放送法審議、衆議院での議論

2019年07月11日 11:30

NHKの常時同時ネット配信に道を開く放送法改正を巡り、衆議院総務委員会に参考人として招致されたぼくは、与野党の議員たちから全方位に質問をいただきました。
想定していたよりも芯を突いた質問で、ぐっしょり汗をかきました。
思い出しつつメモします。
正確には官報の議事録をご覧いただきたい。


○なぜ常時同時配信か。
・ネットがインフラとなる中、追加コストなくいつでもどこでも受信は知る権利の強化。
・英仏独韓+米4大NWで常時同時配信される中、なぜ日本は常時配信を認めないかが論点。
・ネットをインフラと見るかどうかの政策判断。12年前にはインフラになっていたと考える。

○民業圧迫では。
・民放の懸念は理解する。が、2.5%に国民的な根拠があるとは思えない。
・同時配信に留まらず、ITの駆使、データやAIの利用等に国民利便の向上のためどれだけ投資が必要か、新しいメディア環境を民放とも連携していかに構築していくかの視点が重要。
・ITを含む世界的なメディア環境の変化、外国事業者による日本展開の中、どのようなメディア基盤や事業環境を用意すべきかという視点が重要。
・NHKの投資や業務コストはそうした観点を踏まえ設定していくのがよい

写真AC:編集部

○NHKの肥大化いかん。
・全体業務や受信料の見直しなく肥大化することは国民からも理解は得られまい。
・あまねく良い放送+先端開拓という公共メディアの役割は十分果たしてほしい。
・業務拡大は、全体業務+受信料の見直し、情報開示・ガバナンス改革のセットで進めてほしい。

○受信料のあり方は。
・当面、非契約者にメッセージ画面で対応するのは妥当。
・今後のTV離れやネット普及など動向を見据え、受信料の仕組みを見直す必要が生じる。
・英独のようにTVを見る見ないに関わらず料金や負担金を聴取する方法も参考。
・税ではないが税に近い性格。国民全体の理解が大前提。

○ネット受信料を導入すべきか。
・通信・放送融合の中、放送とネットの料金もいかに融合させるかという方向ではないか。
・NHKは公共放送から公共メディアへと言うが、ネットを含む公共メディアを国民のどのような負担で支えるのか、同時配信の推移もみながら本格的な検討を始めるべき。

○ネットの悪影響は。
・スマホ登場から10年、ネットはもはやインフラ。
・フェイクニュースなどが増える一方、SNSなどで、これまで得られなかったコミュニケーションやコミュニティが生まれた。民主主義が強化された面もある。
・この文化をより豊かにするためには、情報を使いこなす教育が重要。

○通信・放送融合のコンテンツ規制は。
・日本の放送番組は、各局の番組審議会やBPOの自律に委ねる体制。
・それは有効に機能し、NHKと民放の二元体制と豊かな放送文化を保っている。
・ネットのコンテンツは第3元をなすもの。日本は自律・自由で大丈夫だが、国民の情報リテラシーが重要。

○NHKのガバナンス強化策は。
・平成19年改正でNHKは経営委員会を強化した。まずはその機能を十分に発揮されたし。
・その上で、透明性・情報公開を高め、国民によるチェック機構を働かせるべし。
・NHK・民放・ネットを含む多様なメディア環境を整備し、言論の多様性を確保することが大事。

○NHKの地域制御いかん。
・NHKが自ら地域制限を行うことを認めてもよいが、民放ローカル局を含め、地方の番組をいかに全国・海外発信するかが重要な論点となる。
・現に関西の独立U局がネット同時配信の実験を行っており、こうした動きを放送全体でどう捉えるかも問われよう。

○NHKを廃止してもよいのでは。
・欧州は公共放送から商業放送、米国は商から公へと展開。だが日本は特殊な二元体制を構築。
・日本のテレビは豊かな文化を構築し、二元体制は機能している。この柱は変えなくて良い。
・三元をなすネットをどう豊かにするか。これを使うユーザ教育をどうするかが論点。

○共通プラットフォームの考え方は。
・配信基盤、アプリ、権利処理など共通課題に対応するものとしての整備を期待。
・IPクラウド、データ分析など次世代のメディア対策も期待。
・放送業界だけでなく通信・IT業界とも連携すればよい。

○著作権の課題は。
・著作権法上、レコードなど著作物を放送する場合は使用料を払えば自由に使えるが、通信は個別に許諾が必要。
・その処理を円滑化するにはネット配信に関する制度改正を行うことも考えられるが、まずはネット・放送局と権利者の民民の調整が重要―NHKによる先導を期待。

○NHK同時配信の民放への影響は。
・民放は自由な経営判断で展開すべし。データやAIを活かしたより豊かなコンテンツを開拓し得る環境。
・日テレがhuluを買収し、フジがネットフリックスにコンテンツを提供し、テレ朝がCAとAbemaTVを展開するなど、横並びでないさまざまな戦略が見られる。

○ローカル局への影響は、対策は
・通信放送融合論27年という時間の中でどの程度準備してきたかが問われる。
・10年でCDの売上は半減、書店は3割減、それに比べてよくもっている。
・これから大波が来る。業界再編や集約もあろう。いよいよ経営力が問われる。
・これに対応するための規制緩和(マス排、県域免許など)も考えられるが、それも業界としての意思が第一。政府が先走ってコンサルする話ではなかろう。
・地域番組の充実、イベントの強化、ネットユーザの取り込みなど各局がそれぞれの戦略を打ち出し始めた。その動きに期待。

○NHKコンテンツの海外展開いかん。
・NHKの番組は国民資産。最大限に活用すべき。
・放送コンテンツの海外展開に政府も力を入れていて、規模も2010年から5年で4.4倍に拡大。
・まだまだ潜在力はある。民放とも連携して力を入れてほしい。

○衛星周波数の有効活用策は。
・より豊かな映像文化を国民が享受できるよう放送への参入を促進したいが、周波数の逼迫が最大の課題。衛星の波は中でも貴重な資源。
・圧縮技術が進化し、少ない帯域で放送を行うことを可能とし、新規参入を促すサービス向上・多様化の措置。有意義。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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