ニコン、旗艦機D5相当のミラーレス投入を明言:ソニーへの牽制か

2019年06月19日 06:00

2019年6月12日、ソニーは、フルサイズミラーレス一眼用の新たな交換レンズ2本の発売を発表した。

6月17日の日刊工業新聞は、「ニコン、ミラーレス最上位機種投入 『D5』相当」という記事で、

ニコンはミラーレスカメラの最上位機種を投入する。時期は非公表だが、馬立稔和社長が日刊工業新聞の取材に応じて明らかにした。デジタル一眼レフカメラの最上位機種「D5」に相当する機種となる見込み。

と伝えている。

デジタル一眼レフカメラ「D5」(ニコン公式サイトより:編集部)

ニコンとキヤノンは、長年に渡り、スポーツカメラマンから強い支持を受けてきたツートップである。フルサイズデジタル一眼市場に、ミラーレスという新たな武器を携えて殴り込んできたソニーを迎え撃つ立場にあることは共通しているものの、ニコンとキヤノンの姿勢の違いは結構大きい。

2018年8月24日のマイナビニュースは、「プロ向けモデルも準備中!? ニコンに聞くミラーレス戦略」という記事で、池上博敬 ニコン映像事業開発統括部長の見解を伝えている。

池上氏は「Z(ミラーレス)とD(一眼レフ)の両輪で、それぞれしっかりした製品を作っていくのがニコンの方針」と改めて強調。優れた製品を両シリーズで提供し続けていくことが開発陣のテーマだとして、一眼レフも継続して新製品の開発を続けていく意向を明確に示しました。

ニコンは、1959年発売の旗艦機「F」以来、一眼レフのマウントは「ニコンFマウント」を変えずに使い続けてきた。それ故、「半世紀前からニコン一筋」という、筋金入りの同社一眼レフ愛用者を多く抱えている。同社のフルサイズミラーレス一眼「Z」シリーズにも、純正マウントアダプターを介して、「ニコンFマウント」のレンズ資産を活用することができるのは確かだが、保守的で、一眼レフからミラーレス一眼への移行を拒む層が多い。

2017年2月13日、ニコンは「プレミアムコンパクトデジタルカメラ『DLシリーズ』発売中止のお知らせ」というプレスリリースを出している。ソニーRX100シリーズキヤノンPowerShot G一桁シリーズなどがしのぎを削る、1インチセンサーを採用した高級コンパクトデジカメ市場には参入しないことを発表した。この市場には、プレーヤーが多く、一眼カメラ市場よりも収益性が低い。ニコンが得意とするのは、あくまでもハイエンドのデジタル一眼レフなので、この経営判断は正解だと思う。

1インチセンサーを採用した高級コンパクトデジカメ市場からの撤退により確保した経営資源を活用すれば、池上氏の言う、「ZとDの両輪で、それぞれしっかりした製品を作っていく」ことの可能性が高まる。

ニコンのデジタル一眼レフの旗艦機「D4」は、ロンドン五輪に間に合うよう、2012年3月に発売されている。次の旗艦機「D4S」は、2年後の2014年3月に発売された。そして、現行の旗艦機「D5」は、2016年4月に発売されている。「D4」から「D5」にかけて、ニコンはきっちりと2年間隔で旗艦機をアップデートしてきたが、2018年には旗艦機の発表はなく、ニコンが「フルサイズミラーレス一眼市場対策」に追われている姿を垣間見ることができる。

2018年には、ニコン初のフルサイズミラーレス一眼「Z6」「Z7」の市場投入を行ったので、旗艦機の刷新どころではなかったのだろう。「Z6」「Z7」ともに、アッパーミドルクラスに属する。旗艦機ほどの堅牢性や耐久性は持たないものの、ハイアマチュアのニーズに応えており、スポーツや報道以外の分野であれば、プロユースにも十分に対応できる。

実現可能かどうかは別として、ニコンとしては、来年春頃までに、デジタル一眼レフの旗艦機の刷新と、同社初のフルサイズミラーレス一眼の旗艦機(仮想敵はソニー「α9」)の発売を目論んでいるものと思われる。

キヤノンは、同社初のフルサイズミラーレス一眼「EOS R」を2018年10月に発売し、2019年3月には「EOS RP」を発売している。前者は、ミドルクラス、後者はローワーミドルクラスに属している。キヤノンが、ニコンほどの気合いを入れたミラーレス一眼の投入を避けているのは明白だ。

情勢を振り返り、私なりに現時点で2020年の東京五輪前の各社の状況を予測すると、以下のようになる。

  • ニコン:デジタル一眼レフとミラーレス一眼の両方に旗艦機を発売
  • キヤノン:デジタル一眼レフの旗艦機を刷新するが、ミラーレス一眼の旗艦機投入は2022年以降
  • ソニー:デジタル一眼レフの旗艦機「α9」のソフトウェアアップデートを継続して行い、完成度を高める
  • パナソニック:ミラーレス一眼の旗艦機投入は間に合わず、自社の影響下にあるカメラマンのみが五輪会場で限定的に使用することを表明

ソニーは、先日、仏サルト・サーキットで開催された「ル・マン24時間レース」会場に、プロサポートの拠点を設置した。このレースは、レーシングカーがサーキットの周回数を競うものなので、被写体を撮影する機会は、五輪より多いと言えるが、全く同じ写真を撮る機会が複数回あるわけではない。このような「戦場」でソニーが経験値を高めてゆくのは、ソニーのミラーレス一眼に乗り換えたカメラマンにとって有り難い。

今回、ニコンは、ミラーレス一眼にも旗艦機を投入すると明言することで、ソニーへの乗り換えを検討しているカメラマンの動きを牽制しているように感じられる。こうなると、しばらく沈黙を続けているキヤノンの動向が気になる。私の予想通り、2020年の東京五輪にミラーレス一眼の旗艦機の投入は見送るのか、市場を驚かせる何かを用意しているのか、引き続き動向を注視していきたい。

長井 利尚(ながい としひさ)写真家
1976年群馬県高崎市生まれ。法政大学卒業後、民間企業で取締役を務める。1987年から本格的に鉄道写真撮影を開始。以後、「鉄道ダイヤ情報」「Rail Magazine」などの鉄道誌に作品が掲載される。TN Photo Office

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