患者の希望に沿った治療を実現する多職種情報共有

2020年02月02日 06:00

金沢市医師会を訪問した。医師会は病院、診療所、訪問看護師ステーション、薬局、介護支援事業所などを結ぶ多職種の情報共有システム「ハートネットホスピタル」を運用している。

いらすとや

患者の同意に基づいて関係者の間で情報が共有され、彼らが協力して適切に医療サービスを提供するのが「ハートネットホスピタル」である。病院で撮影した医療画像を参考に診療所の医師が日常の治療を施す、訪問看護師による訪問情報は直ちにかかりつけ医に共有されるなど、多様な利用方法がある。

訪問の際に伺った実例はとても印象的だった。

泌尿器系の悪性腫瘍を罹患した70代男性は緩和ケアを選択した。自宅で最期を迎えたいというのが、患者の希望だった。病院・かかりつけ医・訪問看護師など医療関係者は、患者の意思に沿った治療を続けていくが、状態は徐々に悪化していった。

最初は在宅ケアに不安を感じた妻も次第に納得し、離れたに住んでいた家族・親族も手伝うようになった。家族が周りを囲み患者と話を交わし、遠く離れた孫はスカイプで加わった。患者にも家族にも笑いがあふれていたという。和やかな雰囲気の下で患者は最期を迎えた。

こうして、患者の希望は守られ、患者の希望に添えた家族も患者の死を受け入れることができた。患者と家族の尊厳が守られたのである。

「ハートネットホスピタル」には、患者の同意に基づいて共有範囲を定める機能、職種ごとにアクセスできる情報を制限する機能、アクセスログを保管する機能などが備えられており、通信は暗号化されている。

情報共有システムに診療所は半数しか参加していない。医療関係者のITリテラシーが課題であるため、金沢市医師会は講習会を定期的に開催して理解を促しているという。

患者側にもリテラシーの問題があるそうだ。情報共有システムを利用して満足のいく治療が受けられたという体験が広まり、登録患者数が急増する日が来るのを医師会は待っている。

全国で参考にできるよい事例だった。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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