都知事選2020:橋下でなく八代なら小池に勝てる3つの理由

2019年08月01日 06:05

小池都知事の任期満了(2019年7月30日)まで1年を切り、その節目に合わせてここ数日、小池氏のインタビューや、来年の都知事選に向けた動きなどが報道されている。アゴラでも昨日のVlogで、3つの政局の見どころを語ってみた(4分のショート動画なのでお時間あればぜひご覧ください)。

Vlogで挙げた2つ目のポイントの自民党内の動きだが、読売新聞が昨日の朝刊で書いたように、党本部で二階幹事長が小池氏に近い一方で、都連は対抗馬を擁立する方針を堅持している。また、立憲民主も人選に着手したという新しい話も出ているが、台頭著しいれいわ新選組がどのような動きをするかも含め、流動的な要素はやや増えている。

小池氏(官邸サイト)

かつて拙著『蓮舫 VS 小池百合子、どうしてこんなに差がついた』(ワニブックス)で都知事選を徹底分析した筆者としては、日本一のテレビ選挙である都知事選で新たなドラマが待ち受けるのか、それとも小池氏があっさり無風で再選を決めるのか非常に興味深いところだが、前述の読売記事によると、驚いたことに、自民党都連で浮上している対抗馬の名前の中に、橋下徹氏も含まれているという。

別に筆者は維新の支持者ではないが、小池氏がこのまま再選するよりも橋下氏の方がその行政経験、リーダーシップ、問題解決能力において適任であるとは思う。ただ、現在は民間人とはいえ、自民都連が、わざわざ維新の「影の党首」的な存在を選ぶとは到底思えない。

もし本当に擁立するとなれば、安倍首相が、都連幹部に多い側近議員を通じて、憲法改正に向けた政界再編に向けた仕掛けをするという、全く新しいシナリオが動き始めたことになるが、そんなビジョナリーがストーリーはいまの永田町にあるようには思えない。

昨年末ごろだったか、自民党関係者に聞いた話では、官邸首脳が極秘に都知事選候補の人選に向けて着手していることだったが、ここにきて読売に出てきた名前が橋下氏とか、丸川珠代氏とか、果ては鈴木大地スポーツ庁長官というのは、それだけ都連の人選が相当苦しいか、「当て馬」が他にいるかのどちらかだろう(前者の可能性が高いと思うが)。

橋下氏は大阪知事のイメージが強すぎる!?

橋下氏(Wikipedia)

それに何より、筆者は橋下氏では小池氏に勝てないと思う。確かに、これが新人同士の戦いであったり、あるいは世代交代を印象付けられるような、構図で現職に挑めるのであれば、橋下氏に有利だが、後述するような理由で簡単な戦いにはならないと展望する。

日本一のテレビ選挙で知名度は要求されるが、橋下氏はこれをクリアしている。しかし、都知事選の歴史を振り返ると、5人の他県の知事経験者が現職に挑んだが、1963年に阪本勝氏(元兵庫県知事)、2007年に浅野史郎氏(元宮城県知事)、2011年に東国原英夫氏(元宮崎県知事)、2012年に松沢成文氏(元神奈川県知事)、2016年の増田寛也氏(元岩手県知事)のいずれも全て返り討ちにされている。

また、それら他県知事経験者への違和感を敷衍すると、橋下氏の「大阪人」としての存在感が都民に支持されるかといえば、やはり微妙なところだ。これは、ちょっとしたお遊びの世論調査ではあるが、しらべぇが全国の男女に「東京 vs 大阪」どちらが好きかを尋ねた調査では、7割が東京と回答。その多くは首都圏在住者だったという。

そして、これは「定性面」の話しではあるが、橋下氏の都知事選や国政での東京都内からの出馬説はたまに政界で取りざたされるが、選挙業界の練達した人たちと意見を交わしていると、やはり大阪カルチャーを好まない都民気質がネックだとの指摘は多い。2016年参院選でも、党名が「おおさか維新」時代で田中康夫氏を勝たせられなかった。

女性票を割らないと小池知事には勝てない

もちろん国政政党をゼロから作り上げ、一時代を築いた橋下氏の突破力は、浅野氏らよりも圧倒的だが、今度は女性票の壁が立ちはだかる。参院選の世論調査に報道各社が、お金を使ったためか、現時点の小池氏の支持調査報道が見当たらないが、朝日新聞が昨年7月末、任期折り返し時点で都民に聞いたところでは、全体の支持率が49%と半分を割り込んだものの、男女別では女性が56%、男性は42%と、女性の支持が根強かった(朝日新聞デジタル)。

