アメリカの「対北朝鮮」軍事行動に中国は暗黙の了解?

2019年12月17日 11:30

米中貿易戦争が12日、双方合意により一段落した。約2年間続いた米中貿易戦争は一旦、最悪の事態を招かねない火種を消し止めたと言える。

ところが、なぜ、今のタイミングで米中合意が出来たのか?疑問を捨てきれない。中国がアメリカの対北軍事行動に同意したのではないか?すなわち、「中国がアメリカの意志に暗黙の了解を示した可能性が高い」という専門家の見方が説得力を得ている。

アメリカは3年前、中国に北朝鮮の非核化解決に1年間の猶予時間を与えたことがある。当時、中国は全国重要都市の北朝鮮レストランを撤去するや北朝鮮は就業員を全て帰国させた。さらに、中朝合弁会社を取り消しするなど、中国は国連安保理理事国として対北制裁に前向きな役割を果たしていた。

しかしながら、中国は北朝鮮に繋がる石油パイプを閉めなかった。さらに、海上で北朝鮮船が石油を船積みする国連の安保理合意違反に目を閉じていた。それで北朝鮮の非核化は前に進まず、米中貿易戦争が始まった経緯がある。

今回、米朝貿易合意の前にトランプ大統領はツイッターに「中国とビッグディール(big deal)がほぼ目の前に来ている」とし「中国がそれを望んでいて、米国もほしい」とメッセージを飛ばした。

米中交渉が一段落され、15日から1,560億ドル規模の中国産商品の関税は撤回された。これにより、21ヶ月間続いた貿易戦争が一旦、峠を越して休戦に入ったわけだ。アメリカが15日から対中国追加関税を撤回する代わりに、中国は米国産豚肉と農産物の購入を増やすことにした。アメリカ政府は中国産輸入品に対する関税を半分まで下げる案も協議した。

中国は今、巨額の借金を抱えており、国内経済の沈滞と経済破綻を止める為に精一杯であるとされる。今回、貿易戦争の最中で米中合意が出来たのは、中国が北朝鮮の面倒を見るより国内経済を優先させる政策変更だと考えられる。加えて、北朝鮮の核が中国にとっても脅威であることも意識したかもしれない。北朝鮮の核と弾道ミサイルは中国全都市を射程に収めているからだ。

その上、中国にとっては北朝鮮の核が日本、韓国、台湾の核武装を招かねない危険性を再認識したと考えられる。日韓台3国の核武装は中国にとって最悪の脅威になるはずだ。

12月初め、北朝鮮外交部の米国担当副相は「米国へクリスマスプレゼントが何になるかは全て米国の決心次第である」と威嚇した。今月7日には、平安北道東倉里の西海発射場で大陸間弾道ミサイルの噴射実験を3分間行った。また、13日は同じ場所で7分間、噴射実験を行った。これは第2段階のロケット噴射テストと見られる。

トランプ大統領は「必要なら武力行使もやむを得ない」「金正恩は全てを失う事もあり得る」と強硬なメッセージを飛ばした。すると、北朝鮮外交部の崔善姫副相はトランプ大統領を“老いた者の忘霊”と非難した。

El Periodico de Utah/flickr

12日、米国はカリフォニア州バンデンバーグ空軍基地で核搭載用中距離弾道ミサイルIRBM(射程5,400km)発射実験を行い、中国と北朝鮮を牽制した。この中距離弾道ミサイル(INF)は近いうち、グアムに配備される予定である。グアムから北朝鮮までは3,400kmの射程距離である。

米朝間の緊張がエスカレートする最中、米国務省の北核担当特別代表、ビーガン氏が16、17日の両日間、急遽、韓国を訪れ、板門店での米朝実務者協議を打診している。だが、北側からは何も反応が出ておらず、年末中に米朝実務者協議が開催されても会談は決裂される可能性が高い。

トランプ大統領はイランがサウジ精油施設を攻撃したり米軍偵察機を撃墜してもイラン空爆寸前に取りやめたことがある。米軍戦力の分散を止めるための戦略的な判断だろう。核を持っていないイランより、北朝鮮の非核化が米国外交の優先順位であることが分かる。

とりわけ、北核問題の解決可否はトランプ大統領の再選を左右する懸案である。結局、トランプ政権の措置が、ソフトランディング(海上遮断・制裁強化)であれ、ハードランディング(海上封鎖・軍事行動)であれ、北朝鮮の長期独裁体制は存亡の危機をかけた山場を迎えざるを得ない。

高 永喆
拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任

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高 永喆
拓殖大学客員研究員、韓国統一振興院専任教授、元韓国国防省専門委員

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