貧窮に喘ぐキューバ市民の陰で、指導者層の家族の贅沢な生活

2020年01月26日 06:00

キューバの人権監視委員会によると、現在キューバの3分の1の住民は一日に2度かあるいは1度の食事しか取れない国になっているという。住民の7割の家庭では水道の毎日の供給は保障されていない。また8割の住民は国からの社会保障サービスの支給を受けていないという。平均給与は40ドルを満たすか満たさない程度の僅かの収入でしかない。

だから本題からは逸れるが、キューバ人医師が政府の医療団として外国に派遣されるのを希望するのは少なくともキューバでは稼げない給料と物質的にも幾分か豊かな生活を過ごすことができるからである。(参照:abc.es

フィデルとラウルのカストロ兄弟によるキューバの社会主義革命は独裁国家と化し、国民を貧窮に陥れてしまったというのが現状である。この現状がこれまでベールに包まれていた。勿論、指導者層の家族らの裕福な生活は彼らによって外部に漏れないようにしていた。

しかし、インターネットが普及するとキューバ社会の現状を覆い隠すことが困難になってしまった。また指導者層の若い家族らはそれを隠して生活することに抵抗も感じるようにもなっていた。その結果、指導者層の家族の一部は自らの裕福な生活を享受していることを逆に知らせることに抵抗を感じなくなり、寧ろそれを披露するようになった。

キューバのマヌエル・ マレロ首相の息子、マヌエル・マレロ・メディナ氏のインスタグラムより

カストロ一族の息子や孫の贅沢三昧に漬かっている生活がインスタグラムで映し出されるようになったことに対して市民のひとりホセ・ラモン・ポロはラジオ・マルティーのインタビューに答えて、「これは新しいことではない。いつも起きていたことだ。今では彼らも特権としてもっていることを見せることを隠さなくなっている」と語った。同様に、キューバの青年対話の会の活動家のひとりは、「社会主義は貧困も平等に分かち合うものだ。我々はみんな貧しい、彼らを除いてだが」と皮肉っぽく語った。(参照:infobae.com

昨年12月21日にキューバで首相のポストが40年振りに復活した。そのポストに就任したのは当初の予想を裏切ってマヌエル・マレロ・クルスが選ばれた。彼の首相としての役目はまだ明確にされていないが、ミゲル・ディアス・カネル評議会議長を補佐することになるのは明白だ。

マレロ・クルスはフィデル・カストロに気に入られ、長く観光相を務めていた人物で、軍人としての階級は大佐である。彼が首相に選ばれたのはGAESA(ガエサ)の影響が大きいとされている。GAESAとはキューバの観光業界を支配している軍事組織である。トランプ米大統領がキューバの経済封鎖に観光業を標的にしたのは、それが軍事組織によって支配されているからである。キューバの軍事組織を弱めない限りキューバの政治改革は無理だと判断しての方針であった。

これまでキューバの特権階級の人物としてあまり注目されることがなかったマレロ・クルスであったが、首相に就任してからは社会でも彼と家族にも注目が集まるようになった。その最初の標的となったのが息子のマヌエル・マレロ・メディナである。案の定、彼も贅沢な生活をしていたが、彼の父親が注目される人物ではなかったので息子の裕福な生活振りにこれまで注目が集まらなかっただけであった。しかし、父親が首相になった途端、息子もメディアで注目を集める特権階級への仲間入りである。

マヌエル・マレロ・メディナ氏のインスタグラムより

マヌエル・マレロ・メディナはオルギン大学で社会文化学を修学した。現在の仕事はガビオタ・ツアーのエージェントである。ガビオタ・ツアーはGAESAの傘下企業である。この企業で働くことになったのも父親が観光相だったということからである。全て縁故で何事も決まる国である。彼の現在の業務はプライベートジェット機でキューバの指導者やその家族そして外国からのお客にキューバの風光明媚な場所や楽園地を紹介する仕事である。

プライベートジェット機はダッソー・ファルコン50YV-1128でベネズエラのウーゴ・チャベス前大統領がフィデル・カストロに3機贈呈したものである。価格は1機につき400万ドル(4億3000万円)。その1機をマヌエル・マレロ・メディナが使用し、残り2機はディアス・カネル評議会議長と彼の夫人リス・クエスタが主に使用している。

マヌエル・マレロ・メディナは仕事柄、キューバ国内でも最高級のホテルに宿泊し、食事も豪華なものを味わう事は常となっている。一般のキューバ市民が知らない世界である。また、米国フロリダには彼の母親が住んでいる関係から米国も良く訪問している。
(参照:abc.esinfobae.com

マヌエル・マレロ・メディナ氏のインスタグラムより

これまででキューバの指導者層の家族として一番注目を集めたのはフィデル・カストロの孫のひとりトニー・カストロ・ウリョアだ。ハバナ市で高級BMWを乗り回したり、キューバ革命60周年を祝う数日前に豪華ヨットに乗っている姿をネットに掲載。伯父のひとりの誕生日のパーティで良質なワインや洗練された食事を満喫している姿も勿論ネットで紹介した。 トニーは生活の享楽にふけり制限を設けることもないということで以前から良く知られていた。

評議会の書記長オメロ・アコスタ・アルバレスの息子アレックス・アコスタはニューヨークで米国人であるかのようにして生活し、キューバに戻れば5星のホテルに宿泊だ。恰も裕福な米国人がキューバを訪問しているといった感じだ。

キューバの在スペイン大使グスタボ・リカルド・マチンの息子もボストンで生活していることをマイアミのアメリカ・テ・べ局の隠されたキューバを紹介する番組の中で語った。

キューバが民主化に移行することを否定している背景には、カストロ一族を始め特権階級に甘んじている彼ら指導者層が現在の社会が破壊されて特権を失うことを望まないからである。その犠牲になって貧困生活を送らされているのが多くの市民である。ディアス・カネル評議会議長もカストロ兄弟に忠誠を尽くして来た人物で、彼がキューバの社会体制を変えるだけの力はない。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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