イスラエル選挙とトランプ大統領の賞味期限

2019年09月20日 14:00

トランプ大統領が最近吠えず、物わかりの良い普通の大統領になった気がするという趣旨のことを呟いておりました。悪い表現ですが、賞味期限という例えで見るとどうなるのでしょうか?

(ホワイトハウス公式HPから:編集部)

(ホワイトハウス公式HPから:編集部)

トランプ氏が大統領に就任した時、その思想や振る舞いから「アメリカを二分する」と大騒ぎになりました。数々の過去のスキャンダラスな話が暴露され、トランプ氏はそれを打ち消す一方で、強引な対抗手段に出ました。メディアを縛り上げ、自分でツイッターを通じて直接国民と対話するという方法を取ったのです。

その間、トランプ氏は持ち前のビジネスマンとしての才覚を最大限利用し、多国間交渉ではなく、個別交渉を通じてアメリカに有利な改正を進めてきました。NAFTA(現USMCA)や韓国とのFTAはその一例でしょう。日本との関係ではCPTPP(TPP11)から離脱し、来月にも二国間貿易交渉が締結されることでTPP並みの条件となりそうです。

経済では減税措置を行い、アメリカの消費、および株式市場を活況にしたもののそのクスリが切れつつあり、FRBに大幅な利下げをすべきだと「外野の『ベンチ』からFRBの選手にヤジを飛ばす」ような状態が続いています。

国際協定関係ではTPP以外に地球温暖化対策のパリ協定やユネスコ(国連教育科学文化機関)からも離脱しています。WTO(世界貿易機関)の紛争処理にかかる委員は枠7名に対して現在3名しか委員がおらずそのうち2名が12月までに任期切れしますが、トランプ大統領がWTOに全くの信認を置いておらず、委員を出せなくなる公算が高く、こちらも間もなく機能不全になると見られています。

こうみると世界の枠組みをすっかり変えてきたのですが、彼のパワーにやや陰りが見えてきたのが外交問題です。中国との通商戦争で想定外の長期戦になっていること、北朝鮮問題はほとんど進展してないこと、イランとの今後の展開のビジョンが見えないこと、ベネズエラの対策も中途半端、盟友英国はわんぱくなジョンソン首相となり、ややてこずり感があること、メルケル、マクロン両氏との距離感も明白になっています。

そんな中、イスラエルはトランプ氏にとって最大の拠り所の一つであったはずで、その首相、ネタニヤフ氏とは非常に近い関係とされました。アメリカは今回のイスラエルのやり直し選挙が終わった段階でネタニヤフ氏と共に中東政策と和平案を提示する予定でしたが、その選挙はネタニヤフ氏にとってほぼ敗北に近く、組閣にネタニヤフ氏が指名されない公算が出てきています。(イスラエルは組閣を大統領が命じます。)仮にそうなれば対イラン政策を含め、大幅な方向転換を余儀なくさせられることになります。

ベンヤミン・ネタニヤフ氏(Wikipediaから:編集部)

ベンヤミン・ネタニヤフ氏(Wikipediaから:編集部)

ところで私の見るトランプ氏の弱みとは「長期戦」であります。いや、アメリカが苦手とするのが「長期戦」と申し上げてよいでしょう。多分、短期志向が強いのがアメリカ人の気質と本質であり、粘りに粘られると案外音を上げやすい傾向が見て取れます。ベトナム戦争やアフガン、イラクなどの派兵でも大変苦しんだのは知力と体力と資金力の一発勝負ではなく、泥沼だからであります。

どんな人にも賞味期限があります。その賞味期限は注目度が高ければ高いほど鮮度が重視(=短命)されるのは時間が経てば相手が対策を取ってくることで厳しい防衛策を取らざるを得ず、人間としての精神力が維持しにくくなることは一つあるのでしょう。その点、トランプ大統領は非常に強い意志を持っており、少なくとも国内ではその力をまだ発揮できるとみていますが、世界のすべてをコントロールできるわけでもありません。イスラエルのように選挙での敗北となれば大きく戦略を見直さざるを得ず、トランプ氏としては耐え難いことなのだろうと思います。

そこに持ってきて2020年の大統領選がそろそろ視野に入るころで保身的対策もしなくてはいけないでしょう。広げた風呂敷にどうお土産を包んで国民にその成果を報告するか、重要な局面を迎えていくことになりそうです。ただ、対抗する民主党に絶対的な候補がいないことから逆にトランプ氏を国民がどうリードしていくのか、代わり映えしないトランプ節ではなく、アメリカ世論がどう反応するかに視点を合わせるほうが面白いのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月20日の記事より転載させていただきました。

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