英語試験延期は城井崇議員の大金星。萩生田大臣には改革を期待

2019年11月03日 06:01

歪んだ行政を正す大金星

英語民間試験導入が2024年以降まで延期となった。今回の入試制度変更には、これまで多くの学生と学校が不安にさせられて来ており、多くの問題点を残したまま試験制度変更を推進する行政には、多くの学校や生徒が不満を感じていた。そのような状況で、最も多くの課題を残していた英語民間試験の導入が一旦見送られたのは多くの受験生にとって朗報である。

省益かプライドかは不明だが、国民のためになるのか大いに疑問の残る行政活動の一部を質した今回の延期に関し、最大の功労者は城井崇(きいたかし)衆議院議員(国民民主党)だろう。心より感謝申し上げる。

一方、これまで誠実に対応し努力してきた学生と学校ほど、無駄になる努力の量が多い。延期の判断が遅すぎる点や「努力が直接的には報われない」という点は、全ての関係者が反省すべきである。

英語以外にも多くの課題が残る試験制度変更

試験制度変更については英語以外の科目にも課題がある。当初は「思考力を問う」などの制度変更の大義を掲げたが、採点作業などの現実的な制約を反映すれば、逆に「思考力以外の能力を問う」問題になりかねない。

例えば、数学で一部記述式が採用される予定である。しかし「記述」には「思考力」に加えて「数式や文章の書き方」という「お作法」要素が入る。寧ろ「お作法」しか判定できない可能性も高い。これで数学力が測れるのだろうか。内容の他にも、採点の公正性への疑問など、不合理な事柄が多数発生している。

学力の把握とは

筆者が生徒の学力を把握する方法を簡単に開示する。

学力を把握するために筆者は思考作業を分割して検証する。まず、問題解答プロセスを4段階に分解し、更に各段階を2要素に細分化して、「どこに欠陥やボトルネックがあるのか」の探索を行う。この4段階と2要素を分割測定しそれらの各判定を総合することで、学力は精緻に把握できる。(ただし把握できるのはあくまでも学力に過ぎず、総合的な知力ではない。)

一方、教科書・新聞・書籍から任意の文章を切り取ってきて出題し「読解力」の有無を断定するような試験は、筆者には「乱暴な放言」にしか見えないが、読解力のない人ほど騙されてしまうので注意が必要だ。

最大の功労者は城井崇(きいたかし)議員

今回の「英語民間試験延期」に話を戻すと、冷静に観察すれば、国会対策の与野党間の取引材料にされ、重要度の高いテーマを保全するために差し出された「生贄」の要素が強い。そのため確かに「トリガーを引いた」のは共闘した野党会派だが、実質的にここまでの舞台装置を組み立て、寄り切られる寸前まであきらめず抵抗してきたのは国民民主党の城井崇衆議院議員である。

城井議員は、2011年野田内閣で文部科学大臣政務官を務め、以来教育をテーマに継続的に活動しているようである。この英語民間試験に関しては少なくとも1年以上前の第196回国会(2018年7月)で、非常に鋭い次のような質問主意書を出していた。

新しい大学入学共通テストへの英語民間試験導入に関する公正性、公平性の担保に関する質問主意書 提出者  城井 崇

二 同じ共通テストの枠内で実施しながら、各民間試験についてだけ、他の試験と同様の公正性・公平性を求めないということはあり得るのか。公正性・公平性のギャップを国民にどう説明し、理解を得るのか。受験生や保護者、教員が納得すると思うのか。

四 (略)その結果、犠牲になるのは、受験生とこの国の入試制度であると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

五 共通テストとしての民間試験の利用は一年半後に始まる予定となっている。すべての受験生が、受験したい試験を滞りなく、少なくとも二回受けられる見通しは立っているか。

(以上城井崇議員のウェブサイトより抜粋)

これらの活動が、以下のような野党共同会派の議員立法法案につながった。

10月24日16時半、議員立法「英語民間試験延期法案」を共同会派「立国社」と共産党で衆議院に提出しました。

複数の試験を比較するしくみに欠陥があり、受験生に経済的不公平・地理的格差などが直撃し、運営にあたる実施団体も公正さを欠く現状。放置せず立ち止まって改善すべきです。

城井崇議員のウェブサイトより抜粋)

なお、他の野党各党が今回の延期を自分たちの成果としてアピールしているが、過去に城井議員以外が地道な活動をしていたかどうかは不明である。(確認できていないというだけであり、していないと断定はしない。)例えば「ガソリン値下げ隊」などと称し国民をだました川内博史議員らが背乗りしているようだが騙されないようにしたい。

萩生田大臣は敵でなく味方だ

今回の見直しは、朝日新聞をはじめとする各メディアが萩生田大臣の「身の丈」発言を切り取って印象操作したことがきっかけである。結果として「現時点で自信をもって受験生に提供できるシステムになってない」と萩生田大臣が判断し、延期を決断したことは公平に評価すべきである。たとえそれが「国会対策の生贄」の側面があるとしても。

以下筆者の想像に過ぎないが、文科省の中には既得権益側に立つ人物がおり、戦略特区に象徴される規制改革陣営には「面従腹背」していると思われる。萩生田大臣は、加計学園の騒動の際も安倍総理側近としてメディア(=既得権益)側の敵であったはずだ。つまり文科省の一部官僚とは敵対関係にあると思われる。そして今回、文部科学大臣を色々なメディアに晒しリスクを取らせたのは文科省である。筆者には文科省(の一部官僚)の悪意が見えるが根拠が提示できないのでその風景は妄想に過ぎないかもしれない。

そんな萩生田大臣が、多くの受験生を巻き込んだ大惨事になるまえに、英語民間試験の延期を決定したのである。これを国民も野党も忘れてはならないだろう。

政争の具にするな

野党は萩生田大臣の辞任を求める方針だという。二週連続で大臣が辞任した安倍政権を追い込むための第三のターゲットにしているようだが、それはやめるべきだ。今国民が欲しているのは政局ではなく前向きな国政の推進であり、そのための正常な国会運営である。今は「ベクトルを間違えて功労者を叩く」ことはしないで頂きたい。

教育制度自体の改革につなげよ

少子化の時代である。多産の時代に設計された教育制度は大きく変更すべき時が来ている。少子化の時代では子供をもっと大事に育てることが必須である。

たとえば、従来「読解力がない」として不合格にしていた人材でも、じっくり育てれば想像を超えた読解力を身に付ける可能性がある。そもそも従来の教育には、好奇心を潰す要素が多く、見直しの余地がある。また数学では例えば、中一の最初に「+」や「-」の記号を教える。ここで数や値の「正負」という形容詞的使い方と「加減算」という動詞的使い方とを混同したまま教えているが、「数学的センスが際立つ子」の一部と「計算が困難な子」が似た反応を示すので、一部の天才的な子供がスポイルされていると筆者はみている。

とにかく今回、ほんの一部だが日本の教育制度のおかしな点に注目が集まり、「国会を通じて民意が行政を正した」ことは特記すべき事柄であり、城井崇議員の殊勲である。萩生田大臣にはこの事案を切り口として、日本の教育制度改革という、より大きな仕事につなげて頂きたい。他の党はわからないが国民民主党の玉木雄一郎代表ならばきっと議論が通じるだろう。若い仕事人議員がどんどん登場している。ここに日本の未来萌芽が見えないだろうか。

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。

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田村 和広
算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰

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