何でも自衛権で説明すると、弱肉強食の野蛮な世界になるのでは

国際政治学者の篠田さんの問題提起には色々な意味で刺激を受けており、あれこれ考えさせられてしまうのだが、アメリカがイランの司令官をイラクのバクダッド空港で爆撃死亡させたことをアメリカの自衛権行使の一つの姿として説明されようとしていることには、どうしても違和感を拭えない。

トランプ大統領(Gage Skidmore / flickr)、ソレイマニ司令官(Wikipedia)

アメリカの自衛権行使の一態様なのだから、国際法上も正当化出来る、とでもお考えなのだろうか。

少なくともイラクの国家主権侵害行為だろうし、イランからすれば自国民に対する違法な殺害行為だということにならざるを得ない。

アメリカは自衛権の行使だと強弁するだろうが、それでは国際法上も自衛権行使として正当化され得るかかどうかは定かではない。

ロシヤや中国は、国連憲章に違反したとアメリカを非難しているようであり、アメリカの国内でも今回の爆殺には驚きの声が上がっているようだから、アメリカの自衛権の行使だからと言って、安直に今回のイラン司令官の爆殺行為を正当化はしない方がいいと思う。

日本の憲法学者に対して国際法の専門家として様々に警鐘を打ち鳴らしておられることはそれなりに敬意を表したいが、だからと言ってあたかも国際法が日本の憲法に優位するように言われているご主張には直ちには賛同出来ない。

国際法が世界の共通の法規範として既に確立していると言えるのかどうか、国際法に基づいて諸外国なり諸国民を裁く司法制度が既に確立していると言えるのかどうか、等に疑念があるからである。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。