学園祭講演など:閣僚辞任劇、国民を甘くみると大きな報いに

石破  茂です。
慶応義塾大学連合三田会、麻布大学、早稲田大学、日本大学と続いた一連の学園祭関係の講演が一段落しました。一般市民の方にも公開していたこともあってか、どの会場も老若男女、多くのお客様にお集まり頂き、とても有り難いことでした。

テレビであれ新聞であれ、我々の発言はその一部が切り取られて真意が伝わらないことが多く、「編集権」によって故意に歪曲されることもあるのですが、講演やその後の質疑応答では、そこにおられる方には真意は伝わりますので、出来るだけこのような機会を持ちたいと思っております。

8日の予算委員会も質問と答えがほとんど噛み合わない、残念なものでした。民主党政権が誕生する前の野党時代に厳しい質問をした経験のある議員が減ったせいなのでしょうか、野党の質問はいかにも中途半端でした。私が在任した小泉・福田・麻生内閣当時の野党質問は切れ味鋭いものが多く、閣僚席は緊張感に包まれていたものですが、そのような雰囲気は全く感じられなくなりました。

総理の答弁も、問いに正面から答えるというよりは、一般論に置き換えるものが目立ちました。野党の力量不足もあって、質疑が中断や混乱することもあまりなく淡々と終わったのは政府・与党側とすれば結構なことですが、「任命責任とは何か」「説明責任とは何か」などについて深い議論にならないまま、「責任」という言葉が死語となってしまうのではないか、との危惧を覚えました。

辞任された両閣僚は、「問題視されているような事実は全くないが、国会が混乱し、行政が停滞するのを防ぐために辞任した」と述べられました。その目的は既に達せられたのですから、閣僚辞任後は、そのような事実がなかったことについて明らかにするのが、政治や自民党の信頼を取り戻すために必要なことではないでしょうか。国民の意識の喪失や麻痺を甘く見てはなりません。いつか必ず大きな報いとなって跳ね返ってくることを、自分自身、肝に銘じなければならないと思っております。

大学入試への民間の英語検定試験導入は延期・再検討となり、危惧された事態はひとまず回避されました。しかし小池都知事の「都民ファースト」から流行り言葉になった「○○ファースト」は、本来の意味からはかけ離れつつあるようです。「アスリートファースト」しかり、「受験生ファースト」しかり、言葉の本来持つ意味が失われつつあることにも大きな恐れを持っています。

昨日午前、茨城県筑西市の旧明野町自民党女性部の研修会で講演して参りました。旧明野町は農相や防衛庁長官、官房長官などを歴任された故・赤城宗徳代議士の出身地です。

昭和35年(1960年)の安保闘争で世情騒然とし、デモ隊の国会乱入を怖れて自衛隊の治安出動を考えた岸信介総理に対し、「自衛隊は国民に銃を向けてはならない。そのようなことをすれば自衛隊は国民の信頼を失うのであり、もしどうしてもやるというのなら私を罷免してからにせよ」と言って総理の打診を跳ね付けた赤城防衛庁長官は実に立派であったと思います。国を想い、職を賭するかつての立派な政治家に学ばなくてはなりません。

また昨日午後は、渋谷で開かれた20代~40代女性中心の「政治と多様性」をテーマとする集会にパネラーとして参加致しました。

江戸時代の価値観は「安定」(天下泰平)、明治維新以降は「強さ」(富国強兵)、敗戦後今日に至るまでは「豊かさ」(経済成長・所得倍増)であったが、これからは「楽しさ」になる、と堺屋太一先生は「三度目の日本」(2019・祥伝社新書)に記しておられますが、その一つのキーワードが「多様性」であるように思います。時代の大変革期というのは、価値観そのものが大きく変わる時であることを再認識させられます。

週末は、9日土曜日が種子島開発総合センター鉄砲館訪問・関係者との意見交換会(午後2時・西之表市西之表)、石破茂議員来島記念講演会「地方創生と離島医療、種子島の未来」(午後4時・ホテルニュー種子島)、夕食懇談会(午後6時半・同)。
10日日曜日は終日、種子島各地を訪問する予定です。

隠岐諸島や五島列島、甑島や対馬、沖縄の島嶼部など、離島にはこれまでも随分と行ってきたのですが、離島医療については今回をよい機会として学びたいと思っています。少子化・超高齢化と人口減少が急速に進む離島は日本の未来図を先取りしているのであり、学ぶことの意義の大きさを痛感しております。

都心は小春日和の一日となっています。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。