ジャニー喜多川さん追悼:ジャニーさんの静かなる革命

2019年07月11日 06:00

取り立てて芸能通というわけでもなく、まして男なのでジャニーズのアイドルに格段の思い入れがあるわけでもない。そんな私でさえジャニー喜多川さんの訃報にはある時代が終わったことに対する感慨が湧いてくる。それほどに一時代を築いた方であったということなのだろう。

日本のアイドル界を開拓してきたジャニーズ事務所のタレントたち(公式サイトより:編集部)

それぞれが個性的にしてまったくかぶらない!グループ名の天才的ネーミングセンス

職業柄も、私がジャニーさんの仕事で日頃から一番すごいなと感じていたのは、そのネーミングセンスである。

ジャニーさんはデビューさせるグループの名前を自分で決めていたとのことだが、SMAP、KinKiKids、嵐、Sexy Zone、関ジャニ∞(エイト)、V6、KAT-TUN、光GENJI。恐ろしいほどそれぞれがユニークな上に、どれ一つと言って印象が重ならない。

とても広告代理店のサラリーマンコピーライターからは出てきそうにない、ある意味ぶっ飛んだ名前なのだが、いざそのグループが活動を始めるとなぜかしっくりとくる。まさにカリスマ的なセンスとしか言いようがないのだが、グループのメンバーを選ぶ際にキャラクターが「かぶらない」絶妙なセンスで、それぞれの持ち味をお互いに引き立てあうマッチングを含めて、やはり一人一人の個性、グループを自らの子供と思う愛情がなせる業としか思えない。

まさに、SMAPの大ヒット曲「世界に一つだけの花」ではないが、伊達でもカッコつけでもなく筋金入りに、個性というものを尊重する精神がそこから伝わってくるのである。

あえてイケメンだけで揃えない審美眼

もう一つ良いのが、その個性的なジャニーズタレントの面々が、決して通り一遍の「イケメン」ばかりではないことだ。もちろん世間標準よりはるかにカッコ良いジャニーズメンバーであることは当たり前だが、「この子の魅力がわかるかな?」という謎かけをされているような人もデビューさせる。そして実際にファンは、そのメンバーの魅力を発見し、成長していく様を応援する。

そもそも、美人・かわいいをもってすべて良しとする男性の単純な審美眼から、女性も同様「見た目」で男を評価しているのだろうと考える節があるが、女性の多くはむしろそんな面の皮一枚でだまされはしない。男よりよっぽど多角的かつ厳密なチェックを異性に対して行っているだろう。そんな、女性特有の習性をも満足させる洞察眼がジャニーさんにはあったのだと思う。

ジャニーさんと女性ファンが粛々と実現した革命

それにしても、男性のアイドルである。今となっては不思議なぐらいだが、世の中に受け入れられるまでに、きっと人知れぬ苦労があったはずだ。ジャニーさんが生まれたのは、昭和6年(1931年)。男ダテらに振り付けで踊るなどということに抵抗感がある男性がほとんどの時代ではなかっただろうか。

実際にジャニーズ事務所創業期のタレント郷ひろみさんの「ダディ」や妻だった二谷友里恵さんが書いた「盾」を読むと、日本を代表するアイドルタレントである郷ひろみさんをして、当時の妻二谷さんから仕事に対する理解や本当の尊敬を得ることができなかった蹉跌に苦しむ姿があまりにも切なかった。

そう、ジャニーズのアイドルたちはまさに女性たちが応援し、守り、育てたのだ。封建的な価値観では受け入れられないだろう、男が歌い踊り女が応援する。もちろん悪いことなど何もない。アイドルが男だけのものだとか、まったく冗談ではない。

だが、そこに至る道では、「静かなる戦い」があったのではないだろうか。まさに、男尊女卑や封建主義的な頑迷さを、ジャニー喜多川さんそしてジャニーズを応援する幅広い年齢層の女性ファンは粛々と葬り勝利したのである。

戦争体験からの、静かなる信念と気骨

今回の訃報に際し、ジャニーさんが自らの戦争体験から、いかに「戦争」を嫌い「平和」を願っていたか知った。

ジャニー氏をよく知る別のタレントが明かす。

「ジャニーさんから怒鳴られたり、何かを命令された記憶はほとんどない。『戦争で人に使われる身だったから、自分が人を使うのは好きじゃないんだよね』と言って、ちょっとしたことでも自分で率先して動くし、偉ぶったところがまったくない。(出典:文春オンライン「ジャニー喜多川氏逝く “生涯プロデューサー”が生前に話したSMAPの思い出「歌は下手だったけど……」」)

あの世代にしてこの生き様。やはりエンターテインメントや芸能は、世の中を明るく平和にし、個性や自由や平等を伝えるものであって欲しい。その死に際し、あらためて、ジャニー喜多川さんが目指し実現した世の中。その静かなる信念と気骨を知る思いがした。

秋月 涼佑(あきづき りょうすけ)
大手広告代理店で外資系クライアント等を担当。現在、独立してブランドプロデューサーとして活動中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。秋月涼佑のオリジナルサイトで、衝撃の書「ホモデウスを読む」企画、集中連載中。
秋月涼佑の「たんさんタワー」
Twitter@ryosukeakizuki

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
秋月 涼佑
ブランドプロデューサー

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