スマートシティはこう作る -- 竹芝CiPの挑戦

テクノロジーのショーケース「City & Tech」シンポジウム。慶應義塾大学で開催しました。
Tech Pop特区をつくるCiP。ロボット、テレイグジスタンス、ドローン、4K8K、5G、AI、モビリティ。テクノロジーを街でまるごと実装するCity & Techのスーパーシティ構想を進めています。
その状況報告会。

東京大学川原圭博さん、東洋大学生貝直人さん、東京都米津雅史さん、ソフトバンク関治さん、理化学研究所中川裕志さん、データ流通推進協議会落合孝文さん、東急不動産田中敦典さん、タニコー安倉一徳さん。CiPから石戸奈々子さんとぼく。

ぼくらが構築中の竹芝CiP。その核となる40Fのビル「東京ポートシティ竹芝」を建設中の東急不動産・田中さんは、夏フェスでの大型パブリックビューイング、芝離宮夜会での街中デジタルアート、さらには小笠原との遠隔操作ロボットやスマートモビリティ活用などを進めてきました。

今後さらに、ビルに入居するソフトバンクと共同でスマートシティを開発するほか、MaaS社会実証モデルの構築、浜松町駅からの歩行者デッキへのデジタルサイネージ展開などを企画しています。進めてください!

東京大学川原教授は、空気でふくらませるホイポイカプセル的な乗り物「Poimo」を紹介。やわらかく安全で持ち運べます。
さらに無給充電の仕組みを街にしきつめ、パーソナルモビリティをシェアするサービスも提案。
ぜひ実装しましょう!!

夏フェスで運搬ロボットを提供したタニコー安倉さんは「営業許可の規制で苦労した」といいます。
川原教授も「poimoは原付に該当し、特別な許可が必要」とのこと。
田中さんは、規制の中でどこまで突破できるか「とりあえずやってみるが大事」。ですね。

「新技術を全て実装する街にしたい。お声がけしたら、やろうという人が集まった。世界にもここまで集まっている街はない。やって叱られたらぼくが謝る。一つ一つ実態を示していけば窓は開く。使う方が安心だと思ってもらうまでやり続けよう。」
ぼくはそうコメント致しました。

話はデータ流通基盤・情報銀行に移ります。
東洋大学生貝准教授は「グーグルによるトロントのアイディアと竹芝の状況は似ている」と指摘します。
社会全体のデータをどのように収集してスマートシティを設計するか、EUのデータポータビリティを参照しつつ問題提起しました。

生貝さんが提案するのは、互恵主義を念頭においた「竹芝CiP情報銀行」。
参加事業者は取得した個人情報を本人の求めに応じて情報銀行にデジタル提供可能とする。
情報銀行に集約された個人データは、本人と参加事業者が一定要件でAPIで利用できる。そういう仕組み。

想定できるデータは、
① 店舗でのキャッシュレス決済履歴及びそのサービス利用内容
② ゆりかもめやバス、シェアサイクル、船舶等交通機関の利用履歴
③ GPSやWifi(ビル内等)から取得する移動履歴等
具体性を帯びてきました。

竹芝に本拠を移すソフトバンクの関さんは、街の様々なデータを活用すると宣言。
スマートシティの実現に向けて企業や自治体と「共創」で推進していく。
竹芝でもエリアのデータ収集・解析・活用を行い、竹芝エリアに集うパートナーにプラットフォームを提供するとのことです。

東京のスーパーシティのキーパーソン、東京都の米津さん「生活全般にわたり、最先端技術を実装し、技術開発・供給側の目線ではなく住民目線で未来社会を前倒し実現する『まるごと未来都市』は、世界でも未だ実現していない。日本にも必要な技術は揃っているが、実践する場がない。」

都としても、移動、物流、医療、教育、エネルギー、防犯などの領域を広くカバーし、2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現する方針だそうです。
「TOKYO .AI特区」の指定や「TOKYO Data Highway」(5G)の整備などを進めることとしています。力強い。

ただ、スマートシティを論じながら、スマートシティって何なのか、それもいまいちハッキリしません。「本格的にデータを活用してサービスを提供する、というのはまだ各国が競っている。」(生貝さん)「自動運転はヘルシンキと上海。」(理研中川さん)。コレは、というモデルはまだないんですね。

「スマートシティはデータが本体で、その上に物理的なものが乗る。」(生貝さん)
そういうイメージのほうがわかりやすい。要はデータ駆動都市のことであると。どんなデータを活用するかがポイントですね。
「活用するためのルールを定める必要がある。利便性を先に示さなければならない。」(米津さん)

どの分野のデータから取り掛かる?
「どこを歩いているのか、や混雑状況など個人に紐付かない範囲で全体の問題を解決するところから。」(生貝さん)
「エリアによって様々なデータやプレイヤーが集まる。それぞれがデータを使うことに対して同意を得つつ、うまく連携していければ。」(落合さん)

「データを閉じ込めることはできない。データは増えていく。が、死んだらデータは増えなくなる。死後のデータはどうするか。活用するのか?そのまま死滅するのか?」(中川さん)
そんな問題提起もありました。
いの一番に実装しようと思いつつ、難しいテーマを引っ張っていくことになります。乞うご期待。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年3月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。