株主総会実務への影響は?アドバネクス株主総会不存在確認等請求控訴事件判決

昨日は危機管理やコンプライアンスに関心のある方にとって重要な裁判を紹介しましたが、本日は株主総会関連の重要判決の話題です。企業法務に関心の高い法律家の方々が「今年の注目判決」としているアドバネクス社の株主総会不存在確認等請求事件の控訴審(東京高裁)の判決日がいよいよ10月17日と迫ってきました(週刊東洋経済有料版記事より)。

アドバネクス社新潟工場(公式HPより:編集部)

昨年、日経法務面でも裁判の様子が報じられたことがありましたが、事案の概要と地裁判決の概要は、こちらの専修大学澤山助教の解説記事が詳しいです。今年3月の一審判決(東京地裁-資料版商事法務4月号31頁)については大阪大学の松尾教授が論稿を書いておられますし、弥永教授も金融・商事判例の巻頭でコメントを出しておられます。東大の田中亘教授は地裁に意見書を提出していますね。

あまりマスコミの話題になっていませんが、会社側、創業者側双方に著名な法律事務所の先生方が代理人に就いていますし、さらには9月にたいへん興味深い決議を求める臨時株主総会も開催されていて目が離せません。

とくに書面による議決権行使に関する代理権の制限について、今後の株主総会の実務に多大な影響を及ぼしうる論点がふたつほどあります。どのような判決が出るにしても、法律学者の方々から、たくさん判例評釈が出そうです。会社法改正や企業統治改革による株主総会機能の変容問題、株主総会へのインターネット質問や投票の実務指針制定など、近時の制度面での流れとの関係なども研究課題になるのではないかと。

株主総会関連の重要判例となると、最近ではこのアドバネクス事件とヨロズ事件、そして(少し前になりますが)ユーシン(役員報酬)事件あたりでしょうか。同業者の方で「これも重要ですよ」という最近の裁判例がありましたら、またご教示ください。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。