南西諸島で使えないAAV7を入れた陸幕の見識

2019年06月22日 11:30

さて先日、軍事見本市、MASTジャパンに行ってきました。
前回も初回よりもしょぼかったのですが、今回は更にスペースが約半分に縮小されておりました。
余り見るべきものがなかったというのが正直な感想です。次もやるんでしょうかね?

さて、防衛装備庁のブースでは三菱重工がオウンベンチャーで始めて、いまは装備庁の開発予算がついたMAV(Mitsubishi Amphibious Vehicle)で面白い展示がありました。

これの開発が必要な理由にAAV7(編集部注:Assault Amphibious Vehicle,personnel.model7:水陸両用強襲輸送車7型)がサンゴ礁を超えられない、対してMAVはウォータージェットのアシストでサンゴ礁を超えられる、というのが上げられておりました。

あーあ、言っちゃったよ。という感じです。
AAV7がサンゴ礁を越えられないのは周知の事実ですが、それを理由に新型の水陸両用装甲車を開発する、というのは無責任じゃないでしょうか。

そもそもAAV7は南西諸島で島嶼防衛を念頭に調達されました。
ぼくは当初からサンゴ礁や護岸工事された海岸を登れないAAV7は不向きであると申し上げてきました。
であればLSTなどとバイキングのような踏破力の高い水陸両用装甲車、あるいは空輸が可能な装甲車といった選択も真剣に検討すべきと申し上げてきました。

ところが防衛省はまともにトライアルもやらずにAAV7を導入しました。
ビーチでしか揚陸できないAAV7が本当に「島嶼防衛」に必要だったのでしょうか。

使えるのは宮古島や沖縄本島などでしょう。

本来島嶼防衛は南西諸島の無人島など離島での紛争に対処することを想定していりました。
ところがいつの間にか、「沖縄県防衛」の様相を呈してきました。

つまり占領され、多くの民間人を人質に取られた宮古島や沖縄本島奪回の逆上陸を考えているとしか思えません。不思議なことに普段、エキセントリックなほどの基地問題の取り上げ方をする沖縄のメディアもこのAAV7の件を取り上げようとはしません。

AAV7は評価用としてまず平成25年度予算でAPC(装甲兵員輸送車)型4輌が要求されている。これらは米海兵隊の中古をリファブリッシュしたもので、来年度には納入される予定だ。

陸上幕僚監部は平成26年度予算ではさらにAAV7の指揮通信型、回収車型(戦場で破損したりした装甲車を回収するための車両)各1輌を要求している。こちらは新造であり、納入されるのは2年後、平成28年度の予定だ。

平成25年4月15日の予算委員会第一分科会では、日本維新の会の中丸啓議員による「25年度に調達したAAV7輌の納入はいつになるか」という質問に対して、防衛省側の徳地秀士防衛政策局長は以下のように答弁している。

「27年度までに取得をいたしまして、それから1、2年かけてこれにつきまして性能を確認する、あるいは運用の検証を行う。これによりまして、水陸両用車を導入すべきかどうか、それから実際にどの機種にするかということについて検討をするということになっております」

仮に徳地防衛政策局長の答弁が正しければ、評価作業が完了するのは平成28~29年になる。当然AAV7が装備として予算が要求されるのは、早くても平成29年度ということになる。

ところが先述のように筆者が入手した陸自の内部情報によれば、AAV7の評価は2014年5月から行われ、12月には水陸両用装甲車の採用車種を決定するとある。

つまり、来年度予算で発注する予定の指揮通信型や回収型の納入を待たずに、APC型のみで、わずか何カ月の形だけの評価を行い、採用を決定することになる。

来年度予算で要求されている指揮通信型と回収型は採用を決定するための評価試験には使用されない。つまり概算要求は虚偽の理由を挙げて、指揮通信型と回収型を要求することになる。この程度の簡単な評価であればわざわざサンプルを購入するまでもなく、米海兵隊からリースするなり、共同演習を行えば済む話だ。

陸自の水陸両用装甲車、AAV7導入は裏口入学だ(論座:拙稿)

25(2013)年度予算で、評価用としてまずAPC(装甲兵員輸送車)型4輌(米海兵隊の中古)が要求された。ついで翌年度、指揮通信型、回収車型(戦場で破損したりした装甲車を回収するための車両)各1輌が要求されている。こちらは新造であり、納入予定は平成28(2016)年度だ。常識的に考えれば、陸幕はAPC型と指揮通信型、回収型を合わせて試験的に運用してみて採用するか、否かを決定すると考えるだろう。

