大前研一氏は疑念:新型コロナは猛威か、インフルと同等か?

2020年02月24日 06:00

大前研一氏の疑念

中国武漢市を震源地として、新型コロナウイルスが世界に広がりつつある。日本は感染者数で中国に次ぎ、韓国と2位、3位を争っている状況だ。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号への対応を含め日本政府の防疫体制についても批判と擁護論があるが、それは主に親中国、反中国の軸と、新安倍政権、反安倍政権の軸の2軸により少なからず影響を受けている。即ち議論は、政治空間の中を漂っている感もある。

しかしより根底には、そもそもの新型コロナウイルスの脅威度に対する認識の違いがあると思われる。

大前研一(台湾総統府/flickr)

ではその脅威度は、どの程度のものなのか。例えば大前研一氏は、自身のメルマガで次のように書いている。

(略)新型コロナウイルスに過剰反応して中国行きの飛行機をキャンセルさせている米国ですが、この状況からみれば米国のインフルエンザのほうがよほど危険だと指摘されても致し方ありません。
(略)米国における死因別の死者数を見ると、毎年約5万人がインフルエンザに起因して亡くなっています。
(略)今回の新型コロナウイルスについて、これだけ世界中で騒ぎが大きくなってしまった一因には中国自身による過剰反応の影響があると思います。
中国が湖北省すべてを閉鎖するなど過剰に反応し過ぎたために、世界中もそれに応じて危険性を感じてしまいました。

中国の初動にミスがあったと私は感じます。

(KON816「新型コロナウイルス/米インフルエンザ~CNNが指摘する米国の矛盾」 2020年2月17日 より抜粋)

要するに大前氏は、騒ぎ過ぎという認識であるようだ。

舵をどちらに切るか

武漢閉鎖については、筆者も正直意外だった。感染力は強いものの致死率は低いと言われる新型コロナウイルスについては、中国は開き直って「通常運転」で対処するのではないかとも思っていた。不謹慎かもしれないが、大躍進、文化大革命、天安門事件、その他で多くの人命を損ねてきた中華人民共和国であるので、習近平氏は強気で突っ切るのではと漠然とイメージしていた。

しかし実際は、最初期の隠蔽から一転して武漢閉鎖を断行し、それに続き湖北省全域に閉鎖を広げている。

これは、純粋に人命重視に目覚めたためか、今後ウイルス凶暴化の可能性が高いという情報を持っているためか、単に超大国への道を意識し国際世論を気にするようになったからか、国民の意識が高まり低い致死率でも政府に対する不満を押さえ切れないからか、あるいは何か隠したい別の理由があるのか。

なお、このウイルスは、老人や病人の感染率と致死率が高いのは当然として、同じように体力の弱い乳幼児を含む子供のそれは低いという不思議な性質を持つ。

何れにしても、火元の中国の対応を見て大国米露を始め各国は全面的な対中入国制限を行い、日本も緩やかな対応を進めている。

では、今後このウイルスにどう対処して行くべきか?

例えば、「日本は既に水際対策の段階を過ぎ、次の段階に入っている」というのは現時点で広く共有される認識だと思うが、そのためもう入国制限は意味がなく湖北省からのそれを解くべきと暗に示唆された文脈で語られる場合も多い。逆に入国制限は依然意味があり中国全土に広げるべきという論調もある。

筆者は、ワクチンや治療法が確立されていないこと、ウイルスの起原が不明瞭で凶暴化等のリスクが低くないと思われること、中国がドラスティックな対応を取っており国際的にそのレベルを下回る訳には行かないこと、中国のドラスティックな対応自体に何かしら見えないリスクが内在している可能性があること、軍事大国、情報大国である中露が厳しく対処していること等々を鑑みれば、日本を含む国際社会は、米露に準じて安全側に舵を切るべきだったし、今はそうすべき段階であると考える。

今回の新型コロナウイルスに対し、中国はその隠蔽体質を、日本は合理性と明確な意思決定、説明能力、情報発信能力の欠如を世界に晒した。

たとえ今回の件が収まっても、経済始め今後日本が苦境に陥ることは避けられまい。日本は対中政策の大転換を含め、是々非々と戦略性を以て死中に活路を見出す必要があるだろう。

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佐藤 鴻全
政治外交ウォッチャー、ブロガー

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