香港紙、新型コロナに関連する中国の極秘情報を掲載

2020年03月25日 06:00

22日の香港紙SCMP(South China Morning Post)は「コロナウイルス患者の3分の1はおそらく“無症状保菌者(silent carriers)”と中国の極秘資料は示唆している」との見出し記事を掲載した。「中国では2月末までに43,000人が無症状で検査陽性となり隔離された」、「無症状の感染がパンデミックにどんな役割を果たしているのかはまだ不明である」との副題付だ。(拙訳による)

新華社サイトより:編集部

我々はこの記事を読む時にいくつかの前提を頭に置いておく必要があるだろう。一つはSCMPの中国政府との距離。つまり、反中が明らかなEpoch Times紙(大紀元)は横に置くとしても、Apple Daily紙のように少なくとも親中でないと見做して良いかどうか、ということ。

というのも、記事の冒頭に「according to classified Chinese government data seen by the South China Morning Post(SCMPが見た中国政府の極秘資料によれば)」とあるものの、その極秘資料の写しなど示されておらず、またその信憑性についての言及も記事に中に見当たらないからだ。

昨年11月に世界各紙が報じた「ウイグル人100万人収容所」の場合には、中国から漏洩したとされる400頁にわたる文書が、入手した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によって公開された。今回の極秘データもそうあれば良かった。が、ここでは当該資料が実在するとして話を進める。

参考拙稿:ウイグル漏洩文書とは?中国は新彊ウイグルでの人権弾圧をやめよ!

二つ目は記事の見出しある「carrier」、および記事中19回ほど出てくる「cases」をどう訳すか。Carrierは「保菌者、あるいは感染者」で良かろうが、caseは「症例(または患者)」とすべきで、「感染者」をcaseと書くべきでなかろうということ。以下の記事の冒頭部の原文と拙訳で見てみる。

More than 43,000 people in China had tested positive for Covid-19 by the end of February but had no immediate symptoms, a condition typically known as asymptomatic, according to the data. They were placed in quarantine and monitored but were not included in the official tally of confirmed cases, which stood at about 80,000 at the time.

2月末までに中国で43,000人以上がCovid-19の検査で陽性だったが、資料によると、無症状として一般に知られる状態である即時(検査時の)症状なしだった。彼らは隔離され監視されたが、確認された症例(または患者)の公式の集計には含まれておらず、その時点でそれは約80,000人だった。

筆者は「case」を「症例(または患者)」と訳したが、後述するように記事は明らかに「case」を「感染者」として書いているようだ。

なぜ筆者がこれに拘るかといえば、今回の新型コロナウイルスの極めて厄介な特異性、すなわち「長い潜伏期間(約2W)に、無症状でも他人にうつすこと」がここに現れるからだ。知られるように、感染症といわれる病気の「保菌者」=「感染者」であっても症状が出ない病気は世の中に少なくない。

つまり厄介かどうかは「感染の仕方」と「無症状期間の長さ」による。例えば梅毒やエイズなどは無防備な性行為を避ければまず感染しない。また慢性の伝染病である結核の潜伏期間は数ヵ月から数年、癩なら4〜5年(北里柴三郎演説)だし、ある種の肝炎などでは一生症状が出ない場合もある。。

なので、新型コロナウイルスの場合、感染を特定する検査と感染者の統計は共に重要だ。が、それは周知の通り特効薬やワクチンのない現時点では、重篤患者の命を救うこと、すなわち医療崩壊を防ぐこととトレードオフであること、そして検査精度が万全でないことも考慮せねばなるまい。

そこでこの記事のメーンテーマだが、それは中国が2月7日に行った分類のガイドライン変更だ。すなわち、それまでは検査で陽性となった者の数を「confirmed cases(確認症例)」としてカウントして来たのを、2月7日から「patients with symptoms(症状のある患者)」の数に変えたのだ。

WHOは「症状の有無に関わらず検査陽性の者全てを確認症例に分類している(classifies all people who test positive as confirmed cases regardless of whether they experience any symptoms)」(日本でcaseが少ないのは無暗に検査しないせいだろう)ので、中国の措置はこれに反する。

ガイドラインを変更するなら、中国は昨年の患者発生時に遡って2月7日以前のすべてデータも同様に変更するか、または2月7日以降も旧ガイドラインのcaseの人数を併記せねば、折角の統計データの継続性が失われてしまう。元々信憑性に疑いありとはいえ、今からでもそのようにしてもらいたい。

また記事は、「WHOは病気の蔓延における無症状感染の役割は明確ではない。症状のない保菌者が全体として重要な要因になる可能性は低いと述べた」ことを挙げ、「しかし、無症状と発症前の感染が過小評価されていないか疑う学者もいる」とWHOを難じているようだ。

そして、DP号の712人の陽性者のうち334人(47%)が無症状であり、あるEU報告書のイタリアの無症状症例の割合が44%であるとして、これらの数値はこれまでに中国が公表したデータよりも無症状症例の割合が著しく高いことを示していると、と中国が無症状陽性者を外した変更を暗に批判する。

記事はまた「米英中そして香港の専門家による共同研究は、1月23日の武漢封鎖前の、記録されていない主に軽度または無症状の肺炎のcaseの79%が、記録のある感染源であると推定した」とし、「しばしば軽度か限定的、または無症状ゆえに、多くの人をウイルスに晒す可能性がある」との識者の報告も載せている。

筆者はひと月以上SCMPで患者と死者をウオッチしてきた。2月28日と3月23日夕刻の人数を比べれば、世界がcase:84,132→334,374、death:2,876→14,608である一方、中国はcase:78,824→81,093、death:2,788→3,270、つまり中国以外がcase:5,308→253,281、death:88→11,338と激増した。

この数字を見れば、初期の隠蔽によって春節の億単位の人の移動を禁じなかった習近平を激しく攻撃するトランプ大統領(米国のcaseはあっという間に3万人超)に、世界の多くの人々が賛意を示すだろう。もちろん筆者もその一人だ。

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