韓国不買運動と香港民主化運動の共通点

韓国の日本製品不買運動はピークを過ぎた感がありましたが、ユニクロのコマーシャル中止事件は再び、眠れる子を起こしたような感じがあります。一方香港の民主化運動も予想以上に長期戦になっていますが、この「粘り」はどこから来るのでしょうか?

(写真ACから:編集部)

(写真ACから:編集部)

両運動に共通しているのは若者主導、そしてSNSであります。また、情報化が進む中、その運動の成果の「目に見える化」が進んでいることがあるのでしょう。韓国と香港の若者には共通する悩みがあります。それはエスタブリッシュ層とそうではない人の明白な二極化であります。

香港では高騰する不動産価格でどれだけ頑張っても50㎡の住宅が手に入れば凄いと思われるでしょう。韓国では一流大学を出て一流の財閥系に就職できた人とそうではない人に明白な差が生まれ、取り残された若者は就職すらできず、将来の不安を抱え込んでいます。

一昔前まではそれら取り残された若者は世の中の枠組みの中で甘んじるか、政府に声なき声を発するといった抵抗にもならないむなしさと悔しさを抱えていました。当然、それはストレスとなって溜まります。

かつての日本を考えてみましょう。60年安保の時、日本はデモの嵐でした。それは日米安保が国民への十分な理解が浸透してなかったことが直接的引き金です。しかしそれ以上に当時、日本国民が疲弊していたのではないでしょうか?

戦後10年ちょっとの間の激動、GHQがあって朝鮮戦争があって思想は180度転換し、戦後の焼け野原からの復興という点でへとへとになっていた国民という背景があったことは見過ごせません。そこに日米安保は国民を不安に陥れたということだったのではないでしょうか?

今、香港と韓国の若者が抱えている問題は自分の将来が見えないという不安にどう向き合ってよいかわからないということなのかもしれません。

では政府に何か言ってどうにかなるのでしょうか?韓国の場合、文政権は経済改革では全く成果を上げていないどころか、最低賃金の引き上げ政策が余計景気を悪化させてしまいました。文政権がどこに向いて何をしたいのかさっぱりわからなくなっている中で若者は目先のわかりやすく、やりやすい標的を目指したとしたらどうでしょうか?これは中国の尖閣をきっかけとする反日運動とほぼ同じ構図です。

ユニクロのコマーシャルが炎上したケースを見てみましょう。98歳と13歳の二人の掛け合いで “How did you used to dress when you were my age?” “Oh my god, I can’t remember that far back” でした。

ところがこれに韓国語の字幕で「80年以上も前のことを覚えているかって」となっているのです。字幕を入れたユニクロの見解は歳の差を明白にするためにわざわざ80年を挿入したそうですが、その80年前は当然戦時中です。これは無神経なユニクロの完全な手落ちなのですが、こういう刺激を今、韓国に与えてはいけないのだろうと思うのです。

慰安婦像の時も若者が主導していました。この若者たちは慰安婦の話を自国の立場に立った教育と親などからの話で刷り込まれてしまいました。一旦思い込んだらそれを変えるのは容易ではありません。同様に、今回の日本の輸出管理規制もほとんどテクニカルな問題で一般人が騒ぐ内容ではなかったのですが、それが様々な自己都合の解釈を作り出すわけです。

この問題の当初、私は安倍首相や世耕経産省大臣(当時)の発言が一般市民向けに火をつけたのは余計なことだったとこのブログで指摘させてもらいました。政治家は喋ることが仕事だと言いますが、時には黙ることも仕事だと分かってほしいのです。

運動する人間にとってそれが成果があるかどうか、これが一番重要です。暖簾に腕押しなら脱落しやすくなるのです。つまり、運動に対してメディアも世間も反応しないこと、これが最大のクスリだと考えています。

香港と韓国の若者は好きで運動をやり続けているわけではありません。きっかけがあればやめたいと思っています。そのきっかけは案外、すごく小さなことでSNSで拡散させることで収まることもあり得るでしょう。

心理には心理で対抗せよ、ということではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年10月25日の記事より転載させていただきました。