韓国はこれも質より量か!輸出管理強化のWTO訴状の中身

2019年09月18日 06:01

世界貿易機関(WTO)が16日、韓国が日本の輸出管理強化措置を提訴した9月11日付の訴状を公表した。早速、WTOのサイトに当たってみたので、その訴状の概要を以下に紹介する。

Wikipedia、Republica/Pixabayより:編集部

訴状の構成は次のようだ。

  • 冒頭部・・4項目(~4.)
  • 措置の特定(IDENTIFICATION OF THE MEASURE)・・6項目(~10.)
  • 法的根拠(LEGAL BASIS)・・2項目(~12.)(但し、11.には11項目ある)
  • 結論(CONCLUSION)・・3項目(~15.)
  • 添付資料・・10項目(主として日本の通達等がURLと共に示されている)

冒頭部の1.項にはこうある。


1. 当局の指示に基づき、韓国政府(「韓国」)を代表して、私はここに、フッ素化ポリイミド、レジストポリマーそしてフッ化水素の輸出を制限する日本の特定の措置および韓国向けの関連技術に関して、日本政府(「日本」)との協議を要請する(request consultations)。


そして、その根拠として以下の規則や協定を掲げている。

  • 紛争解決(「DSU」)に関する規則と手順の合意の1条と4条
  • 関税と貿易に関する一般協定1994年(「GATT 1994」)第XXIIの1条
  • 貿易円滑化協定(「TFA」)24条
  • 貿易関連投資措置に関する協定(「TRIMs協定」)8条
  • サービス貿易に関する一般協定(「GATS」)XXIII条
  • 知的財産権の貿易関連側面に関する協定(「TRIPS協定」)1条

冒頭部の残りの2.~4.項を要約すれば、「日本の措置は関連する協定にある日本の義務と矛盾する。韓国の要求は以下に詳述する法律や規則にも、また日本によって許可または拒否された個々の輸出許可にも関係する。韓国は以下にその措置の問題点を特定し、苦情の法的根拠を示す」となる。

次に「措置の特定」6項目のポイントを挙げる。(一部要約あり。太字は筆者)

5.は「7月1日に経産省は外為法と外国貿易法に基づき、特定の規制対象製品(とその関連技術)の輸出と移転に異なる許可方針と手順を適用すると発表した」とし、6.で「7月4日から3製品(同上)を韓国向け輸出の場合、過度に厳格な輸出許可方針と手続きの対象とし始めた」とする。つまり、この3製品についてだけ、他の輸出品と異なって過度に厳格ということだ。

7.では「最近、特定の機微な品目が不適切な管理で韓国に輸出されているのを見つけたから、と日本が主張するが、韓国はこの措置を正当な輸出管理の考慮事項とは無関係の政治的配慮事項に基づいていると考える」とし、8.では「韓国の見解は、この措置は政治的動機に基づく、貿易に関し偽装された制限(disguised restrictions)を構成している」と述べている。

9.は主として日本の措置の説明で、その結びでは「経済産業省は、3つの特定された製品とその技術を韓国に輸出しようとする輸出業者に、過度に複雑で負担の大きい輸出手続きを課している」としている。

10.は「措置の特定」のまとめ。「一括許可が適用されず個々の輸出許可申請は厳しく監視されて」いるので、「不必要な遅延やその他の重大な制限が生じている上、投資、ライセンス供与、その他の知的財産の譲渡、技術移転に関連するサービス提供など、他の様々な国際貿易を事実上制限」しているとある。

要するに、日本による政治的かつ偽装された制限措置によって、3製品の輸出に不必要な遅延やその他の重大な制限が生じている上、投資、ライセンス供与、知的財産譲渡、技術移転などの様々な国際貿易も事実上制限され、韓国は困っているから何とかしてほしい、ということだ。

続いて「法的根拠」

11.では日本の措置が矛盾していることを述べ、12.では「日本は、他のWTOメンバー向けの同じ製品の輸出に同様の制限を課さないのに、3製品(同上)の輸出が韓国向けの場合には一括許可を許可しない」といい、これがGATT 1994の第1条に違反するとする。

GATT第1条は「一般的最恵国待遇」の条項で、経産省はその1項を「関税、輸出入規則、輸入品に対する内国税及び内国規則について、WTO加盟国が他の加盟国の同種の産品に最恵国待遇を供与することを定めている」と説明している。

だが、これはホワイト国も同様だが、日本はこの3製品の輸出でアジアでは韓国にだけ「一括許可」をして来た。EUも日本には与えているホワイト国待遇を韓国には与えていない。裏を返せば、むしろこれまでの日本の韓国に対する待遇がGATT第1条違反だったと言えまいか。専門家に意見を求めたいところだ。

同じく11.で、日本の措置が「過度に負担のかかる複雑な行政手続き」で、「過剰な手数料を課している」ことについて、GATT第VIII条とTFAの第6条・10条の違反としている。が、これも中国や台湾と同様の手続きを求めているに過ぎないので、問題になるとは思えない。

さらに日本がその措置を「一方的かつ突然に実施したので、客観的な基準に基づいて許可された管理者に対する追加の貿易円滑化手段を提供していない」とし、貿易円滑化協定(TFA)の第7条と第8条に違反するという。が、部屋こそ殺風景だったが経産省は韓国の担当者に6時間も事務説明会をしたではないか。

きりがないので「法的根拠」はこれくらいにして、「結論」に進む。


結論

13. 上記に照らして、韓国は、日本の修正輸出許可方針と手続きが、対照して適用される契約の下で、直接的または間接的に韓国に生じる利益を無効化または毀損、またはこれらの契約の目的を妨げると考える。

14. 韓国は、協議の過程で、上記の事項に関して対照する契約のその他の規定に基づく追加の措置および請求に対処する権利を留保する。

15. 韓国は、この要請に対する日本の回答を受け取り、相互に受け入れ可能な協議日を設定することを期待している。


以上、関係する規則や協定を持ち出してくどくどと主張を繰り返しているが、韓国の言い分をまとめればこうなろう。

日本が一方的かつ突然に実施した措置は、正当な輸出管理とは無関係の政治的配慮に基づいていて、過度に複雑で負担の大きい輸出手続きを課しているので、様々な国際貿易も事実上制限され、韓国は非常に困っている。日本と協議したいので、WTOには日本が協議に応じるようにして欲しい。

日本の措置が政治的配慮に基づくもので関係する取り決めと矛盾すると言いながら、韓国はもっぱら政治的動機から報復行為として日本をホワイト国から外す挙に出ているので、韓国の方が矛盾しているように筆者には思える。

戦争での自衛権行使なら「均衡性」を要件に、受けた武力行使と同等の自衛行為が認められるようだが、果たして貿易ではどうだろうか。先般の日本製バルブでの上級審の裁定を日韓両国が勝訴としたように、また被災地産物に対する韓国の禁輸が上訴審でひっくり返ったように、WTOは予測不能だ。

国際機関では、中韓がWTOでは開発途上国扱いされていたり(韓国は辞退する意向?)、先般、テッド・クルーズ共和党上院議員が、中国が国連薬物犯罪事務所(UNODC)の次期所長に推薦した前香港行政府No.2(14年の雨傘デモを暴力で鎮圧)の所長就任を阻止するようトランプに手紙で要請したりと、おかしなことには事欠かない。

他者を信じ易い性癖のある日本人には、気が回りにくく実に面倒で手間が掛かることだが、こうした事案にまめに対応して、日本の立場をその都度発信してゆく努力が求められる。その点、新外務大臣は良い意味で人が悪そう?なので、ぜひその真価を発揮して貰いたい。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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