2013年4月15日の国会の予算委員会第一分科会では、防衛省の徳地秀士防衛政策局長は以下のように答弁している。

「平成27(2015)年度までに取得をいたしまして、それから1、2年かけてこれにつきまして性能を確認する、あるいは運用の検証を行う。これによりまして、水陸両用車を導入すべきかどうか、それから実際にどの機種にするかということについて検討をするということになっております」

そうであれば評価作業が完了するのは2016~17年になる。当然AAV7が装備として予算が要求されるのは、早くても2017年度ということになる。

ところが筆者が2013年の陸幕長会見で「陸幕は予定を早めて本年末までに結論を出すのではないか」と質問したところ、それを認めた。

つまり評価用に発注された指揮通信型、回収車型は、実際には十分に検証されているわけではないのだ。逆に言えば、使わないと分かっていて陸幕は予算を要求したのだ。

APC型は4輛が2014年2月に納入されたが、うち2輛は日本の道交法、船舶法への適合及び自衛隊仕様にするため改修中であり、年末まで使用できない。残りの2輛中1輛が富士学校、もう1輛が土浦の武器学校で試験されている。つまり6輛中2輛が試験されているに過ぎない。しかも実際に使用が想定されている南西諸島での試験が実施される様子はない。

(略)

筆者は陸幕長に4年かかる評価作業がなぜわずか8カ月に短縮されたのか、安全保障上の環境の変化によってプロセスを縮めたのか、と陸幕長に質問した。後日陸幕からの返答は「安全保障環境の急激な変化はない(これは小野寺大臣も同様に認めた)、米国側との調整の結果だ」と回答があった。しかし概算要求は事実上、購入を前提としており、そうなると評価期間はわずか4カ月である。更に半分に短縮されていることになる。

米国側との調整、つまり米国から注文があれば、本来必要とされる評価作業を大きく端折る、ということなのである。つまり、評価作業はアリバイ工作程度に行っているに過ぎない、ということだ。これではまるで植民地軍ある。とても独立国家の「軍隊」の「参謀本部」の見解とは思えない。

尖閣有事に水陸両用車「AAV7」は役に立たない(東洋経済オンライン2014年9月3日:拙稿)

陸幕はAAV7のトライアルの結果によっては採用しないと明言していましたが、トライアルはほとんどおこなれず、まして南西諸島における試験は一度たりとも行われませんでした。

世間ではこういうのを無責任といいます。

そもそも米国のEFVのような水上を高速で移動できる水陸両用車輌は必要なのでしょうか。
いまや携行火器や精密誘導弾、ドローンなどの普及によって強襲上陸は自殺行為となっています。
米海兵隊ですらやっていません。

MAVはそういう環境下で運用する代物でしょう。
ですがスピードが30キロ程度になってもオカから精密誘導兵器で狙われた場合の生存性は対して高くないでしょう。

またこの手の車輌は水上を高速で移動するための巨大なエンジンやウォータージェットを搭載し、下車歩兵も多く搭載するために、車体容積が大きい。これはAAV7も同様です。
このため陸上においては敵の格好の的になります。

ですから英海兵隊などはむしろヘリボーン作戦に主力をおいているわけです。
先述のように揚陸艇と装甲車を組み合わせる、あるいはスウェーデンのように、装甲化された高速ボートを使用する、あるいはこれらの手段をミックスすることも必要でしょう。

陸幕が、自分たちがどのような戦場を想定していたのか、疑問です
何しろぼくが報道しなければ国内用の個人衛生キットだって止血帯、包帯各1個のままだったでしょう。
そのくらい平和ボケの組織です。

当然ながら諸外国の水陸両用部隊の調査もろくにしていない。
このため水陸機動団は米海兵隊の劣化コピーみたいな部隊になりつつあります。

そして当面52輌のAAV7を運用するための輸送艦もありません。
あまりにも杜撰です。

杜撰な上に、アメリカ様に言われましたと、自分たちのトライアルをやめてしまう「植民地軍」が、本当に真剣に装備を開発、調達するのでしょうか。現状を見る限り極めて疑わしいとしか思えません。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自はファミリー化された「共通戦術装甲車系列」及び、「次期装輪装甲車系列」の二種類の装甲車ファミリーを導入する。「共通戦術装甲車系列」はICV、偵察車、自走迫撃砲、「次期装輪装甲車系列」はAPC、装甲野戦救急車など予定されているとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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