IR疑獄に見る共産中国の超資本戦略 --- 本元 勝

2020年01月16日 06:00

IR疑惑を巡り、東京地検特捜部が15日、秋元司衆議院議員を収賄容疑で再逮捕した。

一連の事件では、秋元議員以外にも、中国企業の500ドットコム(中国法人名:易訊天空網絡技術有限公司)から資金提供を受けていた事実が続々と発覚し、今後、この事件は逮捕者を含め、さらに拡大していくことが予測される。

NHKニュースが報じた秋元議員らの500ドットコム本社訪問のFacebook

しかしこの問題、果たしてIRカジノ誘致に係る汚職疑惑としての追及だけに止まってよいものなのだろうか?

IR(統合型リゾート)とは、日本初のカジノを中心とした複合型リゾート施設である。これまで日本の法律では認められなかったカジノを解禁することが、このプロジェクトの核であり、国が新たな産業として推し進める超大型プロジェクトなのである。このプロジェクトの開発、また運営には、オリンピックなど比にならない巨額の資金と利権が生じる。

しかし、その割に本疑惑の特に収賄側の登場人物の「小物感」が何とも解せない。彼らはIRに関する業者選定等の決済に関し、何ら権限を有していない。勿論IRに関しては、未だ場所すら決まっていないのである。

贈賄側に当たる中国企業の500ドットコムに関しては、中国のくじネット販売会社であり、500彩票網というサッカーくじ等を販売するサイトを運営している。くじ販売会社であるので、日本のIRカジノ開発は自社業務上の関連業務ともいえ、一見、贈賄行為を行う動機は充分あるようにも見える。

しかし、IR運営は未経験の会社やちょっとした規模の会社では到底、開発も運営もできない。今、世界のIRカジノの殆どが、資本とは別に、経営・運営を一手に引き受けるIRオペレーターという役割の会社が全て仕切っているのが常識である。有名どこではサンズ、ギャラクシー、シーザーズ、ウィンといったIRオペレーター企業があり、日本のIRには、これらを含む現行で世界のトップオペレーターの全てが手を挙げている。

そんな中、IR運営経験のない企業が参入する余地は一切ないと考えるのが普通であり、ましてや大した権限のない議員たちにカネをばら撒く価値がどこにあるのかが全く見えてこない。そして、この中国企業は2013年11月27日に米国NASDAQに上場(上場コードWBAI)しているが、上場以降、収入、利益共に激減し、以下が直近4年間の損益状況である。

総収入 当期純利益
2018年度 18,365千米ドル -65,787千米ドル
2017年度 11,035千米ドル -48,695千米ドル
2016年度 757千米ドル -29,206千米ドル
2015年度 15,331千米ドル -49,879千米ドル
(出所:NASDAQ  IR資料

これを見ると、売上は4年平均で日本円にして12億円程度に過ぎない。にもかかわらず、実に200億円以上の損失を計上しているのである。とてもカネをばら撒けるような経済状況ではないことは、素人目にも理解出来る。しかし、今回の捜査の初期段階で発覚している金額だけでも、既に億を超える金額が、決してキーマンとは呼べないクラスの議員らにばら撒かれているのである。

また、別角度から見れば、本疑惑に挙げられている議員やIR候補地が沖縄と北海道に集中しているというのも気になるところである。日本領の最南端である沖縄と最北端である北海道。共に中国人観光客の間では人気の観光地である。そして、共に国の防衛等において、これまでも今後も極めて重要な地域であるのだ。

この問題、日本人はカネで転ぶ安い政治家の顛末をみて、憂さを晴らしているだけではいけない。隣国中国が多くの外国に対し強力に推し進める、ODA資金提供や領地の永久租借、そして企業出資にM&A。既に日本には中国から、人もカネも大量に送り込まれているのである。現実問題、今中国に人もカネも退かれたら、日本は一気に大不況に突入する可能性すらあるほどである。あの手この手で近づき、気付いた時には身動き取れず母屋まで揺るがしかねない。

中国マネーによる経済的効果に酔いしれるのはいいが、今回の議員たちのように前後不覚となってはならない。世界では、街中でも、ビジネスでも、ボヤっとしていれば身ぐるみ剥がされるのが普通の日常なのである。

本元 勝 アジアM&Aコンサルタント

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