社会環境の変化への柔軟性

私が所属するバンクーバーのビジネス系NPOで「ばんてら(=バンクーバー寺子屋)」という塾をやっています。今年が3年目で一年ごとにテーマを決めてそれを深掘りしていきます。今年のテーマは「社会環境の変化にうまく対応し、変化のフォロワーではなく、リーダーになろう」でした。

ざっくりした内容です。「我々が直面する歴史的とも言える社会や価値観の大きな変化を皆で認識し、専門家を交えた先端技術について学習する機会を持ちました。また、日本を客観的に批評しながらも、日本文化や習慣の継承の重要さを改めて共有しました。さらに、急激に変化する社会の中でビジネスを成長させながら、幸せなコミュニティを築き、維持するために、我々は何ができるか?と議論する中では、そもそも幸せって何だっけ、と哲学的な思考をする場面や、新しい技術や考え方について年齢の若いメンバーが議論をリードする場面も多くありました。」(ウェブよりまとめを抜粋)

この塾は毎回フェローと称する進行役が選ばれ、その人のリードのもとで2時間の討議を進めていきます。皆さん、かなり熱く語るためいつも時間が足りなくなる、そんな集まりです。

(写真ACから:編集部)

(写真ACから:編集部)

最終回のフェローは私だったのですが、社会環境の変化には目の前に見える変化と社会環境そのものの変化の両方があり、本質をとらえることに注力しました。例えばネット社会、自動運転の車、MaaS、シェアエコノミー、仮想通貨、オンライン決済、AI、VRにAR…といった数々の技術はどちらかといえば目の前にある変化です。

それに対して社会環境や人々の価値観の変化とは女性の社会進出、LGBT、地球環境、資源、非化石燃料、コンプライアンス、働き方改革、ワークシェアリング、ミニマリスト、SPA(製造小売り)、オーガニック、食の安全、人権問題、グローバル化…など社会の中で広がる人々の感性や立ち位置の変化をとらえます。

我々の住む社会はこの20~30年で飛躍的に変化しました。先進国主導だった世界が地球儀ベースに変わったこと、ヒト、モノ、マネー、情報が世界を駆け巡ります。この変化に目をつぶりたいと思っていてもすでにサービスそのものがなくなってきているものもあります。否が応でも社会の変化についていかねばならない時代になったともいえます。ある意味、フォロワーです。

日本にも年間3000万人を超える外国人が押し寄せます。つい10年前には想像もできなかったことです。その外国人は東京、京都、大阪といった定番の都市から日本人すら知らない奥地まで探索する人が増え、ニセコは今では高額不動産のメッカとなりました。

社会変化は今後も続くのでしょう。私はその数々の変化に対して振り回されずもっと主体性を持ちたいと考えています。例えばみんながやるからQRコードのオンライン決済をやるのではなく、数々ある支払い手段の中で自分に最もふさわしいものを選べばいいと考えています。

QR決済は信用審査がない中国における決済手段での開発がもともとのスタートでした。日本には個人の与信のデータがあるわけでなぜPayPayやLINE Payにしなくてはいけないのか理由がないのですが、マーケティングの力なのでしょう。そちらになびいてしまうわけです。

AIについては日本最大手企業のAI/量子コンピューターグループの責任者の方に講義頂き、指導を受けました。AIは人を超え、ヒトを置き去りにするのか、という疑問に対して「AIはあくまでも確率に基づいて導くだけで(現時点では)主体的に考えるわけではない。よってAIを使いこなし、自分の領域を広げるという前向きな捉え方をすべき」との意見を頂戴しました。一時期AIが進めば「あなたの仕事がなくなる」と大騒ぎしましたが、過去の産業革命などの際に失業者があふれたということはありません。必ず新しい仕事は生まれるのです。

とすれば我々にはもっと柔軟な考え方で社会変化をうまく乗り越えていく器用さが求められるのでしょう。情報には時として偏った見方、誇張表現などが見受けられますが、何が正しいのか、うのみにせず、自分で納得し、自分の価値観をきちんと持ち、それを次世代に繋いでいくことが人間社会をより幸福にさせるのだと考えています。

塾を通して皆さんで考え、討議するのはとても有意義なものでした。来年のテーマもそろそろ考えなくてはいけません。多くの方と議論ができるそんな面白いことを続けたいと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月30日の記事より転載させていただきました。