橋下徹VS池田信夫再び。新型コロナ対応「移動制限」の是非

アゴラ編集部

元大阪市長の橋下徹氏と池田信夫アゴラ研究所所長は、これまでも度々ツイッター上で舌戦を繰り広げてきたが、新型コロナウイルス感染拡大への緊急対応を巡って今週は新たなバトルが展開された。

Wikipedia、アゴラ編集部撮影

きっかけは、アゴラが19日に掲載した池田の論考「新型肺炎に「ゼロリスク」を求めてはいけない」。この中で池田は新型コロナウイルスとインフルエンザの罹患確率を比較し、「インフルエンザのほうが10万倍危険」「新型コロナの感染力はインフルエンザより強いといわれるが、それほど変わらない」などと指摘した上で、

イベントや集会を中止するのも無意味だ。流行していない感染症でそんなことをしたら、毎年インフルエンザが流行するたびにイベントを中止しなければならない。なぜ患者が1100万人も出た2019年にイベントを中止しなかったのに、わずか60人で中止するのか。

行政や民間で急速に広がっている多人数の集まり「自粛」が過剰反応だとの見解を示した。池田が記事内容を要約したツイートをしたところ、

橋下氏が「典型的な間違い論考。発生期前後の人の移動制限はゼロリスクのためのものではない」と噛みつき、さらに池田にも直接「インフルエンザは予防接種やタミフルなどの薬があって 指数関数的に爆発的感染拡大はしない。新型肺炎に関して今やらなければならないのはピークコントロール。新型肺炎をじわっと感染させる策。積分を再度勉強した方がいい」と、いつもの辛辣な橋下節を炸裂した。

これに池田が「昨シーズンはインフルが爆発的に流行し、1100万人が感染して3000人が死んだんだけど、これは指数関数じゃないのかな」と受け流し、「アドホックに騒ぐのは混乱のもと」と再反論。

すると橋下氏は「インフルエンザにはタミフル等で対応が可能。新型コロナ肺炎には、まだそのような薬がない。そこが決定的な違い」との見解を示し、「感染をゼロにするのは不可能。発生期の移動制限でピークカットをするしかない。流行期の移動制限は無意味。ただし移動制限に効果があるかは保障できない。だから政治の出番」と主張した。

さらに橋下氏が「もしかすると移動制限は大袈裟なもので、やる必要がなかったかもしれない。そのときは国民に迷惑をかけましたと謝ればいい」「移動制限が空振りで終われば、それはラッキーで喜ぶこと」と述べると、

池田は「行政が過剰反応してパニックをあおったら、国民の行動が萎縮して経済に取り返しのつかないダメージを与えます。「空振りでラッキー」というわけには行かない」と、移動制限など措置が景気後退を煽るのではないかと懸念を示した。

2人の舌戦はその後も続き、橋下氏は「現実はもう貴殿のように自粛は不要と抽象論を騒ぐ段階ではない。今度は自粛はいつまでが効果的なのかを知らせる段階。これが政治行政の実務」といつものように、実務経験からの意見を強調。

池田は「入国制限には意味があるが、国内の移動制限なんて無意味」などと反論し続けた。

本稿では、移動制限など行政対応の是非は置いて、中立的に2人の主な見解を示すにとどめるが、22日には遊園地が臨時休館するなど、「自粛」の動きはまさに“指数関数”で加速している。今週はじめに発表された昨年10〜12月期のGDP速報値は、マイナス1.6%(年率マイナス6.3%)を記録し、消費増税の影響が表面化した。新型コロナウイルス感染拡大とのダブルパンチへの懸念が広がっている。