終止符を打つために橋下徹氏が率いる「維新」により提唱され、2015年5月17日にこの是非を問う住民投票が行われ僅差で否決された。

部外者からの岡目八目で単純化すると、大阪都構想のメリットとして挙げられるのは、前述の二重行政の解消に尽きるだろう。一方、デメリットとしては新たに再編した特別区に区役所を建設する等のコストが大きい事だ。

一説には、これらのコストが、統合による経済効果や行政収支改善を上回り兼ねないという試算もあるようだ。

橋下氏の喧嘩殺法と現実性

広域行政と中心都市間の問題は、イギリスでの「グレーター・ロンドン」の曲折を見ても、普遍的課題であり、府市統合は反対陣営の一部が唱えるようにトンデモ政策という訳ではない。

犬猿の仲と言われて弊害を生んでいるなら、統合もしくは実質的な統合を行うのは合理的な対策だろう。企業の世界でも買収してグループ会社となったが、競合し合って弊害が出る場合には、大幅な人事交流を行なったり、合併してしまうのはよくある事だ。

ただ大阪都構想には、特別区の新設と区役所の建設が加わる。これについて、「維新」としては住民密着の行政サービスの提供等の考えもあるのだろうが、部外者の筆者から見ると「大阪都」として東京都と同じ形にしたいという発想と、景気浮揚を図ると共に建設会社を巻き込んで味方に付けたいという戦術も感じられる。

橋下氏も先の住民投票では、大阪「都」を強調し、東京都と同等のものを目指す勢いで、現行の「都構想」案で民意を問うた。それはド派手な「華」を掲げる事で戦術としては間違っていなかった。しかし、否決後は大阪を東京が災害等で機能不全になった際、若しくは壊滅した時に首都機能を代替する「副都」「陪都」としての位置付けを前に示し始めた感もある。大阪がパワーアップする事は、関西圏外から見ても望ましい事だ。

だが、名称は「大阪都」でもよいが、大阪が「東京都」と同列としてトコトン張り合った場合、国家統合の意識、国としての一体感が希薄となり、絵空事ではなく進んでは中国等に付け入られる事になり兼ねず、橋下氏が「変節」したのなら妥当だろう。また、2025年の大阪万博等を考えれば、区役所新設の景気浮揚効果も人手不足で逆目に出る事も考えられる。

以上、「統合」のメリットとコストのバランスを考えると、「大阪都構想」は、筆者は冒頭に掲げたような所、若しくは(A)から(B)へ移行に落ち着くのがベターだと考える。

大阪維新は、柔軟性を持ってダブル選に臨む方がよいのではないか。


佐藤 鴻全  政治外交ウォッチャー、ブロガー、会社員

HP佐藤総研 Twitter@kozen_sato