「EU新著作権指令の意義」メモ

ジュリスト6月号の鼎談「EU新著作権指令の意義」by東洋大学生貝直人さん、京都大学曽我部真裕さん、弁護士中川隆太郎さん。
インターネット上の著作権強化を掲げるEU指令について、得にプラットフォーム政策、リンク税、フィルタリング条項に関し議論しています。
重要なので引用メモ。


リンク税と呼ばれるプレス隣接権は、新聞社や報道機関にオンライン利用に特化した著作隣接権を付与するもの。
曽我部さんは「プラットフォーム事業者にいってしまっている広告収入を、一定程度、報道機関の側に取り戻すというような仕掛けは絶対に必要」と指摘します。

同時に「Googleは以前からデジタルニュースイノベーション基金というのをやっていまして、基金を積んで、いろいろな報道のプロジェクトに資金を提供するという形で支えている」と指摘。
言論やコンテンツを支える仕組みは、著作権のような制度か、企業やビジネスの仕組みか。重要な論点。

生貝さん「アメリカでも(略)インターネット上の情報流通はできるだけ自由にして、補償金のような形で対価を還元する仕組みに大きくシフトする提案がなされています」。

日本もそろそろ(ようやく)ネット配信の権利を補償金に移行する仕組みの議論が始まりそうです。

生貝さん「真のフェイクニュース対策は、質の低い、偽の情報を消去していくというよりは、質の高い、正にプレス出版物などの信頼できる情報が、インターネット上で健全に豊富に流通できる環境をどのように作るかだ」。
同意します。

もう一つの論点、フィルタリング条項。
EUでは電子商取引指令で一定要件下でプロバイダの侵害責任を免責する条項が置かれていたのに対し、ユーザがアップロードした違法コンテンツについて、プラットフォーマーが侵害主体になるように加盟国法で定めることが義務付けられています。

生貝さんはこの背景にバリューギャップ問題があるとします。
コンテンツ利用に関し巨大プラットフォーマーばかりが巨大な利益を得ていて、クリエイターたちに利益分配されていないという問題意識。
そしてEU委員会はほぼ全てのプラットフォーム規制に関し共同規制的なアプローチを取っていると指摘します。

日本でも海賊版対策で議論になったが、「プラットフォーマーが権利侵害コンテンツのフィルタリングなどを広く行うようになると救済や公正性、あるいはアルゴリズムに関する一定の透明性の確保というのがどうしても不可欠になってくる」。(生貝さん)

また、指令には権利制限も導入されているといいます。
拡張集中権利管理制度によって文化遺産機関がアウトオブコマース作品のライセンスを得やすくして電子利用を促す措置などです。
これも日本のデジタルアーカイブ戦略に参考となります。

生貝さんが「著作権法の民法特別法的なアプローチに加え、だんだんと事業者規制的アプローチの性質すらも帯び始めている」と指摘し鼎談を締めています。
知財本部で著作権法と競争法を結合した議論を行う、ないし文化審議会に競争法の専門家を投入するといった工夫が必要になってきていますね。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年8月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。