ジャーナリズムさえ残るなら朝日新聞は潰していいはず(後編)

2020年01月14日 06:00

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2020年元日付、在京5紙朝刊各紙(編集部撮影)

その産業の一番大事な部分に、”真水”が行き渡る仕組みづくりを

私事で恐縮なんですが、5〜6年前に出版社から本を出した後、本当に「意味ある本」を出すには実力が足りないな…と思って、とりあえず「ギョーカイの流行からちょっと離れてても引き受ける力」を持ってそうな結構年上の出版社の社長さんと信頼関係だけ作ったあとは、延々と「本を作る準備」になるような地道な積み上げをやってきてやっとできた原稿があったんですけどね。

昨年末にその社長さんが予定よりはやく退任されたことで、”新社長”さんの方針に合わなくなったので出版できません…ってことになったんですよ。既に原稿が整理されて校正にもかかろうかっていう直前になって!

「著者のエゴ全開」でやったわけじゃなくて、一応「一昔前の力がある出版業界なら十分受け止められるライン」を見越して、なんどか全ボツにされたりしながらやっとまとめた原稿だったのに…ですよ!

で、その後色んなところをたらい回しされたあげく、ほんと色々あったんですが結果としては、さっき書いた「ウチは売れる本しか出さん!」ていう出版社でもっと短くて売りやすい本を新しく書いて出すことにして、5年かけて書いた本はアマゾンで自分で売ることにしたんですね。

アマゾンから自分で出すと、出版社から出すよりも印税率が単純に言えば7倍ぐらいあるし、初期費用もゼロで、紙の本だって受注生産で在庫なしで出せる仕組みが今はあるんですね。

もちろん、この印税率の違いは、宣伝してくれるとか、あとは「業界」が「日本の出版文化を守る」的な機能を維持するための取り分を中抜きしてるからってのはあるんで、今まで「やっぱ文化を守ってる人たちへの敬意は持ってたいよな」と思って敬遠してたんですけどね。

でも、最近の出版社は宣伝するパワーがあまりないし、個人でもブログなどで発信していれば定期的に十万とか最大百万ビューぐらいのバズにはなるし、そもそもなんとか「一昔前の出版社なら拾えるラインで、より深い意味のある出版を」と思って苦労して作った原稿を「売りづらいです」とか言われると、そもそもお前ら”文化”守れてないじゃん!という気持ちにもなりますよ。

で、結果として「出版社から出る売りやすい本」を出版社から出し、それを入り口として入ってもらって「直接出版で入魂の作品を売る」という構造になったんですが、これは逆に凄い可能性を感じる体験になりました。

このあたりに、「新聞社とジャーナリスト」「出版社とクリエイター」の新しい協業関係…があるはずなんですよね。

たとえば学術出版社とか、結構評判の本でも簡単に絶版にしちゃってどうしようもなくなってる・・・みたいな話も、アマゾン・キンドル直接出版みたいな形でうまく回る仕組みができるはず。

たとえばジャーナリストが取材をたくさんして、それを「出版社的に売りやすい本」にまとめたら、本当はもっとディープな情報や写真や映像や・・・がたくさん残るはずなので、それをその「ジャーナリスト」に直接おカネが入る仕組みと組み合わせていく・・・とかね。

今はフリーランスの「クリエイター・ジャーナリスト」側が勝手に自衛生存手段としてやっているものを、むしろ「出版社・新聞社」がわが積極的にサポートして、対等に協力しあってそれをやり、取り分を直接受け取れるような仕組みに変えていく…発想が、今後重要になってくると私は考えています。

お笑い業界や音楽業界の再生を参考に

参考にしたいのは音楽業界とかお笑い業界なんですよね。両方とも、「ギョーカイ」が縮小するにしたがって、それぞれ「アイドル」か「ひな壇芸人」しか生き残れません…ってなった時期があったと思うんですが。

その間にミュージシャンも芸人さんも、「直接的に顧客からお金を取るモデル」を発達させていって、「ギョーカイの流行に左右されない活動スタイル」で実力を磨いたクリエイターが、再度「ギョーカイ」とつながることで再活性化してきている。

結果として「ひな壇でしゃべるだけじゃなくちゃんとネタがやれる芸人」「アイドルじゃないアーティスト」が再度ヒットチャートの上位に出てくるようになってますよね?

朝日新聞は生き残れるか?(編集部撮影)

今、新聞業界・出版業界で起きていることは、ギョーカイの縮小とともに、

・「アイドルしかいない音楽業界」
・「雛壇芸人しかいないお笑い業界」

みたいになりつつあるってことなんですよ。こう例えると深刻さが身にしみてきますね。アイドルや雛壇芸人をディスるわけじゃないんですが、「それしかない」文化に未来はあるのか?って感じがしますよね?

そこで、「朝日新聞が潰れてもジャーナリズムが残ればいい」という発想で色んなビジネスのあり方を見直していって、「その産業の一番大事なところ」に真水としてのおカネが回る仕組みを作っていけば、そのプロセスの中で、業界全体に「全く新しいコンテンツ」が導入されていき、逆説的に「朝日新聞社が生き残る」道も見えてくるはずです。

「売りやすい」方の本は近々告知できると思いますが、「売りづらい」方の本はもう売っています。

こちらから↓
「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」レペゼンする知識人が導く自分軸ビジネスが社会を変えていく

今は電子書籍版のみですが、近々紙の本も同じリンク先に紐付けられます。Kindle Unlimited契約者は無料で読めます。

「売りづらい」といっても、普通に本読む人にとってみたら全然余裕な分量ですよ。「売りやすい」本二冊ぶんぐらいですからね。

ある程度丁寧に文脈を積んで行くことで、「普通なら全然希望が見えない話題」にも突破口が見えてくるはず・・・みたいなことってたくさんあるわけですけど、「この程度の分量」ですら売りづらいと言われて出版まで行くのにメチャ苦労する現状を、なんとかする道をみんなで考えていきましょう。

倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
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経済思想家、経営コンサルタント

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