消費者庁のデジタル論議、始まる。

2020年03月09日 14:00

消費者のデジタル化への対応に関する検討会。
消費者庁とは、青少年の安心ネット利用対策、ゲームのガチャやeスポーツ規制などで接点がありましたが、会議への参加は初めて。
座長代理を務めます。

このタイミングでデジタルと消費者の関わりを考えることは有意義。20年前からのデジタル化、10年前からのスマート化を経て、Society5.0へと次の大きな波が来ている。
デジタル化・スマート化の消費者にとっての課題と、AI/IoT/データ時代の消費者にとっての課題。性格が違うので、分けて議論します。

ぼくのコメントを紹介しておきます。
まずプラットフォーマーのサービス利用問題。
これはリテラシー教育、利用者による学習の問題が基本です。
国民全員がデジタルの利用者になる。生活全てがデジタルに依存する。そのための技術も、制度も大事なのだが、結局、消費者が自分を守るための知識・知恵が最重要。

デジタル教科書も制度化され、全ての子どもがデジタルを使って学ぶようになります。
政府も青少年の安全ネット対策を講じています。
ただ、若い世代ほどデジタルの知識は豊富。問題は大人側。この対策は薄い。
NHKが振り込め詐欺対策の番組を繰り返し放映しているが、そのようにわかりやすく手厚い情報提供が必要。

同時に必要なのは、不必要にデメリットや怖さを強調しないこと。
日本は学校のIT化がOECD最低で、今回ようやく経済対策の補正予算で一人一台PCが整備される方向だが、これまで20年進まなかった最大の原因は、デジタル化に対するばくぜんとした不安感。

シェアエコの普及が遅れているのも「不安」が前に立つから。
日本ほど安全な国はないのに、日本ほど不安を感じている国もない。
その空気が日本の進路を阻んでいる面が大きい。
デジタルやスマートは、一害あっても百利ある。
まず消費者が百利を享受できるように啓発しつつ、一害を避ける、という方向が大切。

AI/IoT/データに関しては、教育以前の、ルール化が重要な段階。
これまでのデジタルは人と人のコミュニケーション。
これからは、機械と機械がコミュニケーションして、自動で分析・処理されていく。
これは、これまで人類が直面したことのない世界が到来することを意味していて、まだ世界のどこにも正解がない。

問題は、AIは見えないということ。
裏側でAIが人を評価して、企業の人事採用、金融の与信、犯罪の予測に使われて、排除・差別される。ユーザのデータが選挙にも利用される。
民主主義や国民主権に関わる事態が想定され、憲法学者たちも問題にし始めた。

だが、技術的必然として、社会に入り込んでいく。
AIを使いこなす、その覚悟と知識と知恵が大事。
昨日も内閣府・知財本部で、データやAIの利用に対し、利用者も事業者も「不安」を抱えているということが議論された。安心して使えるようにするルール化と社会実装が必要。

まず、個人のデータは自分のものというルールを明確にすることと、それを実装するまっとうなサービスが現れてくること。
これらも内閣官房IT戦略室、知財本部、経産省、総務省らが束になって議論している。
消費者行政も入り込んで、取り組んでいただきたい。

政府は事業者向けAI利活用ガイドラインを用意しているが、消費者向けガイドラインを作ることが必要。
しかも、想定外のAIやサービスが登場してくるので、どしどし改訂して啓発していく覚悟もまた必要でしょう。

ぼくのコメントは以上。
政府のAI利活用のガイドラインは「研究者からみてユルい」という委員の発言がありました。
研究者が調査計画を立てる際、いかに安全を確保し、説明責任を果たすか、その対策・措置を強く求められる。のに対し、企業・事業者は留意・配慮・努力で済むと。
確かに~。新鮮です。

ところでこの会議。グラフィックレコード(グラレコ)が試験導入されました。
委員たちのコメントはこのように即興ビジュアル化されていきます。
議事録も報告書もこれでいいんじゃね?というできばえでした。
試験と言わず、他省庁も含め、本格導入してください。

(むかし若い女性の同僚がある経済会議の議事録を絵だけで作り、事後にその絵を見ながら2時間正確に再現しました。とてつもない能力だと腰を抜かしました。その後その人は「きょうの猫村さん」でマンガ家デビューし、超売れっ子になって現在に至ります。誰でもできる芸当ではないことを申し添えます。)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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