一大ブームだった小池氏の都知事選(Facebookより)

その後、小池都政は、市場移転問題ほどのスケールでメディアで報じられるような明確な失政がない(≒都民にしっかり伝わっていない)。現時点で世論を調査をかければ、支持率が1年前と横ばい、あるいはやや回復している可能性すらある。

前回の都知事選の投票率を見ても、男性が58.19%で、女性は61.22%。その前の選挙は男性の方が高かったことを考えると、小池氏が「自民党都連のおっさん古狸と闘う」ストーリーは支持されたといえる。だから、橋下氏であれ、誰であれ、小池氏に打ち勝つには女性票をある程度「横取り」する必要がある。

その点、橋下氏は女性の支持が弱い。その印象を決定づけたのは、2013年5月に「慰安婦制度は必要だった」などと発言し、在日米軍に風俗業の活用も提案して物議を醸したことだった。のちに一部の発言を撤回したが、結果的に、維新はその直後の都議選で惨敗し、東京への勢力拡大に失敗した。あれから6年が経って、都民の記憶から薄らいでいるかもしれないが、小池氏が「男女対決」の構図に持ち込むと、発言を蒸し返し、女性票に影響するような気もする。

さて、ここまで書いて整理すると、小池氏に勝つための条件として、①テレビ的な知名度 に加え、②東京都民に支持されるような都会的なイメージ③小池氏の支持基盤である女性票に浸透—を挙げてきた。

その全てを兼ね備えた著名人、しかも、小池氏のパフォーマンスで年収もカットしたせいで1500万にも満たず、それでいて公人としてあれこれうるさく言われるような都知事など手を挙げる人はいないではないかとさえ思うが、ひとまず①〜③の条件面だけ符合し、自民党とも相性が良さそうな人が1人だけいた。情報番組のコメンテイターでおなじみの国際弁護士、八代英輝氏だ。

TBS「ひるおび!」でコメントする八代氏(7月31日放送より)

橋下氏の「弱み」が「強み」になりそうな八代氏

ここから先は山本太郎氏が都知事選に出ない場合を前提にして書く。

さて、八代氏の①テレビ的知名度は申し分ない。2000年代半ばからテレビに出演し始め、弁護士の文化人タレントとしては、政界入りした橋下氏の後釜的な存在となり、現在レギュラー出演中の「ひるおび!」では、司会の恵俊彰氏の夏休み時の代役を務めるほどの手堅い地位を築いている。

そして②の都民の支持される要素は、板橋区出身と生粋の東京人である点は目を引く。洗練された都会的なイメージ、日米の弁護士資格を持つ国際派の経歴からして東京の国際都市の顔にふさわしいと都民が好感を抱きやすく、小池氏に負けない。特にここは都心勤務のサラリーマンなどから「土着」的なイメージを持たれている自民都連のマイナス面を払拭する上でも大きい。

③の女性票は①の延長で、お昼の情報番組を中心に露出し、その甘いマスクは選挙戦のカギを握る主婦層、プラス高齢層には十分浸透している。

①〜③に加えて、今時のテレビ型著名人にしては、自民党支持層を中心にネット民の評判がいい点も見逃せない(左派からは逆に不評だが)。ツイッターを検索すれば、韓国の反日政策や、池袋の母子死亡事故の捜査が進展しないことにもズバッとした正論を言っている様子が、好意的に受け止められているのがわかる。

肝心の政治家としての適性やポテンシャルだが、裁判官出身というところでバランス感覚や実務経験は見込める。テレビに映らないところでの横顔や評判の実相については、さらに検証は必要だろうが、いずれにせよ、まず選挙は勝たねば新しい道は拓かれない。

ひとまずマーケティング観点で、「勝てる」候補者像をどう考えていくか、N国風に言うなら、“小池都政をぶっ壊したい”人たちの多少の参考になれば幸いだ。八代さん、勝手に推しメンにしてしまって、ごめんなさい。もしかしたらすでに誘われて断り続けているかもしれませんが、期待してます。

(追記12:20)川松都議のご指摘で2012年知事選の松沢成文氏出馬を追記しました。ありがとうございました。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

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