韓国に「病気を与えて薬を与える(わざと害を及ぼして後で助ける)」という諺がある。
金正恩の“首席報道官”と言われる韓国の文在寅大統領は、11日のトランプ大統領との首脳会談を終え、米国から何のお土産も得られず空手(手ぶら)で帰る結果となった。
米国メディアは今回の会談を全然報道してない。
結果は①開城工業団地、金剛山観光の再開は時期尚早だ②韓国の米国製兵器の大量購入に感謝する③核廃棄以外のスモールディル交渉は決してない④対北制裁緩和はない→強化もあり得るが、北朝鮮の出方次第だ⑤トランプ大統領の訪韓招請は断る-と要約される。
米国は北朝鮮核・ミサイルと大量破壊兵器(WMD)について、最終的かつ完全、検証された非核化(FFVD)を貫く方針であるわけだ。元来、対北制裁は米議会と国連の決議に基づき、国際社会が連携して推進しており、米政府だけで止められない。トランプ氏は「追加制裁を止めたのがお土産だ」と言ったという。
文大統領が国内外で非難を浴びる理由は北核容認路線だけではない。人権弁護士出身にもかかわらず、74年間にわたり政敵を処刑し、10万人の政治犯を弾圧する長期独裁殺人政権を庇っているからだ。その文氏が語る民族和合は偽りであることは明らかだ。
会談にはもう一つの背景があるようだ。
米国を動かす2大勢力はアングロサクソン系プロテスタント白人(WASP)とユダヤ系である。
韓国企業に投資するユダヤ人投資グループがトランプ氏に圧力をかけて、文政権が進める財閥企業改革(中国並みの国営企業化)を停止させるよう強く要求し,トランプ氏が文氏を召喚したという。
韓国の10大財閥企業が積弊として“清算”されれば、米国の投資会社は巨額な損失を招くことになるのはもちろんだが、もう一つの懸念もある。
例えば、大韓航空は米ロッキード・マーティンとボーイング社の航空宇宙技術と航空機製作システムを持つメーカーだ。
米国の最先端技術が韓国経由で中国と北朝鮮に漏洩すれば、米国の安全保障に深刻なダメージを与える。
トランプ氏にとって、それは絶対許せない緊急事態であるはずだ。
米議会も文政権を中国と北朝鮮の「手先」と受け止めている。正恩氏と文政権が政治生命を延ばす近道は危険過ぎる冒険から抜け出すことしかない。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(4月14日)に掲載したコラムを筆者が加筆したものです。
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