マーシー逮捕!再発する人としない人の違いとは何か?

2019年11月07日 11:31

昨日はマーシーこと、田代まさしさんが、再び覚せい剤の所持で逮捕されるという、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

田代まさし氏ツイッターより:編集部

私もものすごく驚きましたが「やはりこんな日が来たか」という気持ちも正直ありました。
何故なら、田代さんほど大変な依存症を抱えた人の回復は、一筋縄ではいかないということを、これまでにも嫌というほど見てきたからです。

依存症の回復は、使っていた量や長さ、そして重症度が大きく影響します。
皆さんご存知の通り、田代さんはこれまでに覚せい剤で3回逮捕されているので、今回が4度目となるわけですが、最初の2回は、治療に全く繋がっておらず「もう絶対やらない!」という自力の決意で止めようとされておられました。

これを我々は依存症という病気に対する「否認」と呼びますが、田代さんはこの否認の状態がかなり続いていて、ご著書を拝読すると、1978年頃初めて覚せい剤を使い、2001年に覚せい剤での最初の逮捕、2004年に2度目の逮捕、そして2010年に3度目の逮捕となり、2014年の仮釈放の際に、初めて薬物依存の回復施設ダルクに繋がって来られたわけです。

となると、かなり長い間覚せい剤を使ったままどこにも治療に繋がれなかったわけですが、それもそのはずで、当時は「治療」という言葉などが、報道されることはまずありませんでした。

田代さんは多くの芸能人仲間に愛された方なので、逮捕時には様々なタレントさんがコメントされておられますが、その殆どが「根性を叩き直してやる」とか「頭にくる」とか、中には「土に埋めてやる!」などというものもありました。
「治療に繋がる」ということが言われるようになったのは、この2、3年のことではないでしょうか。

とはいえ3度目の正直でやっと田代さんは治療に繋がれたわけで、それなのになぜ再発したのでしょうか?
Twitterなどをみると「回復施設には効果がない」などとコメントを寄せている人がいますが、実際は全く違います。回復施設で回復している人も沢山います。

現在は「薬物事犯は再犯率が高い」とそればかりが強調されますが、確かに、回復施設や自助グル―プ、医療などどこにも繋がれない人が多すぎて、再犯者率が高いということはあります。これは国の啓発不足にも責任があると思っています。
けれども「なんらかの回復支援に繋がれた後は、一度も再発していない」という人も沢山いることもまた事実なのです。

では、再発しない人はなぜ再発しないのか?使っていた量や使用期間の他にも差があるとしたら何なのか?

これはもうひとえに、自分の回復ケアを怠ることなく続けられるかどうかにかかっています。
よく言われることですが、依存症からの回復は一日一日止め続けるしかありません。
糖尿病と同じで、一度かかったら慢性疾患なので完治はしないんですね。
けれども糖尿病が食事制限や適度な運動を続けることで悪化を避けられるのと同じで、一日一日止め続ける努力を継続することで、再び依存にのめり込む生活が避けられるのです。

糖尿病の食事制限と適度な運動にあたる部分が、依存症では自助グループに定期的に通ったり、一人では抱えきれないストレスフルな出来事があった場合に、誰かに助けを求める習慣をつけたり、一緒に依存していた仲間や環境に近づかない、反応してしまうものを求めない、余暇の時間の過ごし方を工夫するなどがあります。

私なら競艇場に行かない、番組を見ない、競艇好きな人に近づかない、スポーツ新聞を買わない、そしてギャンブルをやっていた時間を、他に楽しめるものに置き換えるよう努力するんですね。

ところが糖尿病が症状がでないと、ついつい「このくらい」と思うようになってしまったり、どんなに気をつけていてもだんだん悪化してしまう人がいるように、依存症も全く同じで、「もう大丈夫だろう」「少しくらいなら」という考えがスキあらば忍び込んできます。
この忍び込んでくる度合いが、重症度の違いではないかなと思います。

田代さんも、回復施設の職員をやっていらしたので、もちろん気をつけていらしたとは思いますが、忙しくなりすぎたり、プレッシャーがかかる仕事が続いたり、疲れすぎたりしているうちに、段々、セルフケアに向き合う時間が取れなかったり、追いつかなくなったりして再発してしまったのではないかと思います。

私たちは依存症を発症したために、ストレスに対する耐性が弱くなってしまいます。
ストレスフルな状況が続くと、それに対して「依存行為を使ってストレスを忘れたい」という、脳の回路が出来あがってしまっているために、その強迫観念から逃れられなくなってしまうのです。

ですから、その脳の回路が、ストレスフルな状況があった時に、
「あっ、仲間と会って、このストレスを解決しておかないとマズイな!」ということが習慣づくようになるまで、どっぷり仲間の中にいる必要があります。習慣が途切れてしまわないよう徹底的にやり続けるのです。
私も、最初の3年間位は、それこそ毎日自助グループに通っていました。

昨日アベマプライムさんに出演させて頂き、そこで田代さんのVTRを拝見させて頂き思ったのですが、田代さんは、2014年にダルクに来られ、2015年2月にはもうブログを再開され、3月にはロフトでイベントをやり、2015年7月には法務省の大きなイベントに出ておられます。

これは田代さんの依存症の重症度からいったら、異例の速さで表舞台に出てこられていると感じました。
有名人でいらっしゃったことから周囲の期待に早く答えたい!と頑張りすぎたのかもしれません。

けれども有名人であろうがなかろうが、病気は平等に襲ってきます。
私の経験から言うと、やはり何度も逮捕されるくらい病気が進行している場合は、2~3年はじっくりと落ち着いた環境で、ご自身の回復に向き合われた方が良かったかもしれないなと感じました。

田代さんの報道を見ると、責めるものより「薬物の回復は難しい」と理解が示されるようになり、これはとても有難いこととメディアの皆様方に感謝しております。
一方「薬物は再犯が多い」「薬物はなかなか回復しない」ということばかりが強調されすぎると、これがまたスティグマとなり、回復施設の排斥運動が進んだり、回復者の再就職が困難になったりと弊害が出ます。

確かに依存症からの回復は難しいので、温かく見守って頂きたいのですが、けれどもじっくり取り組めば「回復はある」「回復できる」ということも強調させて頂きたいと思います。
回復までの道のりは人それぞれで、その時間は比較できるものではありません。
田代さんが、再び回復のレールに乗れるよう、心からお祈り申し上げております。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト

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公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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