6月16日は行政事業レビュー公開プロセス・厚生労働省の後半戦。四つの事業について議論した。
介護分野は人材不足が顕著で、その解消のためには、介護労働者が職場で抱える悩み・不安・不満などに対応する雇用管理体制を充実させなければならない。これに関して二つの事業が実施されている。第一は介護事業所に対しコンサルティングを行い雇用管理の改善を図る「雇用管理改善実践事業」。第二は雇用管理に責任を有する者に講習する「雇用管理責任者講習等委託事業」。
「実践事業」は毎年10000の介護事業所に働きかけ、そのうち3000事業所にコンサルティングを提供し、そのうち重点支援事業所940に対して社会保険労務士等専門家が援助する事業である。2018年度には840事業所が実際に重点支援を受けた。今までにコンサルティングを受けた事業所の94.2%が雇用管理責任者を選任するなど雇用管理制度を導入し、3か月経過後の従業員の定着率が改善している事業所の割合は82.9%と成果目標(アウトカム)を達成している。
これに対して「講習事業」は受講者数が計画を下回っている。目標は12000名だったが、実際の受講者数は16年度12468名、17年度はたった4888名、18年度もわずか5472名。16年度と17・18年度は受託者が異なり、17・18年度の受託者が期待に反していた。この受託者は入札額だけで選定され、能力等は評価対象ではなかったそうだ。
請負は完成義務を負う契約だが委託は違う。しかし、受託者には善良な管理者の注意をもって指定業務を処理する責任が伴うから、厚生労働省はそれを問うべきだった。17年度の実績が低いとわかったのに、18年度も契約したのはおかしな話だ。厚生労働省は19年度から仕様書の記述を強化するなど対応したと説明したが、遅すぎる。
厚生労働省の統計では介護事業所の総数は17年に133738である。「雇用管理責任者講習等委託事業」は2011年に開始され、当初から「講習事業」は実施されてきた。もはや一巡したはずなのに、雇用管理責任者を選任している事業所の割合は半数以下である。「講習事業」は成果を生んで来なかった。
規模が小さい事業所や創業からの期間が短い事業所の方が離職率は高く、雇用管理責任者の選任割合や講習の受講経験も低い傾向にあるそうだ。それならば「実践事業」も「講習事業」も小規模事業所や新規事業所への働きかけを中心として設計しなければならない。このような重点化の発想がない。「実践事業」が940事業所を目標としているのは単純に47都道府県×20だからだそうだ。都道府県によって介護事業所の数も規模も異なるのに、ここにも重点化の発想は欠ける。
3年以内の離職を解決することが喫緊の課題だそうだが、「実践事業」は3か月後の改善だけしか評価していない。「講習事業」に至っては採用と定着への効果が評価されていない。事業成果をきちんと計測して評価しなければ予算の無駄はなくならない。
僕は抜本的改善を求めたが、公開プロセスの結論は事業内容の一部改善となった。
山田 肇