ピエール瀧さんの作品自粛等の件で要望書を提出

2019年03月26日 06:00

電気グルーブ公式サイトより

昨日3月25日付で、依存症の当事者・家族及び支援者で作る「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」より「電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書」を提出させて頂きました。

送り先は、

松竹株式会社 代表取締役会長 大谷 信義 様 代表取締役社長 迫本 淳一 様

株式会社 セガゲームズ 代表取締役会長CEO里見 治紀 様 代表取締役社長COO 松原 健二 様

株式会社ソニーミュージックエンターテイメント 代表取締役社長 水野 道訓 様

株式会社TBS 取締役会長 武田信二 様 代表取締役社長 佐々木卓 様

日本放送協会 会長 上田 良一 様 (50音順)

の5社で、要望の内容は以下の通りです。

私たちは日本の薬物問題、また依存症対策に関わる者として、この度、麻薬取締法違反で逮捕された電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求めたく、要望書を提出致します。

現在、厚生労働省が依存症の理解を深めるための普及啓発事業を各地で実施していることは、ご存じかと思います。
依存症は回復可能な病気であること、社会野偏見、差別が回復を妨げる大きな障壁であることを、元サッカー日本代表の前園真聖さんをはじめ、多くの著名人、芸能人たちが参加して呼びかけています。

3月6日に東京で開かれたイベントでは、清原和博氏が登壇し、自身の体験をもとに「勇気を出して病院へ」と呼びかけました。

清原和博さん、薬物使用「苦しみの日々だった」 啓発イベントに出演 元プロ野球選手(毎日新聞)

その矢先に起きたのが、ピエール瀧さんのコカイン使用による検挙でした。
そして、過去の出演作の映画、テレビドラマ、DVDなどの放送・販売・上映などの自粛が相次ぎました。

こうした処置は、「犯罪者を金儲けの手段にするな」といった批判を警戒した苦渋の策なのでしょうが、私たちには薬物事犯となった芸能人へのあまりにも厳しすぎる制裁に思えます。

その過剰な対応が当事者や家族、そして社会の意識に及ぼす悪影響を想像して頂ければと思います。
検挙された芸能人やアーティストは、活躍中の人であればあるほど、多額の賠償金を請求されるなどして、経済的に大きな負担を抱えます。

これまでの同様事案ではほとぼりが冷めたころに「自粛解除」となることが通例ですが、当事者は司法的に処罰されること以外に、あまりにも大きなダメージを負います。仕事の表舞台から排除され、ワイドショーなどで悪のイメージが繰り返し強調されることによって、重大な犯罪というイメージが必要以上に増幅されています。その配偶者や子どもも、周囲から白眼視されることになります。

そうした空気は、薬物使用が発覚したら社会的に抹殺されるという恐怖感が煽られ、相談や支援に繋がる勇気を阻害し、孤立を招き、問題を悪化させていきます。

依存症が回復可能な病気であることを多くの人に知ってもらい、それを応援していく流れを作りだしていくことはマスメディアの使命だと思うのですが、「自粛という名の制裁」はあまりに相反する行動ではないでしょうか。

欧米など、諸外国でも俳優やアーティストの薬物問題が発覚することは珍しくはありませんが、それにより出演作品の販売や公開が自粛された例はありません。

日本でも大ヒットした海外人気ドラマ「フレンズ」に出演したマシュー・ペリー氏は薬物依存症に陥りましたが、撮影中2度もリハビリ施設に入寮しながらも出演は継続されました。

そして、マシュー・ペリー氏は見事に回復を果たし、のちに依存症者の支援を積極的に行い、その功績が認められてオバマ大統領から表彰もされました。

また同じく日本でも大人気となった海外ドラマ「フルハウス」に出演していたジョディ・スウィーティン氏は、覚せい剤の依存症となり苦しみましたが、「フルハウス」で共演したオルセン姉妹らの激励により、リハビリ施設に入寮し回復しています。

そしてこの「フルハウス」のリブート版「フラーハウス」の撮影中に、出演者の一人ジョン・ステイモス氏がひどいアルコール依存症になっていることを知ったジョディ・スウィーティン氏は、自分の経験を生かし「フラーハウス」の撮影セットの中で、アルコール依存症の自助グループ「AA」のミーティングを行い、断酒をサポートしました。こうしてジョン・ステイモス氏は現在も断酒を継続しており、自分の回復はジョディ・スウィーティン氏のお陰と発言しています。

日本では、これとは真逆に「罰すること」「懲らしめること」「辱めを与えること」で、薬物問題に効果があったかのような誤った考えがあるように思えます。

刑罰以外にも民間人による自粛や撤収、撮り直しといわれる実質的な制裁措置が常態化してしまえば、薬物問題は解決どころか弊害の方がますます大きくなっていきます。メディアの方々が、薬物依存の問題への理解を深め、現在の制裁措置を取り止めて頂けるよう強く要望するものです。

1.松竹株式会社(代表取締役会長 大谷 信義 様 代表取締役社長 迫本 淳一 様)は、映画「居眠り磐音」を、代役で撮り直すことなく、オリジナル作品を公開して下さい。

2.株式会社 セガゲームズ(代表取締役会長CEO里見 治紀 様 代表取締役社長COO 松原 健二 様)は、プレイステーション(PS)4用のゲームソフト「JUDGE EYES:死神の遺言」の販売自粛を解除して下さい。

3.株式会社ソニーミュージックエンターテイメント(代表取締役社長 水野 道訓 様)は、電気グルーヴの CD、映像商品の出荷停止、 CD、映像商品の店頭在庫回収、音源、映像のデジタル配信停止を解除して下さい。

4.株式会社TBS(会長 武田信二様、代表取締役社長 佐々木卓様)は、既に収録済みである「ゲンバビト」を放映して下さい。

5.日本放送協会(会長 上田 良一 様)は、
NHKオンデマンドの「大河ドラマ いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~ 第4~8回、第10回」
「連続テレビ小説 とと姉ちゃん(シリーズ全作)」「連続テレビ小説 とと姉ちゃん『もうひとつの物語“福助人形の秘密”』」
「連続テレビ小説 あまちゃん(シリーズ全作)」「大河ドラマ 龍馬伝(シリーズ全作)」
「土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』(シリーズ全作)」の配信を停止を解除して下さい。

以上です。

当ネットワークのHPからも確認して頂けます。
依存症の正しい報道を求めるネットワークHP

このような、いきすぎた私的な制裁行為が常態化しないよう、私たちは、今後も呼びかけて参ります。

このような措置は、誰のためにもなりません。
薬物問題は、刑罰やみせしめでは解決しなことはすでに世界の常識となっております。
国連やバチカンの取組について、記事も書いております。こちらもあわせてお読みください。

高知東生氏が自分を語る意義(Japan In depth)

日本の文化が守られ、薬物問題を抱えた当事者・家族に対する偏見が、これ以上増長されぬよう、メディアの皆様にご理解頂けることを願っております。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト

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田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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