ルノーは日産経営統合を急げ(有地氏への反論)

2019年04月25日 16:01

東京地裁がゴーンの保釈を認めたらしい。日本の司法に辛うじて最低限の良心が残っていたということで喜ばしい。

この日産問題について、私の東京大学法学部の同期で、ENA(フランス国立行政学院)の同窓生でもある元財務官僚の有地浩氏が、「マクロン大統領はまだ青い!ルノーが日産の強引な統合目論む」という論考を寄稿していたが、この件については、私は賛成できない。

逆に私は、マクロンが日本人のメンタリティを理解せずに、いたずらに時間を浪費し、日産の経営を悪化させているように思う。

官邸サイトより:編集部

マクロンもスナールもことを急ぐこと、日本人には遠回しでなく、ストレートに現実を突きつけることを勧めたい。なにしろ、日本人は「みんなで渡れば怖くない」ということで、集団全体が明らかに合理性のない期待をもって楽観的になって冷静な判断ができなくなる傾向があるのは、黒船来航のときでも、太平洋戦争でも明らかだ。バブル崩壊以来の感度の悪い対応をして蟻地獄に突っ込む国民性があるとか、日本の政治家や経済人が、曖昧なお世辞で逃げて迅速な対応を避けごまかすのも、マクロンは知らないのではないか。

そもそもこの問題の最初に、世耕大臣はルメール財務相から三社のアライアンスの維持をといわれ、賛同しておきながら、あれは現状の力関係の維持をいうのでない、日産に有利なものにする可能性を否定したものではないと言い出した。しかも、政府は関与しないといいながら早いうちから謀議に参加していたことも明らかになっている。

この時点で、日本人のあいまいな同意は拒否ないしサボタージュの意思表明であることを知り、トランプのように要求は明確に解釈の余地がないようにいい、サボタージュを許さないように雪隠詰めにする知恵をもつべきだった。

私が日本人であり、経済産業省のOBであるにもかかわらず、こんなことをなぜいうかといえば、終着点をあいまいにしたまま時間を浪費しているうちに、日産の経営がどんどん悪化しているからである。

焦点:日産、迫られる業績改善 経営統合反対へ交渉力の源泉に(ロイター)

ルノー公式サイト、日産FBより:編集部

そもそも日産の経営はゴーンと彼が集めたグローバル人材のおかげで成り立ってきた。年俸5億円の西川氏をはじめ日本人にそういう人材がいるのか?いるはずないのだ。ゴーンの懐刀のムニョスはさっさと見切りをつけて現代自動車のCOOにスカウトされたが、西川社長など無給でももらい手はあるまい。

いま日産の社員は西川社長を信じて、ゴーン叩きアンチ・ルノー路線に協力している。しかし、「日産のほぼ半数の株を持っているルノーが日産を強引にやれば、統合はできないことではないだろう」と有地氏もいっているように、ルノーがゴーンの後任をおくりこめば、無原則に西川社長に協力していた社員は粛正されるだろう。

そんなことは、冷静に考えれば分かるはずなのに、気がつかないのは、「みんなで渡れば怖くない」と思っているからだ。

そういうなかでは、ルノーは日産の社員に対して会社の将来はルノーの意向によって決まるし、そのときに、西川社長に追随してアンフェアな行動をした者はしかるべく処断されることを教える親切心くらいもったほうが良心的だ。

「(統合が)ルノーにとって良いことかどうかはまた別の問題だ。仮に日産がルノーに統合されれば、日産の優秀な技術者は日産からスピンアウトしてしまう可能性が高い」と有地氏は言うが、そういう技術をもった社員には厚遇を与えれば別にスピンアウトなどしない。

しかし、時間がたてばたつほど、状況は複雑化する。ルノー側が慎重なのは、社内事情の把握やしかるべきゴーンの後任の人選、ルノー側にたつ株主のより慎重な確保などに時間が必要だからかもしれないが、そのあいだに、西川社長のもとで企業価値はものすごいいスピードで毀損しているのだ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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