金ピカ先生の報道に付け加えたいもう一つの視点

2019年10月14日 06:00

佐藤さん著書「ヤッチャン先生マル得受験術」より

いつも拙文を掲載して頂いているアゴラさんに、興味深いこんな記事が掲載されておりました。

金ピカ先生の逝去を悼む!死者に鞭打つ雑誌に申し上げたい

金ピカ先生とご親交が深かったとおっしゃる尾藤先生ならではの視点で、書かれていることは当然のことと思います。そして、こういった報道に対し、いかに事実ではないことが書かれやすいかも、私たちも有名人の方の薬物事件などで身にしみて感じておりますので、尾藤先生の胸中察してあまりあります。

そもそも金ピカ先生の報道というのが、80年代に今の林先生のように一世を風靡し、その名の通り「金ピカ」にゴージャスなものを身につけていたのに、いまは見る影もなく生活保護で暮らしている、それもこれも放蕩の限りを尽くしたせいだけど、奥さんに見捨てられると男は孤独だよね…..と、こうなったのは「自己責任及び家族に見捨てられたせい」と読みとれる内容だったんですね。

そして、尾藤先生がおっしゃっている、金ピカ先生の現在のお姿が写真に撮られ紙面に載せてあったんです。
でも、その写真ですけど、我々が思っている金ピカ先生のお姿は80年代のものですからね。今から30年以上昔ですよ。誰だって容姿は変わっていますよね。私だってあんなにかわゆい(?)ワンレン・ボディコン娘だったのに、今やただの太ったおばちゃんですからね。

その上、金ピカ先生は脳梗塞や心筋梗塞といった大病も患われた。
病気のせいでお痩せにもなられるでしょうし、それをことさらみじめな姿に煽り記事を書くのはいかがなものでしょうか?

ただこの記事、全く違った視点から我々依存症界では衝撃をもって読まれたんです。
それは金ピカ先生が、記者に向かって、「生活保護を受けながら、食事は殆どとらず、口にするのは焼酎とタバコくらいで、アルコール度数が20度の焼酎を朝も夜も飲んでる」「身体中が痛くて痛くてたまらない」「早く死ねたらいい」
などと語られているんですね。

これに対して、世話をしに来てくれるのはデイケアの方が週2回、身の回りのものをかたずけてくれるだけといったことでした。

これはどう考えても金ピカ先生はアルコール依存症に陥っていたと思われ、それに対して、
・生活保護の担当ケースワーカーは必要な対処をしていたのか?
・サービスに入った地域包括支援センターに依存症の認識があったか?
・その他地域の支援者の誰かに依存症の知識がなかったか?
という点が非常に疑問であり、我々にとって「やはり…」と暗澹たる気持ちになるのです。

記事では自己責任論が色濃く出ていましたが、むしろこういった記事では、現代社会で適切な支援さえあれば救うことができる人たちを、見捨てる結果になっている社会構造にこそ切り込んで欲しかったと思います。

そもそも依存症と生活保護というのは非常に密接に関わっており、もともとは働くことができていたのに、アルコールで身体症状がひどく働けないとか、ギャンブルで横領や窃盗事件を起こし会社をクビになって働けないなど、依存症の問題が回復しさえすれば、また生活保護を切って就労することは可能な人たちも沢山います。

現に、回復施設では入寮中は生活保護でお世話になっていたとしても、就労プログラムを終え、退寮する時には生活保護を切って自立していく人も多いです。

しかしながらこういった適切な対処をすれば「依存症から回復することができる」ということをご存知のケースワーカーさんが非常に少ないのが現実の大問題なのです。

ケースワーカーさんは異動も激しく、折角、依存症職人のようなケースワーカーさんに巡り合えたとしても、またすぐいなくなってしまいます。

私が出会った残念な生活保護のケースワーカーさんには、

・生活保護受給中の方からのSOSで「施設に入寮させたい」と伝えたら「反省文を書け!」と激怒された。
・「依存症って病気なんですか?」「入寮施設ってあるんですか?信頼できますか?」と聞かれた。
・親と別居し、世帯も分離しているのに「親が生きているなら親にまず何とかして貰っては?」と渋られた。

などなどがありますが、逆に保護が出たら出たで、その後のフォローがなく、依存症者が受給日から数日でお金を使い果たしてしまうようなことが繰り返されても、説教のみで終わってしまうというパターンが殆どです。

「本人にやる気がない」「生きる気力がなかった」そう書かれていた記事もありましたが、それこそが依存症のしかも末期の依存症の症状です。そこで手をこまねいているのではなく、なんとか適切なアルコール依存症を治療して貰える病院に繋げ、その後、回復施設などに連携を図り、自立に繋げていくことができたなら、あれだけ優秀な方ですから、わずか68歳で孤独死を迎えることなどなかったのでは….そしてもし、我々にその情報をキャッチできるアンテナがあったなら、回復に繋げ、回復者の生き証人として、第二の人生でまた活躍して頂けたのに…と残念でなりません。

金ピカ先生は、最後の最期まで身をもって私たちに何を教えて下さったのか?
先生の孤独死から学ぶべきことは沢山あります。

私たち依存症界からは、是非とも生活保護や地域包括支援センターといった、最後のセーフティネットに関わるケースワーカーさんたちに、依存症の正しい知識、そして介入方法、連携できる機関そういった知識をお持ち頂けるよう、教育の機会や研修など情報提供の予算や場所が与えて頂けたらと思います。

最後になりましたが、金ピカ先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト

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公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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