社長と社外取締役との分かり合えないミゾ「経営には正解はない」

写真AC:編集部

先週金曜日(4月12日)は日弁連の社外取締役シンポに登壇させていただきました。著名な元経営者の方々や投資銀行の方の意見を拝聴し、私も勉強させていただきました。

12日は財務省や日本取締役会協会での講演の後だったので、私は比較的(?)おとなししておりました。ただ、事前打ち合わせの雑談の中で、元経営者の方の間で交わされた「なるほど」と思ったお話がございまして、本編では聴衆の皆様の前で披露されなかったので、ここでひとつだけご紹介させていただきます。

「経営には正解はない」

元経営者のおふたりのパネリストの方が、
「経営には正解はない」
「一生けん命に最適解を考えるが、最後は『エイ!ヤー!』という部分がどうしても残る」
といった共通の発言をされていました。

そういった視点から(自社の)社外取締役がどうみえたか….ということを尋ねますと
「専門家の方は、これが正解だ、と提案してくる。いや、そんなに簡単に正解がわかるんだったら苦労しませんよ、とボヤキたくなりました」
「自分と同じ経営者の社外取締役だと、ご自身の成功体験から『これが正解だ』とおっしゃる。しかし時代が変わったんですよ、そんな成功体験は今の時代には通用しませんよ、とボヤキたくなった」
とのこと。

なるほど、社長さんは社外取締役に対しては「貴重なご意見ありがとうございます。参考にさせていただきます」と紳士的におっしゃることが多いのですが、ホンネではこんなところなのかもしれませんね。

経営陣が少しでも社外取締役制度を理解するためには、社長が社外取締役を招く際、社外取締役にどのような面で活躍してほしいのか具体的なすり合わせをすべきと思いますし、そのためにも(現役の社長時代は無理でも)将来の社長候補の方には、どこかの会社の社外取締役に就任して、別の視点で経営に関与することもよい経験ではないか…と思いました。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。