GMの全米ストライキにみる、米国の労働組合組織率の実態

2019年09月30日 14:00

米8月小売売上高は自動車が牽引し堅調なペースでの増加を維持したものの、自動車を製造する労働者は再編の波に呑まれ雇用を失いつつあります。

(カバー写真:Craig Morey/Flickr)

全米自動車労組(UAW)は9月15日、ゼネラル・モーターズ(GM)の全ての工場で勤務する組合員が同日深夜から12年ぶりに全面ストライキに突入すると発表。GMは2018年11月にホワイトカラー職の従業員5.4万人のうち15%相当のほか、工場労働者合わせて1.4万人のリストラを決定、19年2月には正社員4,000人の解雇を通知していました。

またミシガン州デトロイトとロードスタウンの組立工場、並びにミシガン州ウォーレンとメリーランド州ボルティモアのトランスミッション工場の閉鎖を決定していたのです。一連の状況を受け、4年に一度の労働協約更新の時期がめぐり協議決裂を迎えました。

ストには、UAWに加盟するGMの労働組合員(時給制の正社員やパートタイム労働者など)約5万人が参加し、31カ所の工場と21の施設に影響が及んでおります。労働者は1)雇用の保証、2)賃金引上げ、3)利益分配、4)新たな雇用創出への投資——などを要求し、一部報道でGM側は電気自動車工場の建設を提案し、そこで雇用の受け皿を用意しましたが、協議は進まず。2007年の全面ストは2日間、17時間にわたって稼働が停止していましたが、今回は長期戦と化しています。

さて、今回のストで気になるのが、米国での労働組合の推定組織率(雇用者に対する労働組合員の割合)です。日本では2018年12月末で18%とされていますが、2018年版・米国州別のベスト・下位5州をみてみましょう。

46位 バージニア州
推定組織率:4.3%
2008~18年の変化:0.2%ポイントの上昇
労働組合員数 16万7,784人(23位)
平均年収 5万8,022ドル(9位)

47位 テキサス州
推定組織率:4.3%
2008~18年の変化:0.2%ポイントの低下
労働組合員数 51万1,944人(9位)
平均年収 5万5,374ドル(12位)

48位 ユタ州
推定組織率:4.1%
2008~18年の変化:1.7%ポイントの低下
労働組合員数 5万5,634人(40位)
平均年収 4万7,447ドル(32位)

49位 ノースカロライナ州
推定組織率:2.7%
2008~18年の変化:0.8%ポイントの低下
労働組合員数 11万7,060人(28位)
平均年収 4万9,867ドル(25位)

50位 サウスカロライナ州
推定組織率:2.7%
2008~18年の変化:1.2%ポイントの低下
労働組合員数 5万5,369人(41位)
平均年収 4万5,499ドル(38位)

推定組織率が低い州は、すべて南部となりました。サウスカロライナ州とノースカロライナ州のカロライナズをはじめ上記南部の州で組織率が低い理由として、労働権法の施行が挙げられます。労働権法は、1935年に制定された全米労働関係法の改正に基づき、労働者に労働組合の加入と組合費支払いをめぐり、選択肢を与えるものです。そのほか、テキサス州の場合は所得税が課税されていないという特徴があり、これが組織率の低下につながっている可能性があります。

労働権法を法制化した28州は、以下の通り薄紫枠で組織率下位5州の州は黄色枠。それ以外のNY州、ハワイ州、カリフォルニア州などは労組加入が義務付けられた州。

rtw

(作成:DmapよりMy Big Apple)

5位 ロードアイランド州
推定組織率:17.3%
2008~18年の変化:0.8%ポイントの上昇
労働組合員数 8万3,165人(33位)
平均年収 5万3,408ドル(16位)

4位 アラスカ州
推定組織率:18.4%
2008~18年の変化:5.1%ポイントの低下
労働組合員数 5万5,148人(43位)
平均年収 5万7,052ドル(11位)

3位 ワシントン州
推定組織率:19.8%
2008~18年の変化:横ばい
労働組合員数 64万8,139人(5位)
平均年収 6万1,893ドル(6位)

2位 NY州
推定組織率:22.3%
2008~18年の変化:2.6%ポイントの低下
労働組合員数 187万3,880人(2位)
平均年収 6万9,947ドル(1位)

1位 ハワイ州
推定組織率:23.1%
2008~18年の変化:1.2%ポイントの低下
労働組合員数 13万8,854人(27位)
平均年収 5万968ドル(22位)

労働権法の採択は、グローバル化や自動化、産業構造の変化を受けて労組の存在感が薄れてきた結果、リベラル州と製造業基盤の強い州を除き進んでいきました。2018年の全米での推定組織率は10.5%と前年から0.2%ポイント低下し、2017~18年に2年連続で10.7%を経て、1983年の統計開始以来の最低を更新しております。

労働権法は、組織保障条項を禁止することで労組が労働規約を遵守しない労働者を企業に働きかけ、解雇する仕組みも禁じています。とはいえ、労働者から組合費を徴収できず、加入者が減少すれば団体交渉力の低下は否めません。賃金にその違いが現れ、労働権法が施行されている州の賃金1ドルに対し、採択されていない州は1.16ドルでした。

また、興味深い事実も浮かび上がってきます。今回の調査で組織率下位5州と上位5州のうち、製造業が州内総生産に占める製造業の割合を比較してみると…。

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(作成:My Big Apple NY、SCはサウスカロライナ州、NCはノースカロライナ州、VAはバージニア州、RIはロードアイランド州)

米国経済全般に占める製造業の割合は12%に対し、組織率で下位5州の製造の割合は平均13.8%、上位5州は5.9%でした。つまり、労組が必要な州で労組の弱体化が進んだことになります。労組の組織率が低い州は東西の海岸エリアの州より経済力が比較的劣勢な州で多いところをみると、企業誘致を有利に導くべく労働権法を採択した姿が見え隠れします。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年9月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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