今こそ「フィデュシャリーの時代」:信認義務の活用に向けて

2019年11月07日 14:00

2016年5月に、こちらのエントリー「監査役もフィデューシャリー・デューティーの時代」にて、樋口範雄氏(東大名誉教授、現武蔵野大教授)の名著「フィデュシャリー『信認』の時代」をご紹介しておりましたところ、このたび内閣府「公益財団法人トラスト未来フォーラム」の役員の方から「絶版となった樋口先生のご著書が、当HPより無料でダウンロードできるようになりました」とのご連絡をいただきました(どうもありがとうございます!トラスト未来フォーラムのHPはこちらです)。

以下、同HPの紹介文(引用)ですが、

情報通信ネットワークの浸透、情報格差の拡大、グローバル化と高齢化の進展等を背景に、取引当事者間の関係がより複雑・デリケートなものとなっている中、取引先目線・立場での思考・実践を核とする「フィデュシャリー」に係る考え方は益々重要なものとなっています。樋口範雄教授は、「フィデュシャリー」の概念を広く日本に紹介された第一人者であり、1999年出版の本書では、信託を代表とする「フィデュシャリー」の意義と広がり等について分かり易く解説されています。「フィデュシャリーの時代」がいよいよ本番を迎えつつあるとも言える今、本書のご一読をお勧めします。

たとえば、このたびの会社法改正では「社債管理補助者」という制度が新設されますが、その権利・義務の内容を「信認義務の法理」を参考にして現行の「社債管理者」制度と比較しますと理解が進みます。また、日本ではGAFAに代表されるプラットフォーマー規制に向けて行政(公正取引委員会)が動いていますが、米国では「情報フィデューシャリー」として、プラットフォーマーに信認関係における受認者の責任を認める学説が有力に唱えられています(無体財産規制と同様、いわゆる民民規制によって行政目的の実現を目指す)。

信認関係の法理をデータ保護の世界にも適用することでプラットフォーマー規制の実効性を上げるという考え方は、今後国際的な規制の標準化に役立つのではないかと思います。そして、日本の監査役さんの職責を論じるうえでも、とりわけコンダクト・リスクへの対応が求められる昨今、ますます「信認義務」の発想が必要になってきていると確信します。

有斐閣さんと樋口先生のご協力のもと、信認義務や信託法理論をわかりやすく解説している本書が無料で読める!というのはなんとも素晴らしい。もちろん(出版時以降)信託法などは改正されておりますが、信託法理や「信認義務」を理解するには必読の一冊です。司法の世界にもAIが活用されるようになれば、日本でも判例の集積が企業実務に及ぼす影響が高まります。

「監査役等に期待される行動とは何か・・・」個別具体的な事案に沿って信認義務の内容を検討することは、デジタル時代の監査役等の行動規範を形成するには有用な理論だと考えます。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。

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